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不発弾

 たしかに俺はコイツの殺戮を防ぐことが出来た。コイツがこれ以上強くなるのを止めることには成功した。



「【虐殺術】――『崩界浄土(ホウカイジョウド)』」


「また……『新技(・・)』か! 」



 だけどすぐに気づかされることになった。


 現実を突きつけられることになった。


 俺が出来たことはそれだけだ(・・・・・)ということを。封じられたのは『屍山血河』の効果だけであることを。


 コイツが使ってくる攻撃の詳細が不明である事は何一つ変わらないということを。



「『千倫粛殺(センリンシュクサツ)』」


「……『超反応』! 」



 コイツが息を吐くたびに、俺の呼気は乱れ狂った。


 コイツが大地を踏みしめる度に、俺の足元はおぼつかなくなった。


 コイツが目を見開くたびに俺の中をはい回る神経という神経回路全てが悲鳴をあげ、コイツが口を開いた瞬間身体のどこかが切り裂けた。



「……ッッ~~! ぐぎがっ! 」


「【虐殺術】……『零鼎荼虞羅(レイケンダグラ)』! 」



 だけど俺にはその攻撃を防ぐどころか、受けるための心の準備をすることすらもできなかった。限りなく近しいステータスを利用した、回避絶対不可能のタイミングで、全方位から繰り出される『始めて見る技』を見切って捌き切れるほど、俺の技術は洗練されてはいなかった。


 だからコイツとの戦いが長引くたびに、コイツの矢面に立つたびに、俺の身体は削られてボロボロになっていった。凄まじい勢いで矢継ぎ早に繰り出される初見殺し(・・・・)の連続に俺はくぐもった苦悶の声を上げ続けた。



「かなり……苦しそうだね? バットを捨てて……防ぐのを止めたら……少しは楽になるかもよ? 」


「……乗るわけねーだろ。そんなバカみたいな話」



 爪が剥がれ落ち、小指は逆方向に曲がり、バットを握る掌は破け、瞼が痙攣して左側の視界は閉ざされつつあるこの現状――――確かに中々苦しい。


 加速度的に増えていく負傷全ての痛みをこれでもかってぐらいに増幅され、こうして自分自身の置かれた状況を第三者視点で認識でもしないとやってられないぐらいには追い詰められていた。


 けれどそんな時は何度でも、何度でも、何度でも自分自身に言い聞かせる。


 俺は負けられない。


 俺がこの戦いで匙を投げることだけは許されない。



「【虐殺術】――『極獄劇転(キョクゴクギャクテン)』」


「――がはぁッ!? 」



 この狂人を『守りたい人』が大勢いる世界に解き放つ事態を俺は絶対に許せないし、それに何よりもこの瞬間の俺の背中にはかけがえのない『年の離れた大切な友人』がいる。



「……結構……今のは……効いたんじゃ、ないか? 」


「……ああ、そうかもな? 」



 故に負けられない。


 負けられるわけが無い。


 コイツの甘言に乗り、あきらめて凶刃にその身をさらすことなんてもってのほか。


 あきらめられない今の俺にとっては死ぬこと以外は全部許容範囲だ。



「……なら……いい加減……倒れろよ!! 」


「……! ……ッッ!! 」



 たとえ内臓そのものを直接捻じ曲げられる『技』を食らっても。


 たとえ触れるだけで骨が腐り落ちる『技』がかすってしまっても。


 たとえ筋肉繊維だけが断裂する光を放つ『技』を直視したとしても。


 たとえ少しでも吸い込むと血液が蒸発する霧を発生させる『技』に覆われても。


 構いやしない。


 死なないんだったらそれで良い。


 それだけで良い。


 だって……俺が生きてれば……ほんの少し我慢してひたすら耐え忍ぶだけで……――



「くっっっそ! ……はぁ……! ……はぁッ……ッ! ……はぁ……ッッ! はぁッッ! 」


「お前のセリフそのまま返すぞ……かなり苦しそうだな? 」



 ――俺は勝つことが出来るんだから。



「……やはり……足りなかったか……! キミに勝つにはボク自身の成長が……! 経験値(ポイント)がッ……! 」


「惜しかったな。お前のステータスは俺とほぼ同じだ。――[持久力(・・・)]以外はな」



 コイツの成長が止まり、そのステータスを目にした時から分かっていた。


 最も安全かつ、被害を最小限(・・・)に俺が勝利する方法は――『体力勝負』に持ち込むことであるということが。



「……はぁ……はぁ……ボクたちの戦いが……こんな……結末……だなんて……! 」


「少し正直すぎたな。バレバレ過ぎだ。弱点が」



 コイツはステータスに【偽装】をあえて施さなかった。急激なスピードで数値が上昇していく様をまざまざと見せつけ、俺を焦らせようとしたためだ。


 そして[力][敏捷力][耐久性][器用][魔力]にポイントを優先して振ることで俺の『瞬間的な戦闘力』に並び立とうとした。


 しかし結果としてコイツの成長は未発達な段階で止まり、[持久力]だけが十分な経験値を得られなくなってしまった。


 

「……ク……ッッッッッソ! クソォッ……! 」



 なら話は速い。マサヒラたちに被害が及ぶリスクを冒しまでこちらから攻めずとも、向こうが勝手に潰れるまで俺はひたすら待てばいい。


 そうすれば被害は俺の中だけに確実に抑え込むことが出来る。

  

 さあ、あとは……――――――――――。






「……う、う~ん? 」


「……ここは? 」






 ――でも、その瞬間。



「あ! 」



 ――到底、信じられない……致命的なタイミングで。



「あ? え? ……剣太郎? 」


「……【虐殺術】――」


「マサヒラ! 伏せろ! 」


「――『戮殲驍餓(リクセンゲンガ)』ッッ!! 」



 ――――不発弾(・・・)は爆発した。


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