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壊滅した故郷で

投稿が遅れました。


本日、二話投稿です。

 台倭区――【大和町】。


 総面積は24平方キロメートル。


 総人口は6万人そこそこ。


 特別優れた産業も特段有名な土地の謂れも無く、もちろん観光地でも何でもない、県内随一の都市部からは少し離れた場所に位置する、取り立てて目立った特徴の無い日本の近郊の一つ。


 だけど住み心地は良く、何よりも“平和”であることが一番取り柄の街。


 俺の生まれ育った『大和町』はそんな所だった。






「……」



 白い霧が晴れ渡る直前までは目も耳も塞がれていたかのように一気に押し寄せて来る情報にしばらく言葉を失っていた。


 巨大な隕石でも振って来たかと錯覚するほどに広く深く抉れた地面。


 台倭区の比じゃないほどに荒廃し、残骸すら消え失せた、かつては街が広がっていた荒野。


 そこでは【索敵】スキルでさえも数えきれない程多くのレベル90~120近辺のモンスターがわき目もふらずにぶつかり合い、頭上では何の変哲もない青空が他全ての“異常な光景”とは不釣り合いなほどに鮮やかだった。



「知らないぞ。こんなの……。俺の知っている大和町はどこだ? 」



 生まれて来てから一番多く利用した駅である『新大和駅』。 


 野球の練習のために何度となく訪れた『近所の公園』。


 小中と連続で使用したため目を瞑ってでも道が分かる『通学路』。


 走り慣れた人工河川の近くの『ランニングコース』。


 1学期しか通えなかったけれど愛着はある『大和高校』。


 それら全てが大小さまざまな怪物たちの身体に覆い尽くされ、踏みつぶされ、跡形もなく壊されている。



「ここで一体……何が起きて、いま何が(・・)行われているんだ? 」



 その光景はある種、これまでの人生の中で最も絶望的だった。


 もはや視界の中には俺が知っている景色はどこにも存在しえなかった。



「本当に……予言通り……“あの二人”がこんなところに居るっていうのか? 」



 そして何よりも心配だった。


 こんな場所に居るかもしれないという梨沙(いもうと)と爺ちゃんのことが。


 後生大事に抱えている【片割れの羊皮紙】の反応はあるけれど詳細な居場所自体は未だに掴めていないままだ。


【索敵】と【鑑定】、それらを【合成】した【複合魔法】を周囲にバレないように絶えず使い続けているけれど、二人の足跡すら見つけられていない。【仮面変化(マスクチェンジ)】を使って経験値(ポイント)を全て[魔力]に置き換えた上でもダメだった。


 もしも一時の感情を優先するならば、俺の生まれ育った街に我が物顔で蔓延り、争うモンスターの群れには今すぐでも【魔法】を撃ち込んでやりたいところだけど、そんなことをして梨沙たちにどんな不都合が起きるのか分かったもんじゃない。


 そうだ。今は目の前の出来事に一々疑問を投げかけている場合じゃない。最優先なのは二人との一刻も早い合流だ。



「待ってろよ……二人とも」



 だから俺はすぐに動き出した。



「【魔力掌握(オーバーロード)】――『消失(ロスト)』」



 そよ風にかき消されてしまうほどの小声で『技』の名を呟くと自分の身体から極々微量漏れ出ていた[魔力]の波動は次第に鎮静化され、最終的にゼロへと到達する。これは自力のコントロールでは到達しえない[魔力]の完全な抑制が可能になる『隠密方法』だ。着想はあの(・・)”透明人間の男”から得た。



「これで、よし」



『原因』は何が何だか分からないけどモンスターが潰し合ってくれている現状は”誰にも邪魔されずに人探しをする”という意味では絶好のチャンス。まだこちらの存在を気付かれていない状況と機会を逃す手は無い。


 俺が透明人間(アイツ)と同じになれるのは『消失(ロスト)』の効果が切れるまでの10分間。速攻でカタを付けてやる! 


 そう決意して地面を軽く蹴り上げ、音もなく跳躍した矢先。



「【白騎士(・・・)】様! 第二陣の準備が完了しました! 」


「……おせぇ。あと10秒は短くできんぞ。今すぐ出せ」


「はっ! 」



 雲を介したすぐ近くで、聞き覚えのある『鎧越し(・・・)の声』がした。



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