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休息の終わり

 気付いた時には俺の身体は戻っていた。



「ダンジョン攻略順調そうだなー」


「せっかくA-2からわざわざ来たのにさー。俺らの出る幕ねーなー」


「今日の昼飯はどうするー? 」


「移動販売が来てるらしいから行ってみようぜ」


「そういえばさぁ、あの時のドロップアイテムいくらになった? 」


「まだ売ってないー。【大戦】で『買い取り屋』が更地になっちゃったからさー」


「おーい。あんまり急ぐなよー。転ぶぞー」


「へーき! へーき! だいじょうぶだよー」



 テントの中から避難所の街へ。


 元居たC-3地区の中央通りへ。


 現在の俺の日常へ。


 一瞬前までは謎の異空間に居たとは到底信じられない程に唐突に。まるでダンジョンを攻略し戻ってきた時かのように。



「ほんと……なんだったんだろうな……」



 まるでキツネにつままれたような気分になりながら、もう一度歩き出そうとしたその時。



「あ! 」


「いたッ! 」



 すぐ近くを走っていた小学校低学年くらいの女の子が一人。


 派手に地面へ突っ込んだ。


 しまったな。完全に油断してた。まったく反応できなかった。


 自省しつつ、ポケットから回復薬を出し、声をかけようとしたその時。


 膝をおさえてうずくまる女の子の元へ男の子が間髪入れずに駆け寄って来た。



「うぇぇ……いったいぃ……」


「だから言ったじゃんかー。あんまり急がなくて良いって」


「いたい……いたいよぉ……お兄ちゃぁん……」


「ほら、傷口。右ひざ? 治してやるから兄ちゃんにちゃんと見せてみな? 」


「うん、わかった……――はい」


「いくぞ……【回復魔術】! 」



 木ノ本と同じ【魔法】! この男の子……この歳でホルダーなのか! 


 内心の驚きを隠しながらじっと二人の様子を改めて見つめる。


 ちょうど女の子が泣き止んだところだ。



「どう? もう痛くない? 立てるか? 」


「うん! 」


「おっけー。じゃあ父さんのところ戻ろうな」


「はーい! 」



 そして二人の兄妹は仲睦まじく帰路につく。男の子は優しく妹の頭をなで、女の子の方はもう怪我をしたことなんて忘れてしまったように兄に向かって笑顔を見せていた。



「……」



 なんて微笑ましい光景なんだろう。なんて心温まる一幕なんだろう。



「――……ッ」



 だけど今だけは……そんな何の変哲もない平和な光景が……とても、とてつもなく苦しい……。


 あの【予知(うらない)】を見てからは。



――『南西のふるさと。魔に墜ちた大地にて。アナタにとって最も大切なモノ(・・・・・・・)に闇が迫っている』



 ああ、やっぱりダメだ。すぐには切り替えられない。


 あんなことを言われて、心がざわめかないはずが無い。


 信憑性があろうと無かろうと、気にしないことなんて出来るわけが無い。



「何かしでかすまで、もう少し”泳がせる”つもりだったんだけどなぁ……」



 だからもう止めた。



「――『瞬間移動』」



 これ以上、状況に対して”受け身”でいることを。


 

「……ど、どうして……分がった! 」


「もう少し[魔力]と視線と身体を隠せよ。バレバレなんだよ」


「くそ……ッ! くそッ! 」


「さて……捕まったからには大人しく吐いてもらおうか。コソコソ俺の後をつけていたお前(・・)はどこの誰なのかをな? 」



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