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病室での会話2

 その日、病室に初めて訪れた舞さんが開口一番に言ったのは『良かった。命に別条はないんだってね』という安堵の言葉。その後に続いたのは何故か謝罪の言葉だった。



「城本くん。本当にごめんなさい。率直に言うとね、今回の件で、あなたが成した功績は全て無かったことにしてほしいんだ」



 流石に面食らった。入って来てすぐいきなり頭を下げられたから。それと自分がよく知っているはずの人の口から出た言の端から端まで理解が追いつかなかったから。


 今回の件? 俺の功績? そもそもなんで舞さんが俺に頭を下げてるんだ? まったく意味がわからねぇぞ?



『舞さん? いったいどうしちゃったんだ? 詳しく説明してほしい』



 完治していない身体は動かないままだけど、口だけなら どうにか動かせる。眼前の女性に頭を上げるようお願いしつつ、俺は経緯の説明を求めた。


 沈痛な面持ちの彼女から聞いた話の概要は以下の通り。


1、"今回の件"とはトップランカーたちによる一連の襲撃と暴走を指していること。


2、また今回の襲撃と暴走は世界各国が裏で手を引き勃発した日本を窮地に追いやるための『ある種の戦争』だったということ。


3、そして敗北を認めた各国政府は日本に秘密裏に謝罪と賠償を行い、事態を大きくしたくない日本政府はそれを受け入れたということ。  


4、だから今回の戦争の当事者である俺には何も起きなかったように振る舞ってほしい。


 ……とのことだった。



「……うん、う~ん? 」


「ごめん、説明が下手だったかも……」



 疲労し、混乱した頭では判明した新事実の数々を理解し、咀嚼するのはだいぶ難しかった。


 だげどそんな俺でも唯一分かったことがある。



「ねぇ、舞さん」


「なに? 気になることは何でも言って」


「もしかして……勘違いかもしれないんだけど……こんな大事件を秘密にした理由ってさ……――」



――『俺の殺人を隠すためなんじゃないの? 』



 そう口にした瞬間の初めてみる舞さんの表情、反応の速さ、必死さを俺は生涯忘れられ無いだろう。




「剣太郎くんは人殺しなんかじゃないよっ!! 」




 俺の両手を取り、名前を呼び、大声を上げるオトナの女性の顔は今にも泣きそうなように見えた。そこには俺への確かな思いやりと心遣いの他に、”悲しさ”や”自分自身への怒り”の様な感情も見え隠れしていた



「あ、あの〜? 手を……」



 でま、いつまでも触れたままの両手について指摘すると、舞さんはハッとしたように手を離し、慌てて謝罪し始める。



「ご、ごめん……突然。叫んじゃって……ここ病院なのに……」


「いや、まあ……イイデスヨ。俺は」



 妙にぎこちない空気が流れ、沈黙の時間が続いた後、口を先に開いたのは舞さんの方だった。



「私や絵里みたいな事情を知ってる人……いや、あの配信を見ていた日本人の誰もが城本くんが私達のために戦ってくれたことを知っている。誰もがあなたの功績を認めてる。あなたが戦争を止めた英雄なんだって……確かにわかってるの……でも……」


保持者(ホルダー)管理法にホルダー同士の戦いにおける正当防衛や人への正当な暴力に関する要件が無いんですよね? 管制官の制圧行為以外は」



 警察官は『犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合において』自己の判断のもと武器の使用が認められている。


 同じように社会秩序を守るホルダー管制官も危険性の高いホルダーに対して『制圧』という名の全能力の行使が許可されていた。


 でも俺は責務がある管制官でも無ければ、たまたま危険な状況に巻き込まれた被害者でもない。わざわざ首を突っ込んだだけの一般人。それがあの戦争においての俺の立場。


 そりゃあ公表なんてできるわけがない。



「そうなんだよ。新しい概念に対する法律だからね。現行法だと、まだモンスターやホルダーやダンジョンへの対応が不完全過ぎるの。厳しすぎる部分もある反面、とてつもなく曖昧でグレーなところが放置されたままなんだ。特にホルダー同士の戦いに関しては、決闘罪との兼ね合いもあって中々うまく行ってなくて……それにしても、ずいぶん詳しいんだね? 」


「色々調べたんだ。日本(こっち)に戻ってきたときに。激変していたホルダーの世界に追いつくために」


「そっか……」


「……俺の昔話は良いよ。それで? 」


「うん。でね、城本くんは知ってる? 自分が今どれほど認知されてるのか」


「まあ……結構なもんだな。熱狂ぶりに、ちょっとビビっちゃうくらい。配信に写っていた顔も結構出回っちゃってるみたいだし……。たけど幸い詳しい身元までは割れてないっぽいね」



 こうしてベットの上で動けないとなると、やれることなんて手元の端末でネットサーフィンするぐらいなもの。数時間スワイプを繰り返せば、現在のホルダー情勢は文字通り"手に取るように"分かる。


 俺の返答に対して、舞さんは深く頷きつつ、なぜ『全て無かったことにしたいのか』の顛末を話した。



「うん。城本くんの名前までは君を特定しようとしている誰もたどり着いていない。日本政府(わたしたち)はコレが使えると考えた。ちょうど" 色んな国" から幾らでも賠償するから今回の件は無かったことにして欲しいって懇願されたところだった」


「あとは俺が忘れさえすれば『俺の罪』も、『トップランカー(あいつら)の罪』も消えて無くなるってワケか……」



 そんなつぶやきを聞いていた舞さんは一つ咳払いをすると、またもや新事実を口にする。



「それと理由はもう一つあるよ。情報封鎖をするのは、捜索中の残り一人を補足する前に不用意な刺激を与えたくなかったからなんだ」


「捜索中……? 残り一人……? 」


「実は日本には確認されているだけでももう一人(・・・・)トップランカーが侵入したはずなの。彼はまだ11歳で、世間からは『天才少年』って呼ば――――」



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