敵対敵
「いったい、どこを狙ってんだァ? 本当に眼ぇ付いてんのかァ!? 」
「ほう、この程度なら避けれますか……ならコレではどうです!? 」
二体の強大なモンスターが足場の無い空の上で“音を置き去りにした戦い“を繰り広げている。
風を纏い肩で雲を引き裂く両者は咆哮を上げて、一方は上から腕を振り下ろし、もう一方は下から居合で斬り上げて、小細工なしに真っすぐ正面衝突した。
「『ホワイトアウト』ォ! 」
「『ジャガーノート・ファング』! 」
すれ違いざまに一撃。
「浅いか……! 」
「まだまだ! 」
宙空を蹴りあげ加速した上で追撃。
[魔力]を纏う二つの回転は天空を自由自在に舞い上がり、【魔境】全体に剣戟音を轟かせる。
「『ノーブルスラスト』ッッ! 」
「『獣天裂傷』ッッ! 」
複雑に絡み合い、激しい火花を散らす『白い刃』と『獣の爪』。【白騎士】はもちろんだが、向かい合っている獣毛を纏った戦士も明らかにレベル100周辺の動きではない。10秒足らずのやり取りだけで分かる。レベル200近辺の“大物”だ。どちらも魔王軍の重要な地位を担うモンスターであると断定することができる。
「この手ごたえで『腕一本』だけかぁ……? 」
「分からないんですか? 斬らせてあげたんですよ。私の『再生能力』をアナタに教えてさし上げるためにね? 」
しかし分からないことがある。
なぜ、この二体は争っている?
これほど激しい敵意を向け合っている?
「……」
僅かな疑問を抱きながら宙に浮き上がり、戦いの趨勢を無言で見つめる中でも、俺の足下ではモンスターたちが叫びをあげ、血肉を食らいあっていた。
明日(11月30日)は二話投稿




