”差”の勝利
障害物となった廃墟を何十棟もなぎ倒しながら俺たちは導かれるようにレッドゾーンの中心へと急行する。不自然に開けたその場所はかつての新大和駅だったという事実は後で分かった話だ。
「縺ョ襍、繧灘搖縲……? 」
「いくぞ……【火炎魔術】……」
真なる殺し合いを始める両者の間に言葉はほぼ必要ない。
相手が毒ガスを漆黒の身体に纏い始めたのを見るや否や、俺の方も温存していた[魔力]を全て開放した。【魔力掌握】の副次効果によって飛躍的に消費効率が良化したことによって残存魔力は90パーセント以上。選択肢は無限大だ。でも既に、これから何をやるのかは戦うと決めたその時から思いついていた。
「『反転放出』――『蒼き龍神の焔』」
身体の芯から引きずり出した[魔力]を操作し、手のひらから着火した“青い炎”が全身に回り世界に現出した瞬間、熱せられてプラズマ化した空気はバチバチと点滅する。
コレはさっきまでは使えなかった“毒ガス”への最も有効な対処法。肌に纏った『龍の炎』をもってして、触れる前に毒素ごと焼き尽くす。恐ろしく燃費が悪い方法ではあるが、この[魔力]の残り具合なら十分使用可能になってくるラインだ。
「$”#ォ縺ョ隗戀!(埀)(??”!?! 」
「さて……――」
嫌な予感は相変わらず心の奥底に巣食っている。
勘は常に頭の中で最大級の警鐘をガンガンと鳴らしている。
どこからともなく吹き込んで来た悪寒が俺の肌を泡立てている。
「――決めるか」
だけど不思議と、目の前に対峙した【魔女】からは“恐ろしさ”のようなものを感じない。変身の瞬間には確かに感じていた、悍ましさを察知することが出来なかった。
だったら『勝負』はこの刹那で決めたい。さらに後のことを考えれば一撃で仕留めておきたい。
「ふっ! 」
「縺ィ縺ェ縺! 」
考えていることは両者同じだった。
仕掛けたタイミングは同時。[魔力]の濃さを強めたのも同時。
認めよう。自信はあった瞬発力勝負はほぼ互角だった。
でも……。
それでも……。
「『炎舞――熱殲』」
「縺ォ翫繝鞨縺ェ縺ェ縺縺縺縺! 」
[魔力]濃度の上昇速度では圧倒的に俺の勝ちだ。
「繝鞨縺ェ縺ェ縺縺繧ッ繧ス繧エ繝溯?谿コ縺縺」
これだけはどんだけ叫ぼうが、喚こうが無駄だ。
この0の状態から上げていく速さの違いは恐らくは【魔力掌握】の有無の差。
経験の差。
魔力量の差。
非数値化技能の差。
ちょっとやそっとじゃ埋まらない差。
一瞬の”変身”じゃどうにもできない差。
「繝鞨縺ェ縺ェ縺縺縺縺! 」
「【棍棒術】……」
ホルダーとモンスターの争いは結局、そこに収束する。全能力が完璧に数値化される世界において戦いの勝敗は数値の大小――つまり『差』が出来た部分から優劣が決定するんだ。
だからもしも相手の能力が分からなければ,まずは観察して、彼我の差を見付ければいい。
だって、その『差』を真っ向から無理やり押し付ける”技術”と”能力”と”戦略”を立てられた者――
「&$#!"&##$%&!#&$2!!!#!"%$#%!#%#!&&!&1!?!?!? 」
「これで……終わりだ! 」
――この世界では、それこそが『勝利者』になるなんだから。




