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現状理解

 視界を遮る火の粉をふきとばすために。


 二回目の爆発の被害の大きさを隅々まで把握するために。


 撃ち落とした飛行機からノコノコ出てきたホルダーたちの顔をよくよく観察するために。


 念動魔術を使用する。


 結果として俺の目に飛び込んできたもの、それはより広大になった爆心地……火傷に呻くおびただしい数の罪なき通行人……そして恐怖の視線をこちらに向けてくる武装した兵士の姿だった。


 彼らは怯えていた。迷彩服に身を包んだ屈強な体を震わせて、声にならない悲鳴を上げていた。まるで自分たちが災害に巻き込まれただけの純粋で無垢な存在であるとでも言うように。


 だけど……俺は騙されない。


 こいつらが持つ【スキル】と【魔術】の構成とレベル。ステータスの振り分け方。衣服の防御性能。手に持った何の変哲もない自動小銃。これら全ての情報が証明している。


 コイツ等がこの爆心地にやって来た理由は『人命救助』でも、『集ってきたモンスターの除去』でもなく……――第二の爆発によって弱った舞さんや木ノ本たちを関係の無い民間人ごと(・・・・・・・・・・)『皆殺し』にすることなのが。


『自分よりもか弱い存在(・・・・・)傷ついた存在(・・・・・)を狩ること』に特化したその能力と武装を見れば一目瞭然だ。コイツ等に交渉の意思はない。爆発の生き残りをただただ殺すためだけにこの場に現れた。


 だからさぁ……なんでなんだ? 


【蘇生魔術】で生き返らせきれないかもしれないほど多量の死傷者を出した【爆弾魔】のお仲間であるお前らがどうして恐怖している? 顔をそんなに引きつらせている? そんな被害者面を俺たちの前でできる? 教えてくれよ? なあ? どうしてだ?



「く、来るな……」



 来るな、だと?



「それ以上近づくと……撃つぞ……! 」



 撃つぞ……だと……?



「俺たちは……――――」



 コイツ等自分が何をしようとしたのか、本当に分かって言ってんのか? テメェらは……そんな脅しも無しにホルダーも、ホルダーじゃない人も、問答無用で撃ち殺そうとしてたんだぞ? 



「【石化の魔眼】」



 黙れ。



「『ファイアーボール』」



 わめくな。



「『圧縮念波』」



 それ以上何も囀るな。



「くッ……! 」



 分かってる。


 これは爆破を防げなかった俺自身へ向けるはずだった怒りを八つ当たりさせただけの、何の意味もない行動だ。


 だから、これで八つ当たりは終わり。怒るのはやめ。


 すぐに頭を切り替えろ。



「……ん? 」



 その時、冷静になった瞬間、目に入る。


 痛みで気絶した軍人たちの脇に転がったイヤホン型の通信機器のようなものが。


 もちろん、一切の迷うことなく拾う。


 予想通りそれは軍人の持っていたトランシーバーだった。



『こちら作戦本部――九州方面と北海道方面の制圧――近畿、中部方面軍の上陸を確認した。現在確認できている自軍の消耗数は12。ランカーの撃破数は5だ。そちらの情報を求む』


「……」


『第一急襲班。応答しろ』


「――…………」



 ここで俺は通信を切る。


 もうこれ以上何かを聞ける様子は無かったし、必要な情報は大体手に入ったから。


 俺の中で全ては繋がった。もう重々に理解できた、


『地下闘技場襲撃』も、『マサヒラの拉致未遂』も、白昼堂々行われた『予告爆破』も、何もかもが一つの作戦だということ。


 そして今、日本という国そのもの(・・・・・)が窮地に立たされていることを。



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