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最後の戦場

 状況は一変する。



「―――――――――――――――――――――! 」



 たった一度の瞬きが終わらない内に。



「待て……待ってッ……! 待っ……て、……くれ……! 俺は、……おれはまだッ……戦え、る! 」



 その変化に対して、最初に如実な反応を示したのはリチャードマイルズ。


 全身を覆う裂傷と火傷の痛みに顔を歪ませ、息も絶え絶えに言葉を紡ぎ、なんとか自身が継戦可能な状態であることを主張しようとしていた。


 だがしかし現実は……『()』はひたすらに無情だった。



「お願いだ! やめろ……! やめてくれ! 見限らないでくれ! 頼む! 俺は、……まだ……! まだやれるんだよ! 」 



 現・五位の捨て身の訴えは通らない。


 どれだけ声を枯らしても、充血した両目から涙を流そうとも、半狂乱になったとしても、リチャードの言葉は届くことはない。


 元一位のプライドを欠片も感じることの出来ない【万能者(バーサタイル)】の懇願は『()』の決定を覆すことはできないのだった。



『ん? あれ……? 』 


『もしかして俺見失っちゃったか? それとも見逃したのか? 』


『誰かクリップしてくれ。見過ごした』


『俺の環境のせいか? それともサイトの電波障害か? 』


『急に居なくなったね。もしかしてこれって放送事故って奴? 』


『これだけ人がいて誰も何も見てないのか? 』


『リックはどこ? どこかに逃げちゃったの? 』


『俺は目を一度も離してないぞ……そんなはずは……』


『おいおい、リックに何があったんだよ? 』



 リチャードマイルズの失踪(・・)が発覚したのはその直後。



(今『何』が……変わった……? いったい『何』が起きた……!? )



 戦っていた城本剣太郎でさえ彼の行方を追うことは出来なかった。



「【狂飆魔術(キョウヒョウマジュツ)】――」



 ここで状況の変動は加速をし始める。



「――『Deixar o vento soprar livrement――風よ吹き荒べ。Que a tempestade continue.――嵐よ吹き荒れろ』」



 残されたトップランカーの内一人の女性が魔力の篭った呪言を口にした刹那。その場に居る10人足らずの人間を余さず呑み込む巨大な渦(・・・・)が顕現する。


 ただでさえ強かった海上の風の勢いは急激に上昇、目を開けてられないほどの暴風が空間を支配したのと同時に、時空が捻じれて歪んでいく。



(俺も巻き込んでどこかに跳ぶ(・・)つもりか……? )



 剣太郎は抵抗しなかった。


 自分の役割である時間稼ぎに徹するためにあえて相手の戦意(・・)を必要以上に刺激しない様に立ち回った。


 その結果。


 吹き荒れる風に対してつぶっていた目を開けた先にあった光景。



「ここは……!? 」



 それは剣太郎の記憶にも新しい、オフィス街に突然湧いて出たように刻み込まれた巨大なクレーター……紛れもなく【爆弾魔】によって形成された爆心地だった。



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