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グリーンの呪い

 焼き肉屋での密会があった次の日。教室では海斗が何やら怪しげな都市伝説を語っていた。最初は俺には全く関係ないと思っていたが……どうやらそんなこともないらしい。



「『グリーンの呪い』……? 」 


「え~剣太郎知らねえの? ていうかあの日見てねえの? いたじゃん。お面被ってバット振り回してる人」


「……あぁ~……」



 何を言っているのかを理解した瞬間、返答に苦労した。そういえばあの時俺は自分の顔を隠すために祭りの日のよくわからないテンションでお面をかぶっていた。モンスターに関しては公安の人たちがネット上から情報を消してるらしいけど……。俺のことは放置ですか。そうですか。



「それで……その人がなんだって? 不審者情報か? 」


「いや違う違う。そういうんじゃなくてさ……あの人が実は日本で密かに活動する『悪魔祓い』って話があるんだって」


「あ、あ、悪魔祓い……? 」



 日常生活じゃ聞きなれない単語。一体どこからお面を被った危険人物からそこに繋がるのか。



「いきなりだな……どうしてそう言われてるんだ? 」


「いやさあの日の祭りの事故さ、『集団発狂』とか、『ガス管の爆発事故』とか、『地盤沈下』とかさ……なんか色々噂はあるけど結局はっきりしないじゃん? でもその中でもさ数百人が見たっていうんだよ。山羊頭の『悪魔』をね。俺は全く見れなかったんだけど……」


「……へぇ~」



 そうか。ホルダーじゃないと『イビル・レギオン』のことをモンスターだと分かる人はいない。そんな中で祭りの来客の一部はあの黒い怪物の姿を見た。となると自然と奴らのことを『悪魔』だと断定するかもしれない。



「集団幻覚とかの類の話じゃないか? さすがに突拍子もないだろ」



 だけどおかしい。その手の話は全てコーアンの人がもみ消している筈だ。別に彼らの隠ぺい工作を手助けしようという気はさらさら無いけど、怪しまれないために否定はしておく。すると海斗はしたり顔を俺に向けてきた。



「いやそう言うじゃん? でもウチの高校であの場所にいたヤツも何人かは見たっていうんだぜ。俺たちの中にもほら木ノ本さんとかが……」


「へぇー……。俺がネットで見た時は……そんなこと言ってる人一人もいなかったけどな」


「いや剣太郎。どうせ主要SNS何個か調べただけだべ? そんなんじゃ甘いよ。噂だとその手の話をネットの目立つところですると運営から消されるらしいぜ」


「じゃあ海斗はどこで見つけたっていうんだ? 」


「俺も昨日見つけたんだよそこ(・・)をさ。見る? ほらここ! 」



 手渡されたスマホの画面。そこにはいかにもアングラで怪しく古そうなオカルトとか都市伝説系の情報まとめサイトがあった。記事にコメントをつけれる仕様になっており、ここ最近の記事だけがコメント数が1000以上もついている。



「ここでどんなこと書いてあったんだ? 」


「最新記事見て見ろよ」



 画面を操作して見つけた。コメント数がなんと2000件にもなっている。そして記事のタイトルが…………なんだコレ?



「『不人気・戦隊グリーンの呪い!? 現代に現れた悪魔祓い』……は? 」


「面白いぞ。見てみな」



 画面を押して開いた。そこにあったのは何とびっくり。『魔王と戦った日』の俺の写真が数枚。金属バットを振り回し、宙に浮かびあがっている姿。全て手振れが酷く、遠景の写真であるためさすがに特定はされないとは思いたいが……。声の震えを出来るだけ抑えて俺は海斗に確認した?



「これ? 加工とかじゃないんだよな……? 」


「いやさすがにそれは俺も分かんねーよ。でも『お面の人』なら見たって奴はネットにも周りにも結構いるって話。その名も『グリーン・バット』」


「な、な……んだその……クソダセェ名前……」



 顔が赤くなってきた。それが自分のことを指していると思うとより頬が熱くなってくる。そんな俺の様子に全く気付かない様子で海斗は尚も語り出す。



「まあ名前はいいじゃん! 今ある情報は『グリーンのお面被っててバットもってること』だけなんだからさ。それでこの記事で言われてるのがさ、何もない宙に向かってバットを振り回すその動きがもしかして『悪魔祓いの儀式』だったんじゃないかって話でさ。そっから最近日本で沢山起きてる怪事件も全部、悪魔の仕業かもってとこまで発展してんだよ。今この『悪魔』関連はマジで熱いぜ剣太郎」



 何も知らなかった時の、普段の俺ならこの話を聞いてどうしてただろう? バカバカしいと言って笑い飛ばしていたか。話には乗りつつ心の中で信じずにはいただろか。 


 だけど俺は知っている。その怪しすぎるサイトのイカレた記事に書かれていた内容の一部は『大当たり』してしまっていることを。


 このままこの話を続けるのは余りにも居心地が悪い。俺は海斗がまだあまり触れてない『戦隊グリーン』の方に話をシフトした。



「じゃあこの『戦隊グリーンの呪い』ってのは何だ? 」


「ああ……それはな……えーっと……剣太郎は戦隊ヒーローとか子供のころ見てた? 」



 唐突に質問に質問で返され頭の中が一瞬ごっちゃになる。5歳くらいの薄い記憶を思い出しながら俺は海斗の質問に答えた。



「……まあ人並みには? 小学校入る前くらいまでは結構好きだったと思う……」


「じゃあその中で何色が好きだったか覚えてる? 」


「えぇ~どうだったかな……確か……ブルーだったような……? 」


「だろ? グリーンじゃない(・・・・・・・・)だろ? なんかどの世代もそういう傾向にあるんだって。5色の中でグリーンが一番不人気。だからあの祭りの日に現れた『グリーン』はその『怒り』とか『呪い』の化身かもって説。まあこれはかなりふざけた話だけどな」


「いや今までも十分ふざけてるからな……? 海斗って本当にその手の話がすきなんだな……」


「盛り上がってる話題が好きなだけさ。それが今はこっち方面ってだけ。まあでも剣太郎ももう少しアンテナ張っておいた方が良いぜ! 」



 その前にも聞いたような気がするありがたい忠告を受けながら俺は心の中で謝っていた。海斗と『グリーン』に。


 すまん海斗。色々教えてやりたい気持ちは山々なんだけど……コーアンの人になんて言われるか分からないからやっぱり無理だ。


 そして『グリーン』さん。俺があの時あのお面を拾ったのはたまたまです。ご迷惑をおかけして本当にすみません。あと何で地面に捨てられていたのかも何となく理解しました。これからも……頑張ってください……。


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