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赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら、次次と死体が現れた  作者: lavie800


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第十六話

コーヒーを自販機の前で飲んで落ち着いた吉川は、美都留のいる個室に戻った。

美都留と視線を合わせずタブレット端末に目を落としながら、冷静な顔つきで捜査状況について再び語り始めた。


「2件目の淡路島の別荘で林田と大内が中毒死した件については、夾竹桃の毒が原因だった。

君の中毒症状も夾竹桃だったから、何らかの形であの別荘に夾竹桃が持ち込まれたことになる」

「気持ち悪くなって急に意識が遠のいたのよ」

「二人の死亡推定日は私が二人の遺体を発見する2日前くらい」

「赤龍戦の対局日が1月3日だったわ。

時系列で整理すると、

オーハシポートホテルで、川田直久が焼死体になったのが、1月3日の午後4時~4時50分の間。林田初段が失踪したのはこの日の夕方のイベントのあと。

関係者の事情聴取で私が県警でヒヤリングをされたのが1月4日。

この時にはすでに大内と連絡が取れなかった。


失踪した林田初段の自宅を捜索したのが1月5日。

林田の自宅の遺留品から、大内が兄であることがわかった。

また川田直久の不動産勤務の名刺とSMグッズと脅迫メールが見つかった。林田の自宅には将棋に関する物が非常に少なかった。

コンタクトも眼鏡の予備もなかったわ。」

「そうだったな」


「私以外の参考人の事情聴取は、関係者の都合がつかず1月6日に 

集中的に県警で実施された。

川田直久について参考人に順番に聞いたが、川田を知っていると答えた人物は居なかったみたい。

対局後イベント終了後の林田の行方も誰も知っていると答えた人も居なかったわ。

大内については、昔に全日本将棋連盟または将棋に関係するような記憶があると答えた人が何人かいた」

「そうだ」


「私が淡路島の別荘で倒れてあなたにスマホで助けてと連絡したのが1月7日の夕方。

多分林田と大内の死体がその時にはすでに別荘の暖炉の前にあったと思われる。

あなたが淡路島の別荘で、林田と大内の死体を発見したのは1月8日」


「私が二人の死体を別荘で発見してから二日くらいたっているという鑑識の結果がある。

だから、別荘の二人は中毒死をしたのは5日の夜から6日にかけてということになるかな。

もう少し鑑識や捜査で幅が狭まるかもしれない」


「それ以外に別荘の中のことを知りたいわ」

吉川は別荘の状況について、課長から聞いたことを美都留に伝えた。

「大きなスーツケースが別荘に残されて、中は空だったのね」

「そうだ。」

「明日スーツケースの中の詳しい鑑識結果も聞けるよね」

「そうだと思う」

「前に推理したように、林田初段はホテルで大内が持っていたスーツケースの中に入り、そのまま大内がホテルの駐車場の車の中にスーツケースを入れて淡路島まで車で移動したのよ」

「ホテルに残された画像は大内の顔がはっきり写っていなかった」

「別荘に残されたスーツケースとホテルに残されていた画像のスーツケースが一致して、スーツケースの中に林田の痕跡が残っていれば、私の推理が裏付けられるわ。まず間違いないけれど」

「明日確認しよう」

「何故林田をスーツケースに押し込んで淡路島の別荘に行く必要があったのかまだわからない。

賞金の大金を手にして、何か慌てて逃げるような感じだわ。

林田は男装の化粧をしていたのよね」

「将棋関係で興味深いのは別荘の大内のズボンのポケットにあった史料とタブレットの将棋の棋譜ね。

将棋に関することだから警察より私の方がわかるかも。

また大内の右手には将棋の駒の桂馬があったのよね。

川田の時と同じ桂馬が残されていた。

どう考えてもダイイングメッセージだわ」

美都留は目を輝かして早口で話した。


「明日県警に行けば将棋の棋譜も見られると思う」

「林田初段の部屋には将棋に関する資料がほとんどなかったわ。大内や川田の自宅には将棋に関するものは無かった?」

吉川はタブレットの調査資料を探した。

「川田の部屋には普及品の安っぽい将棋盤と将棋の駒はあったようだ。桂馬の駒が足りなかったようだ。

大内の部屋にはパソコンの将棋ソフトや将棋の研究書物が沢山あったようだ。将棋ソフトは将神火匠という名前だな」


美都留は頷いた。

「現在時点で最強の将棋AIソフトだよ」

更に早口で、美都留は続けた。

「それと史料の中身が読みたい」

「大内が持っていた史料は崩し文字で読めなかったので専門の分野にお願いしている」

「ちょっと見せて」

美都留は吉川のタブレットを覗き込んだ。

「読めるのか」

美都留はタブレットに現れた崩し文字をスマホで読み取っていた。

「高校で漢文習ったときに日本の中世の古文書にも興味をもったことがあるの。

あとAIのOCRソフトで中世の崩し文字を現代語に推論できるアプリがあるはず。

正確に全部は読めないけど大体わかる」


吉川は唖然として、「スマホで古文書が読めるのか」

美都留は目が血走っていた。

「大体よ。不正確かもしれないけれど。

どうやら山口県の戦国時代の武将である大内家の埋蔵宝の在り処が書いてあるわ。

これは大変」

美都留の額に汗が浮き出ている。



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