急転
すいません。
色々あって今回は過去最高に短いです。
東京で爆発事件が発生してから約30時間が経過した今も――日本人、特に東京都民は心の片隅に僅かな不安を覚えつつも、特に変わりのない日常を過ごしていた。
ダンジョンのあるトンネルへと足を運び、無事に生きのこっている交通手段で通学・通勤し、外に遊びに行くか、家の中でゆっくり休むかの選択をし、次の食事では何を食べるのかを考える……一週間に二、三度という極まれな確率で起こる『危険』さえ回避すれば……何の変哲もない、いつも通りの生活。
その日々は誰にも侵すことが出来ないし、誰にも壊させない。
平和で安全な日本に住む誰もが心の奥底ではそう考えていた。
だがしかし、人々は知っている筈だった。覚えている筈だった。
『第三次迷宮侵攻』を。
圧倒的な力で日常を蹂躙された記憶を。
見えないようにして、思い出さないようにして……何度も夢で見ることになった悪夢の時を。
意識を向けないように気を付けたとしても『あの日』のトラウマだけは忘れられない。
『あの日』日本に居た誰もが例外なくそうだった。
だからこそ――。
「ん?」
「あれ……何? 」
「空に誰か浮かんでるぞ」
「……誰だ? 」
――彼らはその違和感に真っ先に気付く。
――『危険』に対する嗅覚を働かせ、普通との違いを察知する。
「アイツ……どっかで見覚えがあるぞ……」
「どこで見たの? 」
「もしかして……ランカーかもしれない……それも……上位の」
「え? 」
――そして、そんな『嵐の前の静けさ』が続いたのは
「【虐殺術】――『覇王顕現』」
――ほんの一瞬だけだった。




