思い出す1
久しぶりの投稿
DV、暴力表現があります。ご注意ください。
だからR15です。
嫌いな方は2に飛んでください多少になります。
ああ、これは夢だ。
思い出したくもない所からスタートするらしい。
私は13歳で嫁いだ。
相手は20歳も上の男。
大商家の番頭というか何故かその大商家の跡取りが相次いで亡くなって跡取りに選ばれた男。
私とその男、初婚同士ではあるものの商家でそれなりに成功していた我が家がそんなにも結婚を焦る必要があったのかなと幼心に思った。
晩年になって思えば外堀は完璧に埋められていたのだ。
大商家の跡取りに求婚され両親は断る事に苦心していたが取引が先細り、受けざるを得なかった。
そうして、最後は事故によって亡くなった。
結婚してから3ヶ月も経たぬうちに。
その時私は妊娠していて、葬式にさえ出して貰えなかった。
うちの商家は男の商家に吸収された。
家財道具も何もかも遺さず処分され私の手元に残ったのは母の普段使いの小さな石のブローチと父の普段使いのカフス1つ。
「……これだけですか?」
「お前に必要な物は買い与えてえる。形見の1つでも無いと外聞が悪いからな。それよりも飯だ。早くしろ」
「お墓に……行きたいのですが」
「はぁ……お前にそのような自由があるわけないだろ。せいぜい俺に尽くせ、気が向いたら連れて行ってやる。あんなものなんの価値も無い石だ」
「酷い……」
「五月蝿い!」
パーンと強く頬が叩かれた。
それだけで私の体は床に倒される。
「痛い!貴方の子が腹にいるのですよ!」
「流れたのならそんなものまた作ればいい」
「なっ!」
「お前には戻るところも行くところも無いのだからな。せいぜい尽くせ」
そこからが地獄の始まりだった。
監禁され殴る蹴る、レイプの様な夫婦生活。
毎年孕み、孕んでいる最中も関係無く襲われる。
子ども達は手元で育てられた。
それだけが与えられた自由だった。
子どもが5人出来たあとは気まぐれに抱くだけだった。
それよりも商家の仕事も家の仕事も押し付けられ、忙殺され寝る暇は無く、無能と逆らうなと洗脳され、ただ言われるがままに生きているだけだった。
女に酒、賭博、好き放題。
請求書の山に商家が傾かぬように必死だった。
できた仕事は全て男のやった仕事とされ、遊び暮らす男の生活全部を支えさせられた。
幸いにも女が出来ても子は降ろさせていたのか養育費云々の話は一切無かった。
子ども達は父親を侮蔑しながらも私の言うことを聞いてそれぞれに逃げ出す準備をして良い学校の寄宿舎へと入った。
そんなある日男は倒れた。
直ぐに医者はわざと呼ばなかった。
ゆっくりと時間をかけた。そもそも医者の場所さえ知らないのだ。
ようやく連れてきた医者は先は長くないとハッキリ告げた。
「クリスティナ、来世もその先も永遠に嫁に娶ってやるからせいぜい尽くせ。いいな」
私の手を取りニヤリと気味悪く笑うとそのまま息を引き取った。
反射的に返事をしようとして思いとどまった。
この男とは二度と関わりたくない。
このゴルド・トーラムとは。
そう思っている間に男は事切れた。
「二度と関わりたくないないわゴルド・トーラム。全て貴方の物は焼き捨てるわ」
葬式も簡素に、墓石は石1つ。
私は呪縛から解き放たれた。
決意した私は子ども達に告げ、全てを処分する為に動いた。
なんの因果か子ども達は素直で優しい子に育った。
商家を継ぎたい子には赤字部門を切り売りしてゴルドの膿を出し切って継がせた。
その子は商家の名前をクリスティナの両親の名前、モンドール商会と名前を変え、モンドール商家だった頃の昔からの従業員と誠実な商売を始めた。
綺麗な娘に育った二人の子は学校で知り合った貴族の三女らと城の侍女として働き始めている。
他の息子は騎士になったり研究者になったりとそれぞれ自分の生き方を見つけた。
私は33歳になっていた。
そうしてゴルドを知らない田舎に小さな家を買い、ゆったりと余生を過ごすはずだった。
家の前に青年が落ちていなければ。
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