【順位】の穴
【覇王】と戦った後に手に入れた2つのスキルの内一つ【ヒロイック・アドベント】は100時間に一度しか使えない。仕方がない。それだけの効果がこの力には備わっている。自分のやり方を変えない限り、これから何度もこの力には世話になるはずだ。
だけどこれからもずっと『慣れる』ことだけは無いだろう。
【スキル】を使った際の、この“強烈な反動”には。
「――はあッ! ……はぁッ! ……はぁッ! はぁ……! 」
拍動がデカすぎる。心臓が痛い。喉が締まる。息が苦しい。目の奥がチカチカして、鼓膜はキンキンしていやがる。
それに……――。
「――すぅ――」
落ち着け。自分を取り戻せ。もう研ぎ澄まさなくていい。『戦い』――は終わった。
「はぁああああああああ」
「……落ち着いた? 」
大きく息を吸って吐ききった完璧なタイミングで、声をかけて来たのは舞さんだった。その声は顔と同様、色濃い疲労が見え隠れしている。
「……なんとか。そっちはどんな感じ? 」
「終わったよ。全部」
彼女が見つめる先、ホームの残骸の上には[魔力]を封じられ“物理的”にも、“魔術的”にも雁字搦めになった子供の姿があった。
「……」
「もしかして心配してる? 【爆弾魔】の時みたいなことが起きるんじゃないかって。大丈夫。今回は時間があった分、拘束の『専門家』を呼べたから」
「ああ、いや。そうじゃなくてさ……なんか……戦っていて違和感があったんだ。本当にコイツは……レベル111なのかっ……てさ」
【迷宮の主】はダンジョン内で無敵になる【スキル】。だから俺はダンジョンそのものを破壊することで窮地を脱しようとした。
結果的に目論見は成功した。今、傷一つ付かずに無事な俺達の前には意識を失って何もできなくなっている幼い少年が一人だけ。それで良いはずだ。それ以上何も考える必要は無いはずだ。
だけど……やっぱり変だ。おかしい。“これだけの事”をたった一人で出来たコイツが本当にレベル111……? いくら準備をしたからといって……【儀式魔術】があるからといって……マジなのか?
とても信じられない。【世界順位】も10位だし……――――。
「あれ? 」
「どうしたの? 」
「舞さんってレベル140超えてたよね? 」
「そうだね」
「なんで舞さんはトップランカーじゃないの? 」
「最近一気に数十レベル上がったからね。国際ホルダー機構に報告しないと順位は変動しないよ」
「ん? 」
え?
「【世界順位】って……自動で更新されるんじゃないの……? 」
「まだそんな便利な仕組みは残念ながら出来て無いなー。そもそもIHOに登録しないと順位もつかないし……だってさ、城本君――」
――『もしもレベルの増減が何もしなくても把握されて【順位】が自動でつけられるのなら,世界一位は君でしょ? 』
「ッ! 」
いつからか勘違いをしていた。【世界順位】は絶対なモノだと。【東京大戦】をしてから自然とどこかで考えてしまっていた。
そうか。そうなのか。ランクは絶対的な指標じゃない。情報が古い可能性も、そもそも【順位】そのものが信用できないこともある。
「まさか……」
この事実は一つの可能性を示唆している。レベルを公的機関に報告していない“【世界順位】を持たない強者”が世界にはいくらでも潜んでいるということを。
そもそも何かおかしくなかったか? 俺の【鑑定】は、『偽装看破』はここ最近ずっと不発が続いている。スキルレベル150近い【鑑定】の――だ。
この異常に高レベルな【偽装】の連続の裏には確実に『黒幕』かがいる。
公には知られていない規格外の実力を持った”誰”かが――――
「太好了。正好赶上了好的时间(良かった。ちょうどいいタイミングに間に合った)」




