戦士の休息(2)
聞いている限り避難民たちが話している内容は大きく3つに分けられる。一つ目は取り留めも無い日常会話。二つ目はホルダー関連の得体の知れない噂話。三つ目はこれから未来の事。
その中でも特に、一番多く耳に入って来るのは『二つ目』だった。
『超格安で【回復薬】を販売しているサイト』
『有名ランカーの秘密の活動場所』
『まだ認知されていないレアモンスターの出没情報』
『【レアスキル】や【希少魔法】の独自の発現方法』
『ドロップアイテムを50%以上の確率で入手できるジンクス』……などなど。
……あとは、まあ良いや。俺の事なんて……。
まだ気づかれてないし。気づかれたのは居場所だけだし。まだバレていないし。
大丈夫。代名詞のバットは肩にかけたケースにちゃんとしまってある。
『なんとかバット』なんて奴――俺は知らん。
「ねえねえ知ってる? あの話? 」
「なにー? 」
またか……そろそろ勘弁――。
「絶対に当たるっていう『占い師』! 」
――あれ?
「えー……またまたー」
「いやいや今回はマジだよー! マジマジ! そういう未来が分かる【スキル】? ――があるんだって」
「へぇー! ホルダーなんだその人! 」
「ねえ? 凄くない? 初めて聞くよねーこんなの」
「でしょー? 占ってもらいたいでしょー? 」
「うんうん……え? もしかして? 」
「そんなアナタに朗報! なんとその占い師が今日C-3に来てるそうなんです! 」
「やったー! ここから近い? 」
「えっとねー。たしか――――」
この辺にしておこう。盗み聞きも限度がある。
それに俺とはまったく関係無かったもんな……。
あれ……急に恥ずかしくなってきたな……。
やっべえー……ほんとさぁ……なに勘違いしてんだよ……俺。
「まあ……いいか……」
ああ済んだ話は置いておいて……ちょっと気になるな。その『占い師』っての。
絶対に当たるという占いがホルダーの【スキル】によるものなら信じられそうだ。未来予知が出来る【スキル】くらいならどこぞの誰かが持っていてもおかしくはない。
最後まで聞いとくべきだったか? ちょっと探してみるか?
「【索……――」
【索敵】スキルを使い、それとなく噂の占い師を探そうとした途端。
「寒っ……! 」
異様な冷気が吹き込んだ。脇腹をなぞるように。横を風が吹き抜けた。
冷気に気を取られて、一瞬だけ目を細めた、その時。
「いらっしゃいませ――――城本剣太郎様」
頭の中で『謎の声』が反響した。




