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レベル2桁

 変だなとは思っていた。


最初の討伐者(ファーストブラッド)≫という称号のその名前が。何をもって最初なのか。討伐者とはどういう意味で使われているのかと。


 もし、俺が始めて『モンスターを倒した異世界の人間』としてこの≪称号≫を手に入れたのだったら、必ずいるはずだと思った。『2人目』が。



「やっぱりいたのか……」



 はっきりとこの目で見た。俺以外の明らかにステータスを持つ者達を。驚きのあまり【鑑定】スキルを使うのを忘れてしまったが。


 だから分かった情報は全員が迷彩服を着ていたことただ一つ。けど、それだけでも推察できることは多くある。


 同じ服を着ているということはたまたまあの場所に集まっていたわけじゃない。明らかに一つの目的を持った一つの集団。彼らが民間の団体なのか国が運営している団体なのかも分からない。いやそんなことよりも俺の全く関知しない日本各地でモンスターが暴れていて、それを討伐する団体があるってことは……活動範囲や規模を考えるとやっぱ国営組織か?



「迷彩服ってことは……自衛隊とか? ……やっべえ。助けるだけ助けて、何も言わずに逃げたのマズかったかなぁ……? 」



 ベットの上で頭を抱えた。時間はもう0時を回っている。だけど、頭の中でさっきの光景がグルグルと回り続けてとても眠れそうにない。



「こういう時は……行くか……『上級』に」




「コノ小僧ガァアアアアアアアアア! 何故ダァ! 何故儂ヨリモ『レベル』ガ10近くモ低イ貴様ガ対応デキテイルッッ!? 」


「それはな……≪称号≫のお陰だよ。骨の爺さん」 



『上級ダンジョン:髑髏の宮殿』のボスモンスター。『Lv.98 アンデット・ロード・ウィザード』の叫び声に冷静に返答する。



『≪格上殺しジャイアント・キリング≫:自分よりもレベルが高いモンスターとの戦闘中、ステータスを全て1.1倍にする。これはスキルの倍率と重複する。』



 初めての上級ダンジョンで炎を纏った赤い鬼を倒した時に手に入れたこの称号。俺はこの『倍率強化』のえげつなさをスキルを手に入れてから知った。


 100近い[力]や[敏捷]の差は、本来ならば全く歯が立たなくなるはずだ。それを倍率強化は軽々と上回る。本来なら全く敵わない高レベルのモンスターがひしめく上級ダンジョンである程度戦える理由はこの≪称号≫にあった。



「【蘇生魔術(リザレクション)】!! 再ビ甦レッ! 我ガ忠実ナルシモベ(・・・)タチ! 」



 漆黒のローブに包まれた骸骨の老人は俺の挑発を受けて感情を爆発させた。初手に使ってきた大魔法を再度使用してくる。


 アンデッドロードの号令を受けて、そこら中の地面が盛り上がり始める。数秒後地面から現れたのは夥しい数の骸骨の戦士たち。『スカルデット・ソルジャー』の大軍。その全てがLv.70を優に超えている。バーサーク・グールとは違って統制のとれた連携をしてくる骨の兵士達とまともに戦ったら【自動回復】では追いつかないほどの傷を負う羽目になる。


 だから、こんな時はあの大技が有効だ。



「『ショック・ウェーブ』!! 」



『ショックウェーブ:【念動魔術】がレベル10になると使用可能。魔力を消費した分だけ威力が上昇する衝撃波を全方向に放つ。高威力にすればするほど再度使用するための時間間隔(インターバル)が長くなる。』



 俺の半分以上の魔力を注ぎ込んだ衝撃波は全ての骸骨兵士達を吹き飛ばす。白骨はガラガラと地面に音を立てて落ちていく。だけどコイツ等の厄介なところはここからだ。バラバラになった骨格は時間が経つと糸でつながれているようにもとに戻り始める。


 (スカル)系のモンスター特有の脅威の継戦能力。本来なら骨が砕けるまでバットで打ち据えないといけない。だが幸運なことに俺はぴったりの対処法を持っていた。



火葬(・・)の時間だ! 『ファイアー・ボール』! 」



『ファイアー・ボール:【火炎魔術】がレベル5になると使用可能。【火炎魔術】で発火させた炎を集めて球状にし、火の威力と操作性を飛躍的に上げることが出来る。練度が上がれば複数のファイアー・ボールを同時に生み出せる。』



 残りの魔力を全て注ぎ込んで俺が生み出した火の球は合計100以上。余すことなく再生中の骨に着弾し、爆発。大軍は一瞬にして煙になった。



「糞ガッ! 糞ガ! 糞ガァアアアア!! コノ王デアル儂ガコンナ人間ノ『ガキ』一匹ニィィィ゙……! 」



 怒りを露わにしてついに単騎で向かってくる骨の王。30000を超える魔力で作られた黒い破壊のオーラを骨の身体にまとった、20000近い力と敏捷による突進は単純に強力だ。


 一方の俺はすでに魔力は使い切った。魔法も技も使えない。だけどもう『技』は必要ない。



「上級のボスは……本当に……おしゃべりなのが……多すぎだッ!! 」



 裂帛の気合の声と共に金属バットを真っすぐ振り下ろす。単純で何のひねりもない打撃。けれどタイミングは狙いすました。


 凄まじい勢いで距離を詰めてきた骨の王の頭蓋骨にバットは思い通りぶつかった。硬いモノが粉々になる致命的な感覚が掌に伝わる。



「悪いな……王様。もう『2桁』のモンスターには負ける気がしない」



 その宣言が届く前に『骨の王』はその身の白い骨を黒い煙へと変えていた。そして同時に俺のレベルがとうとう90へと至った瞬間でもあった。


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[一言] 上位ダンジョンは報酬が無いのか
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