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赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら、次次と死体が現れた  作者: lavie800


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第十四話 ギフテッド

吉川はレクサスNXプラグインハイブリッドで再び病院に戻った。

エンジン音がしないので病院の駐車場にピッタリだ。

病室に入ると医師とベッドに座っている美都留が談笑していた。

医師が「眩暈や吐き気など中毒症状はもうありません。

念のために脳波と脳のMRIを撮りましたが病変に結び付く所見はありませんでした。

ただ脳の一部に特徴的な所見が見られましたので患者さんの同意を得てウェクスラー式検査をしました。

数値が130以上でしたが将棋の棋士をされているということで納得しました」


吉川は何を言っているか理解できなかったが、

「大丈夫ということでしょうか」

「問題ありません。きわめて知能指数が高いのでギフテッドと呼ばれる顕著に高い知性や独創性や優れた記憶力を持つ人の可能性があります。

感受性が一般の人より強く、自分の興味のあることを一般の人より極めて深く探求したりします。

刺激も一般の人より強く求めるので、ご主人、ご理解頂いて接してください」

ご主人?

吉川は不審な顔をしたが、美都留が舌を出して笑っていたので、医師への否定の言葉を飲み込んで、別のことを聞いた。

「いつ頃退院出来そうですか」

医者は自信ありげに答えた。

「明日朝には退院できます。

汗をかきやすい体質のようなので水分を十分とるようにしてください」


医師と美都留はそのあとも長く談笑をしていた。

脱水症状が起きたり汗をかいたりすると明晰夢を見やすくなるとか、タイムリープの方法とかフロイトとか訳の分からない単語が飛び交っていた。


吉川は緊張が解け手持無沙汰で病院の天井を見つめていた。

県警の課長には、明日病院で退院手続きをして、女流棋士も県警本部に来てもらうので少し遅くなると断りの電話を入れた。


医師が去って病室の個室に二人きりになった。

まだ少し顔色が青白いが元気は戻ってきた美都留に声をかけた。

「体調はどうだ」

「お陰様でもう大丈夫よ。

病院ではありがとう。

先ほどの医師から、脳の研究をしているのでよかったら研究に協力してほしい、と言われたの。

別にかまわないと言っておいたよ」


「病院の医師に、ご主人と呼ばれたけど」

美都留はいたずらっぽく、それから申し訳なさそうな顔をして

「退院するまでに保証人に書いてもらう書類を病院で渡されたわ。

だから名前を借りて、続柄に配偶者(予定)と書いてあなたの名前を書いて病院に渡したの。

ごめんなさい。

それで別荘はどうだった?」


「林田が死体で見つかった。大内の死体もあった。

二人の死因は夾竹桃中毒のようだ」

「そう。林田初段はホテルから失踪して、別荘で中毒死なのね」

「オーハシポートホテルの焼死体と今回の別荘の夾竹桃の毒死の二人の死体について、事故死なのか、それとも事件なのか明日、県警本部で捜査会議がある。

そう言えば君が誑し込んだ本部長から、今回の件で意見を聞いてくれと言われたよ。

将棋の駒の桂馬とか、別荘のタブレットPCに将棋の棋譜が残されていたとかで意見を聞いてほしいと言われた。

明日予定が無ければ一緒に県警本部に顔を出してほしい」


美都留は満面の笑みで頷いた。

「任せて。私が解決してあげる」

やはり調子に乗ってきたな。


何となく顔色も血色も肌の艶も元気も戻ってきたみたいだ。

「赤龍戦で林田さんに準決勝で負けて、将棋に強くなる秘訣を知りたいと思って林田さんのことを調べていたの。

林田さんの失踪と3つの死体というか、殺人事件と思っているけれど、これは将棋が事件の解決に結びつくと考えているわ。

オーハシポートホテルの事件と淡路島の別荘の事件に共通しているのは、将棋の駒である桂馬が残されていたことよ。

それから別荘の死体の横にはタブレットPCがあり将棋の棋譜が残されていたのよね」


美都留がツインテールの前髪を触って言った。

「ねえ。もっと捜査の詳細教えて」


先ほど医師が美都留は顕著に高い知性と言っていたよな。

吉川は川田と大内の事件の詳細を、この瞳の大きな整った美少女の女流棋士に話してみようと思った。


名探偵ギフテッド女流棋士の誕生か?


吉川はどこから話そうかと逡巡していたら、美都留がベッドから上体を起こして掛け布団を取っ払った。

「ねえ、早く」

美都留が吉川の手を引っ張った。

吉川の体勢が不安定になり、思わず美都留の胸元に倒れ掛かりそうになった。

倒れる寸前で、体制を立て直して事なきを得たが、吉川の顔がブラジャーをしていない美都留のパジャマの胸元を一瞬覗き込んだようになって慌てた。

「倒れてきてもいいわよ。受け止めてあげるから」

美都留は少し開けた胸元を隠そうともせず、笑顔で手を繋いだまま微笑んでいた。


一緒にいて話をすると何故か守ってあげたいという騎士道のような感覚と、それと逆に女神のような存在に包み込まれたいという居心地の良さの感覚が、交互に吉川の脳内の中を駆け巡った。

不思議な魅力をこの美少女から感じるようになってきた。

これはどういう感情なのだ。



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