3点の違和感
「あれ……? 」
その3点の違和感に、3つの違いには上級ダンジョンに入ってすぐ、【スキル】と【魔法】を使わずとも自ずと気がつくことができた。
「【魔力掌握】……うん。やっぱりそうだ」
まずは空気中に漂う[魔力]の"質"が違う。
元々、難易度やレベルに関してはピンからキリまである上級ダンジョンだが、これほどあからさまに刺々しく攻撃的な魔力の波動が漂っているのは始めてのこと。いったいどれほど強力で恐ろしいモンスターが待ち構え、この波動を放っているのか、わかったもんじゃない。
「勘違いじゃないな。このダンジョン、尋常じゃなく硬いぞ」
次は靴底越しに押し返してくるダンジョンの床面の"硬さ"が違う。
ただでさえ通常の迷宮よりも高硬度な上級ダンジョンの外壁は今回のダンジョンではよりいっそう、少し異常までに硬化している。恐らくはダンジョンの階層を壊してぶち抜くような強引な攻略は、これからダンジョンをハシゴして連戦しなければならないことを考えると、体力的にも魔力的にも厳しいし……そもそも非効率が過ぎるだろう。
「【鑑定】……!『迷宮鑑定』……! ……う~ん、ダメかぁ……」
三つ目は魔力の"通り"が違う。
これは単純にダンジョンと俺の発する魔力が干渉し合っているというだけでなく、妨害電波のように、外部からの魔力を邪魔する機構がダンジョンそのものに備わっている模様。これでは魔法による超遠距離狙撃は不可能に等しく、迷宮鑑定や索敵などの広範囲に効果が及ぶスキルも実質的に使用不可になったと言わざるを得ない。
パッと挙げられるだけでもこれだけ異質な特徴を持つ今回の上級ダンジョン。
【極夜大洞】という名前の通り、光源が一つも無い闇夜に包まれ、つららのように尖ったダンジョンメタルがそこら中の壁と天井から垂れ下がる、鍾乳洞を彷彿とさせる一大空間だ。
「ふぅ……」
まあ、これだけ聞いてしまうと……思わずため息を吐きたくなるようなやりにくさしか感じないダンジョンだ。
ただ手加減してくれたのか、少しは手心を加えてくれたのか、はたまたこれ以上は『攻略難易度』を上げられなかったのか。
この黒い鍾乳洞の迷宮には階層も、攻略条件も”一つ”だけしかない。それも条件は"たった一体のモンスター"を見つけて倒せば良いということになっている。今では最初に来たのが、このダンジョンで良かったとさえ思っている。これなら幸先の良いスタートが切ることも不可能じゃないはずだ。
さてと。
討伐対象である――『ブリング・ラック・ドラゴンフライ』はいったいどこだ?
「【索敵】! 」
ダメでもともとなのは使う前から分かってる。せいぜい半径5mほどの範囲しか広げられないのは承知の上だ。ただ一応の順序立てとして俺は特定のモンスターを探し出すのに最も適したスキルをその場で使用した。
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その先に、どれほど"悍ましい結果"が待っているのかを知らずに。




