火の極致
本日、二話投稿
古来より『火』には浄化の力が備わっているという話をどこかで聞いたことがある。『聖火』『清火』『打ち火』『お焚き上げ』『ゾロアスターの炎』『聖霊の火』。これらの事例に代表されるように炎には“穢れ”を清め、“邪”を祓い、“魔”を退ける効果があると信じられてきたそうだ。
実際のところ火にスピリチュアルな方面でどんな効果があるのかは知らないけど、ホルダーの世界において『火』の魔への効力は絶大だった。
【火炎魔術】のスキルレベルが900を超えると初めて使用可能になる『煉獄浄穢』の力の本質は“その浄化”の部分にこそある。この『技』は物理的な物体だけでなく、そこに何かがあった痕跡・記憶・存在そのものを燃やし、現象を無かったことにする”概念に干渉する力”を持っている。その火力の大きさはモンスターの死後に発生する経験値がこもった“黒い灰”でさえも焼失させ、【魔力爆破】や死後発動する【呪術】の類すら焼き尽くす――――まさに火の極致だ。
しかし忘れてはいけない。
炎は何に対しても常に無差別であるという事。敵にも、味方にも、守りたい誰かにも平等で利益と不幸を同時に与える現象であるという事。
今さら言うまでもなく『煉獄浄穢』の炎は常人に耐えられる代物じゃない。僅かな火の粉の一片が肌に触れただけでレベル2桁前半のホルダーなら塵と化してしまうだろう。
だから大事なのはこの『技』をいつ使うのか。どんなシチュエーションで使うのか。何に対して使うのか。間違えず見極めることだ。
現在の俺たちの陣容はレベル99のホルダーと数百人以上の非戦闘員で成り立っている。発動しているのは【死の呪い】を特定範囲に対して半永久的にかける【魔法】。間違いなくあの『技』が要求される場面だ。
よって考えるべきだったのは非戦闘員をどうするか。通常の戦闘であれば【ヒロイックアドベント】が解決してくれるところだが、『敵』が死滅してしまった今では使えない。
それは解決に難儀するはずの問題だったけど、『答え』はマサヒラと蕪木さんの二人が用意してくれた。
『刀剣結界』は言わずもがな広範囲をカバーできる防衛手段で、高レベルの【魔法】を正面から跳ね返す硬さがある。蕪木さんの【阿修羅門】は自身のレベル以下の生物全てに【興奮状態】とあらゆる【状態異常】への耐性を付与する。この二つがあれば俺の“炎の熱”を耐えるための最低条件はどうにか満たせるだろう。
元々発動していた【天国門】も有効活用できる。身体性能の強化は耐久にはもってこいだ。本来ならば発生しうる『非戦闘員たちの大パニック』も【天使化】の副次効果である“精神安定”によって抑えられている。
これらの条件が全て重なったことで導き出される結果。
それは――
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ"あ”あ”あ”あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ要無辟縺闘陦豐縺阪縺亜閧亞芽阪上◆繝シ縺ー繧ヲ髣倥縺翫♀繝舌Λ繝舌Λ縺ォ縺励※繧縺翫♀豁サ縺ュ豁サ縺ュ縺縺嗚呼○豐ク縺阪>縺縺?≧縺?≧謌谿コ縺呎ョコ縺呎ョ縺%&#UYT#$%6」
死して尚終わらない永遠の責め苦以外にはあり得ない。
【堕天使】を構成していた黒い灰が焼き尽くされ、が完全に消失するまでの200秒。
叫ぶ身体も無いのに轟く絶叫は俺達の鼓膜を震わせ続けるのだった。




