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問の答え

  レベルという概念が世界に導入された時、多種多様な強さを数値化することが出来るステータスが現れた時、経験値を落とす怪物が世界を闊歩し始めた締めたその時……ゲーマーも、ゲームをやったことがない者も、ホルダーも、ホルダーではない者も、世界中の誰もが考えた。



 果たしてこのレベルという無機質な数値には明確な限界というものがあるのか。


 そして数字上の頂点、世界最強の人間であると目される存在は果たして現在どのような数字(レベル)にまで至っているのだろうか、と。



 家庭で、学校で、職場で、各種SNSで、ネット掲示板で。


 家族と。 


 後輩と。


 友人と。


 パートナーと。


 仕事仲間と。


 顔の知らない赤の他人と。


 シチュエーションを問わず、場所を問わず、時間を問わず、人数を問わず、その問いはなされて、その話題は挙げられて……数多の議論・論争・派閥を生み出し人々から無数の時間を奪い去ってきた。


 ある者は世界順位(ランク)一位である【覇王】が世界のトップランナーであると言って譲らず、ある者は世界最強の魔術師である第二位こそがその実績で見ても実は最強なんだと主張し、単純な個々人の能力では別だがリュミエール姉妹の連携がこの世で最も強力な攻撃手段であると言い放つ者さえも現れた。


 持論を展開して相手を必死に論破しようとする彼らは、こうして傍から観察すると不毛な時間を過ごしているようにしか思えない。いくら言い争いをしたところで答えは一生分からずじまいなのだから。数字上の頂点に位置するランカーたちは彼ら同士で争いをすることなんて一度たりともなかったのだから。


 しかしこのような動きがあったからこそランカーなどの有名なホルダーにファンという存在が付随するキッカケになったことは言うまでもなく、ランカーに対する憧れが生まれたからこそ世界各国のホルダーたちは必死で上を目指したこともまた事実。


 数値化した強さの大小比較に囚われ続けた彼らの思いの強さによって生じた新たな恩恵はホルダーのいる世界に全く新しい可能性を示したのだ。


 そう。


 ここまでが表向きの話。


 建前上では誰もがこの議論について触れる際に、ここまでの領域で話すのを止めている。


 もしもこれ以上、誰が強いかの議論を深く掘り下げてしまえば確実にファン同士の戦争(・・)が起きてしまうことが分かり切っていたからだ。


 けれども人間の好奇心は止められない。肥大化する興味関心に鎖をつけて押さえつけることなんて出来るはずがない。


 ホルダーも、ホルダーでない者も、誰もが求めていた。


 口に出さずとも心が求め続けていた。


 その問(・・・)の答えを。


 そして今――。



『おい見て見ろよ! これ! 』


『仕事なんかしてられっか! ヤバイことになってる! 』


『流石にこれは学校サボるっしょ』


『寝てる場合じゃないぞ、お前等。早く起きろ』


『今起きたけど……何これ? どういうこと? 』


『何? ボクはまだ夜更かししないといけない感じ? 』


『朝起きて早々なんなんだよ』


『配信? 何のだ? 』


『今からコイツ等が戦うらしい』


『同接ぶっ壊れてんじゃん……え、表示バグじゃないの……? 』


『これ……今映っている人たちって……もしかして……』


『嘘だろ!? これ日本なのかよ! 』



 ――世界は『絶対に得ることのできなかった筈の答え(・・)』を手に入れようとしていた。




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