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赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら、次次と死体が現れた  作者: lavie800


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第三十八話 女の過去

挿絵(By みてみん)

吉川は結局山口県警の仮眠室で少し横になり、リゾートホテルには戻らなかった。


朝、山口県警の鈴木刑事と会い鈴木刑事に昨夜の状況を話した。

「吉川さん、桂美京の戸籍を入手しました。

桂 美京1975年生 女性、本籍山口県下関市生まれ。

2006年に現住所を山口市に変更。

2007年12月に死亡除籍」

「桂美京は結婚歴や出産の記録は無いのですか。」

「ありませんね。

なお、桂美京の父は桂卓、母 桂有子で二人とも2004年に自然死をしています」


「2006年に川田が桂美京と契約した不動産会社の社長が、桂美京は女の子を連れていたと言っていたのだが婚姻歴も出産歴もないのですね。

不動産会社の社長が、桂美京は女の子を連れていたと言っていました。桂美京の子ではないとすると誰の子だったのでしょう」

「もう一回、不動産会社に行った方がよさそうですね」


山口県警の本部長が顔を出した。

「吉川君、兵庫県警から連絡が来たよ。

君の言う通り、塩化ビニルのテープで全身を巻かれたまま焼かれたと推定すると遺体の状況やダイオキシンが残っていた理由に合うそうだ。

オーハシポートホテルの現場のバスタブからツンとした匂いがあったそうだが、鑑識によると現場の空気中に塩化水素があったようなので、ほぼ君の推測どおりになるそうだ」

「本部長、私の推理ではなく、実はあの女流棋士の推理なのです。彼女はギフテッドといって知能指数がかなり高いらしいです」

「君の許嫁はセクシーアピールだけではなく推理の天才なのか。

鈴木刑事、特別に彼女に便宜を図ってくれ。必ず事件を解決するのに役に立つよ。

私の老後も安泰だ。はっはっは」


このまま、美都留に伝えたら得意満面になること確実だな。

美都留は未だ許嫁ではないのだが。


鈴木刑事と再び不動産会社に出向き再び不動産会社の社長に事情聴取をした。

鈴木刑事が社長に尋ねた。

「先日お伺いしました桂美京ですが、彼女には婚姻歴も出産歴もないのです。彼女の事情について何かご存じでしょうか。また保証人の大内についても更に情報をご存じでしたら事情を教えてください」

「あれ以上は詳しくないのですが、契約したアパートのオーナなら知っているかもしれません。電話して聞いてみます」

吉川も追加で聞いた。

「それから、林田桜里瑛が川田と不動産契約をしたはずですが、その契約書も見せてください」

林田と川田の契約書は先日聞き込みに同席した社員が持ってきた。


吉川が契約書を確認した。

「林田はちょうど川田と知り合った頃に、2階に1DKで住んでいたアパートから地下にも空間のあるメゾネットに引っ越しをしていますね。賃料はたいして変わりませんね」

「うちは大阪や神戸にも取引の提携先がありますから、県内だけではなく、ここから阪神地区に出て行くときにも物件のあっせんが出来て評判がいいのです。

それに地下のメゾネットタイプの部屋は意外と安いですし、覗かれたりする心配も全くなく防音もしっかりしていますのでプライベートで楽しみ方に向いていると思いますよ」

「川田が阪神地区に出張などで来る場合に泊まったかもしれませんね」

「ははは、可能性ありますよ。この契約からしばらく川田の神戸出張が増えていますから。

ただ三年くらいしたら林田さんはこの物件の契約を解除しています」

吉川は契約書の住所をメモした。

その頃に、林田が川田に愛想が尽きて別れたのではないかと思った。


「それから、桂美京と保証人の大内について、どこまで知っているかわかりませんが、アパートのオーナがすぐ近くにいるようですので、電話をしたらこちらに来てくれるそうです」


押し出しの強そうなアパートの老年の女オーナが到着して、メモを見ながら答えてくれた。住居人のプライバシーを詮索好きなタイプだ。

これなら何か情報を手に入れることができるかもしれない。


「入居されてから家の余りものを何回かお裾分けしたよ。

あのアパートの裏山には当時、夾竹桃や柿の木がたくさん生える林もあったね。

裏山も私が所有していたので、柿をお裾分けして何度か行き来したら、結構気が合ったのか世間話もしてくれるようになったね。

桂美京さんは、籍を入れずに事実婚の様な旦那さんと前の所に暮らしていたようだ。

ところが水道管や水回り等が古くなって住めないという事で引っ越しを決めようとした矢先に、その旦那さんが交通事故に遭われて残念なことになったそうだ。血は繋がっていないと言っていたがその方が連れている女のお子さんもいたね。

旦那さんは亡くなったが今のところは住めないということで予定通りこちらのアパートに引っ越しに来たよ」


やはり、詮索好きのようだ。

「保証人の大内という男を知っていますか」

大内の写真を女オーナに見せた。

「保証人の大内という方と話はしたことは無いね。写真の大内にそっくりな方がしょっちゅうこの部屋を訪ねてきていたのは覚えているよ。

この大内という人は、桂さんではない品の良さそうなアラサーの眼鏡をかけていた女の人と二人で桂さんの部屋に出入りしていたのを見かけたことがある。

大内とかいう人より年上に見えたね。

その時に限って桂さんも女の子も居なかったな。

どんな関係かよくわからなかったよ。

桂さんのお姉さんのような感じだったかな。雰囲気は似ていましたが育ちの良さというか品格はその眼鏡のアラサーの人の方が良かったね」


昔大内が若い時に山口県で誘われたという年上の女は、桂美京以外にもう一人いたのか。

「その女の人について桂美京さんに聞かなかったのですか」

「いや、聞いたがあまり答えてくれなかった。

問い詰めはしなかったが色々聞くと、知り合いの大内の友人だと言っていたわ。

前に家賃に振込が遅れがちになったこともあったから、私が桂さんにあのよく来る男か品のある女の方に無心してみたらと言ったこともあるよ」


「結局、旦那さんに続いて、桂さんも心臓麻痺で無くなって残された女の子はどうしたのだろうね。

桂さんは私の知らない間に死んでいたのよ。

後で聞いたら、近所の老医師が看取ったとか。

オーナの私に何も言わずに、まるで逃げるように消えてしまったよ。

後になって、手紙で保証人の大内という男が契約解除の書類やお金の後始末はしてはくれたのだけれど」


「小さな女の子について何かご存じですか」

「消息は教えてくれなかったので女の子がどうなったかわからない。

女の子は小学校にも言っていないのに掛け算の九九が言えたりしていたよ。

大内とか言う男が女の子と話をしていたのも見たことがあるが桂さんほど親しいという感じではなかったね。

女の子も何か警戒しているような雰囲気だった」



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