第四十一話
「南場景子のプロファイルだ」
吉川はタブレット画面を美都留に見せた。
「今日は長くなりそうね。デザートのフルーツ餡蜜追加お願いね」
美都留がタブレットを小声で読み上げる。
「南場景子、1971年生まれ、本籍は愛媛県今治市。
父は南場一郎、母は三島幸子でいずれも交通事故で南場が二十歳のとき死亡。
婚姻歴無し、前科無し。出産記録無し。
2005年 東京都練馬区に住民票を移動。
2006年 山口県山口市に住民票を移動。
2007年 神戸市中央区に住民票を移動。現在に至る」
「山口県警で、あちらこちらに照会したところ、南場は、愛媛県の旧家で本家は三島というらしい。
母親が三島の分家なので、比較的裕福に育ってきたらしいが両親を交通事故で亡くし、本家ともそのあと付き合いもなくひっそりと今治で暮らしていたらしい。
それが2005年突然、今治の家を売って、東京に引っ越しをしたかと思うと、その後山口、神戸と目まぐるしく移っている」
「何かあるわ」
「今治の家を売却したときの不動産会社の担当は女性だったらしいのだが、心なしかお腹が出ているように感じたとの事。
お客様なので何も言わなかったが、お腹をさすっていたらしく妊娠しているように感じたようだ」
「出産届は無いのよね。3年で何度も引越しをしているわ。
引越し先で何かわからないかな」
「今、山口県警から調査依頼をしているようだ」
美都留は餡蜜もすっかり平らげた。
「今日はここまでのようね。いっしょにダブルスイートのホテルに行きたいな」
美都留が最後まで言う前に吉川は静かに立った。
「勘定は終わっている。明日朝7時に迎えに来るから。
山口県警に寄ってから帰るよ」
不満げな美都留を残して吉川はレクサスで山水園亭を後にした。




