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実戦能力値

 ホルダーの実戦能力(・・・・)は表面上に示される数字だけで測ることは出来ない。ステータスと倍率効果を持った【スキル】を掛け合わせることで初めてその大きさを判断することが出来る。


 現在、世界各国のホルダーを管理している団体が示しているホルダーの平均的な『実践能力値』の概算として挙げられているのは1600。この数値は[速さ]で言うならば最高時速100キロメートルに該当し、[力]に換算すれば1トンを軽々と持ち上げ、それが[持久力]ならば2時間以上の無酸素状態を耐えられる程度の性能である。つまりこの1600という数値は、ホルダーの平均的能力が今や常識を遥かに超えた『超人』と言っていい基準にまで底上げされているということを意味していた。


 という事実を踏まえると、ショービジネスとしての一面を持つホルダーによる発信行為は当初に比べると格段に、より過激で、より激しく、より血生臭いものが求められた。


 例えば大量のモンスターを一撃で薙ぎ払う【大魔法】の行使。


 例えば低レベル状態での上級ダンジョンへの侵入。


 例えば行動を縛ったうえでのダンジョン攻略。


 例えばホルダー同士の肉体的・社会的生命をかけた死闘。


 これらは過去にホルダーが配信上での過激な行動のほんの一部であり、どの事例もホルダー業界の内外を問わず称賛を大きく超える、多くの醜聞を集めることになった。


 しかし人々の内に秘められた欲望はそれでも止まらない。建前上ではいくら過激な行為を批判しても、内心をどれだけつくろっても、視聴者たちは心の奥底で求め続けていた。


 もっと刺激的なモノを。


 もっと過激なモノを。


 もっと見たことが無いモノを。


 もっともっともっともっともっともっと! もっと! もっと!! 


 言葉に出さずとも、態度には示さずとも、視聴者数や評判を多く集めるのは常に『誰もやったことが無い』、『過激』で『殺伐』としたもの。そういう意味では【第二位】『始まりの魔女』を映した配信や動画は世界では常に人気を集めていた。



 目をそむけたくなるほど病的だが、圧倒的に美しくもある容姿。


 名前も、年齢も、国籍も分からないというミステリアスな要素。


 誰も見たことが無い人知を超えた派手で強大な【魔法】の数々。


 世界を終らせかねない暴力を振るうのに一切の躊躇も情けも無い姿勢。


 傷一つ付かずに敵を制圧する他に類を見ない強さ。



 それら全ての要素が『始まりの魔女』の人気を押し上げ、ファンを増やす要因となっていた。

そして、もちろん彼女のファンは『東京のある場所で行われている戦闘』を流した配信に集まった。彼らが求めていたのは『始まりの魔女』の圧勝。あの(・・)【女王】を撃破した、出所不明の未登録ホルダーを簡単に撃破する光景だった。


 実際、ファンたちの思い描く筋書きは途中まで実現する。スキルレベル400の【流霜魔術】【狂飆魔術】【灰塵魔術】【巌窟魔術】の4つの【魔法】をもってして『始まりの魔女』は正体不明の少年を一気呵成に攻め立てた。


 少年の素早さには【狂飆魔術】の風の速度で、凄まじい攻撃には【巌窟魔術】の岩の頑強さで、強靭な防御には【灰塵魔術】の火の苛烈さで、底なしの持久力には【流霜魔術】の水の流量で圧倒した。


 【女王】を死の寸前まで追い詰めた『蒼い炎』に対しても魔女は一切の動揺も無く応じた。【灰塵魔術】の蒼炎(・・)で抑え込むと、【流霜魔術】によって生じた瀑布(・・)で火力を弱め飲み込んだ後に、【巌窟魔術】による耐火金属の奔流で完封して見せたのだ。



 その時、視聴者の殆どはホッと息を付いた。


【女王】に勝てたとしても、この少年は【魔女】には勝てるほどではないのだ、と。

 

 さらに【魔女】のファンは歓喜した。


 彼女の伝説がまた一つ増えることになった、と


 




 そう……その時、誰も気づいて居なかった。誰もが見逃した。


 実戦能力値1000万を超える圧倒的な[魔力]を誇る『始まりの魔女』の額にうっすらと冷や汗(・・・)が流れ始めた瞬間を。

 

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