第三十四話
「鈴木さん、川田も大内も桂美京と何かつながりがあるかもしれません。
不動産会社のリストに載っているということは、川田と桂美京とで不動産契約をしているのですね。
まず、不動産会社再度聞き込みに行きましょう。
川田と大内と桂美京で何かわかるかもしれません」
吉川と山口県警の鈴木刑事は、県警の車で川田が勤めていた不動産会社に聞き込みに行った。
不動産会社に行くと、川田が2006年に桂美京と不動産契約した契約本紙が用意されていて、先日の聞き込みに対応してくれた社員に加えて、不動産会社の社長も同席していた。
「ご多忙中の所、申し訳ありません」
「いえ、警察には私ども協力的ですから。
ただ古い話なのでどこまで覚えているかわかりませんが、これが契約書の本紙です」
吉川が契約書の一番最後を見ると、『契約者 桂美京』の署名欄に印鑑が押されていた。
また、保証人の欄があり、そこには 『保証人 大内義長』と印鑑が押されていた。
保証人や死亡届まで名前があるということは、桂美京と大内が親しい関係であることがわかる。
更に、契約書のメモ欄に小さな拇印も押されてあった。
「この小さな拇印は何ですか」
不動産会社の社長が答える。
「ああ、これですか。
私も川田に聞いたことを思い出しました。
桂美京さんは当時女の子のお子さんがおられて、契約書に大人がハンコを押していたので、真似をしたかったようです。
同じようにお子さんが拇印をメモ欄に押していました。
まあ、契約は有効なので問題ありません」
次に、夏山の将棋道場に行って川田との関係について聞き込みをしたかったが、道場の鍵は閉まっていた。
「吉川さん、先ほど電話しましたが応答が無かったのです。
ここは自宅兼道場なので裏に回ってみますか」
自宅のインターフォンも押したが応答は無かった。
「鈴木さん、今日山水園亭で将棋の女流タイトル戦をやっているのですよ。ひょっとしたら夏山さんも山水園亭に行っているかもしれませんね」
「そうですか。
私は一旦戻って桂美京について、もう少し調べてみます」
「私は、山水園亭に行ってみます。
夏山さんが居られるかどうか見てみます」
「それではまた明日朝山口県警で情報を持ち寄りましょう」
吉川は山口県警に戻り自分の車であるレクサスNXで山水園亭に向った。




