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成長限界の破り方

 思い出すのは異世界から来た騎士があの晩教えてくれた情報の一つ。


 とうとう俺にもやって来たんだ『成長限界』が。


 リューカは言っていた。大体の人がLv.50付近でありとあらゆる基本ステータスの上昇が止まること。そのことを成長限界と呼ぶのだ、と。


 その現象が起きる原因は3つ。


 一つ目はレベルという仕組みの欠点。レベルは経験値(ポイント)を振り分けて上がるスキルレベルや基礎能力(ステータス)と違ってモンスターを倒していくつに連れて自然に上がっていく。このレベルの上昇は意図的に止めることは出来ない。


 二つ目はモンスターを倒すときに得ることが出来るポイントの仕組み。自分のLvに見合わない、より強いモンスターを倒せばより多く経験値(ポイント)がもらえるこの仕様。裏を返せば自分のLvを1でも下回っていたら倒してもポイントはほとんど得られないことを意味している。


 三つ目はそもそもLv.50以上のモンスターの絶対数が少なく、Lv50を超える危険なモンスターが出る迷宮の数は少なく、どれも高難度のため入ろうとする人も少ないということ。



 このように様々な理由が重なってリューカの世界ではLv.50付近に人口の壁が生まれているらしい。そして俺も同様の現象にぶつかった。異世界人と違って俺は侵入できる『迷宮』は選べない。今までLv.50を超えているモンスターはボスぐらいなものだった。『剣士の迷宮』に来てからひたすら狩りまくっているがポイントは合計3000ぐらいしか増えていない。


 このままじゃ不味いな……。


 考え込む。この成長限界の対処法はあるのか。


 そんな最中、どこかからかすかに鎧が揺れる音がした。


 音の方へ目を向ける。感覚は背中の方。振り返ってよく見ると居た。遠く後方の暗がりから10人ほどの鎧の集団がこちらの方向に歩いてくる。どうやらまたもや異世界人のいるダンジョンに来てしまったようだった。


 騎士団の鎧とは違って全身を覆うタイプではなく動きやすそうな軽装だ。俺ほどじゃないが。



「おーい! 」



 声をかける。迷宮内では基本的に他人には不干渉。でも挨拶ぐらいはいいはず。


 結構な大声を出したはずだ。完全にこちらを認識したはずだ。しかし集団はピクリとも反応を示さない。ただただ黙ってこちらに歩いてくる。


 何か様子が変だった。妙な違和感(・・・)がある。俺は立ち止まって観察した。彼らの様子を。


 しかし改めて見直しても変わった所は見当たらない。取り立てて凄い特徴があるわけではない顔。西洋人とも東洋人とも言えるような造作。目線はこちらに向いてるような気がする。だけど無表情。感情は読み取れない。身体は鍛えられていて全員ががっしりとしている。金属製の最低限を覆う鎧を着用。その下からのぞくギラギラとした光は鎖かたびらって奴だろうか。マチューテによく似た片刃の剣を全員が装備。そしてまたもや全員が大小問わず返り血を浴びている。



「……『返り血』? 」



 気づいた。違和感の正体に。


 モンスターは倒されると煙に変化して、戦闘に参加した人間全てに経験値(ポイント)として吸引される。


 その体が煙に変わるという現象において一つ面白い事実がある。それは怪物が絶命した時に『黒い煙』になるのは例外なくモンスターの全ての部位(・・・・・)であるということ。


 例えば、切り落とした腕や首。戦いの最中にはがれた鱗や体毛。砕かれた歯や爪。そして体から出た『血』。どれだけ心臓と離れていようが例外なく、それら全てが煙になる。もちろん人や服に着いた返り血(・・・)もだ。


 ――――それでは、彼らの鎧を染めている血は何なのか。



「……まさか」



 高レベルモンスターが少ないことによる成長限界の説明を聞いた時、俺はぶっそうな想像をしたことを思い出す。



『もし人間を殺したら(・・・・)ポイントを獲得できるのか? 』


『もし自分よりも高レベルの人間を殺す(・・)と、モンスターと同じようにそれで多くのポイントを稼げるのか? 』



 背筋が凍った。前へ向き直る。ゆっくりと歩き始める。そしてだんだんペースを上げていく。もし俺の勘違いならここで、差が広がるはず。足は止めずにゆっくりと後ろを振り返る。


 ――――後方にはさっきの集団が『小走りで』間合いを維持したままぴったりと着いてきていた。



「……ッ! 『全力疾走』!! 」



 1秒後、俺と殺人鬼たちによる――『決死の逃走』は始まった。

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