【魔力掌握】(オーバーロード)
【魔力掌握】――とは【覇王】との戦いを経て俺が新たに手に入れた2つの【スキル】のうちの一つである。
[魔力]に関連し、【魔法】を補助する力ではあるが決して【魔法】ではないこの【スキル】。説明欄では『[魔力]そのものに干渉することで、[魔力]使用の効率性を高め、【魔法】の機能性を上げ、消費魔力を少なくすることが出来る』……などと言った理解出来るんだか、出来ないんだか、よく分からない文章が記載されていた。
だけど力を使って見た瞬間。
【スキル】の効力をその身を以て体感した直後。
俺はこのスキル【魔力掌握】の概要を理解し――衝撃を受けた。
その途轍もない広範囲な汎用性と恐ろしい程の有用性に。
通常、ホルダーが自身の力を発揮する上で最も切っても切り離せないステータスは[魔力]である。
ホルダーの戦闘を常に補助してくれる【スキル】の一部、一発逆転の起点を創り出す【魔法】や『技』。これらの特別な力は、使う上で一定数の[魔力]が常に要求される。
さらに[魔力]は他の5つの基礎ステータスとは違った“特殊な性質”がある。[魔力]は上昇させることでその発揮できる【魔法】の“最大出力”と“最大容量”を同時に上げることが出来るんだ。
例えば[魔力]値『5』と[魔力]値『10』のホルダー二人を比較すると、“消費魔力5の『ファイアーボール』”の使用可能回数に1回の差が出るだけでなく、そもそもの『ファイアーボール』自体の威力にも圧倒的な違いが生まれるということ。
したがってステータスの中で[魔力]を上げることを最優先する人が多いのは自然だし、[魔力]の上昇こそが“強くなる上での最短の道”だと断言する専門家がいることもまた自然な流れだ。
だけど決して忘れてはいけない。[魔力]は体力と比べると遥かにその消費が激しく、上げても、上げ続けても。何も考えずに[魔力]を使い続ければそれぞれの限界に達してしまうということを。
使う機会が多い分、計画的に使わないと[魔力]は即座に枯れ果ててしまう。いつ、どのタイミングで使用するか、形勢をひっくり返すためか、起点作りか、ダメ押しか、トドメを刺す時か。それらを正確に判断することこそがホルダーが戦闘中に最も考慮すべき要素だと言っても決して過言ではない。
加えて[魔力]と【魔法】の運用にはコツがいる。体調やコンディションによっては出そうと思っても『全力』を出し切れない場合もあるし、よりスピーディーにより安定して【魔法】を使えるようにするには日々の訓練も欠かせない。
そのため俺は闘いの中で常に増減する[魔力]の値と体を巡る[魔力]の流れには気を使い続けていた。まるでスマホの充電量が50パーセントを切ったことを不安視する学生のように。ストレッチをして今日の身体の柔軟性を確認するアスリートのように。[魔力]の“管理”と“操作”には悪戦苦闘しながらも、リューカの“センスがある“という言葉を信じて、これまで自分なりに何とかやってきた。
だから。
故に。
そんな苦労を知っている俺だからこそ――【魔力掌握】の性能はおかしいと断言できる。
なぜ【スキル】一つで、不変だった[魔力]の消費量を劇的に抑えることが出来るのか?
なぜ【スキル】一つで、身体を流れる[魔力]の認識がこれほどクリアになっているのか?
なぜ【スキル】一つの力で、【魔法】の威力や影響力を劇的に上昇させることが出来るのか?
そして一番おかしいのは、この【スキル】が――『自他両方』の、この世に存在するありとあらゆる[魔力]に干渉が出来るという事。
他者への[魔力]の干渉は【魔力掌握】のスキルレベルが100になると初めて使用可能になるとある奥義を実現させた。
「――『消失』」
「「「――――!? 」」」
その『技』の名を口にした瞬間、『分裂と復活』を繰り返して来た影達は声にならない悲鳴を上げた。まるで自身の最期の姿を予見したかのようにフラフラと左右に揺れながら。
思った通りだ。
『ディープ・ウォール・シャドウ』にかかった特別な効力は[魔力]に由来する。
つまり、今こうして自己崩壊を起こして霧散する影の軍勢にとって【魔力掌握】は――
「消えろ! 」
「「「―――――――!! 」」」
――余りにも致命的だった。




