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病室での会話、急報付き

「しっかし剣太郎よぉ。あれは大胆すぎたんじゃねーか? 」


「何がです? 」


「六大クランのリーダー相手に『迷宮庁を裏切ってスパイをしてくれ』なんて交渉をしたことだよ」


「あー……」


「さては自覚ないな? GCAの蕪木って言ったら泣く子も黙るA級ホルダー……もうすぐ超A級にもなるって噂の超がつく実力者だぞ? 」


「知ってます。たしかダンジョンの存在を日本が公に認める前からホルダーだったんですよね? 」


「わかってるじゃねぇか。今日本でレベル90以上……すなわちA級と呼ばれる連中は全員昔っから迷宮にもぐってたそうだぜ? 界隈では『古参』って呼ぶこともある」


「『古参』……そういえばマサヒラはいつからホルダーなんです? 」


「いや俺なんて大したもんじゃねーよ。政府の放送を見て速攻でダンジョンに駆け込んだ口だ。いわゆる『ビックウェーブ組』だな。最初の討伐は大分苦労したけどよぉ。まあホルダーになる時期だけ見たら平均よりは大分早かったんじゃねえかな。……しかし古参っていえば剣太郎は…………ってそんな話じゃねぇ! 」


「気づきました? 脱線してること」


「そうだ! 構成員数千以上! B級以上のホルダーは脅威の30人! 日本国内なら間違いなく最強のクランだ! あんなとこに喧嘩を売ったら……」


「困ったことになる? 」


「困るくらいで済めばいいけどよぉ」


「弱気ですね? さっきはあんなに噛み付いてたのに」


「俺のことはどーでもいいんだよ! 心配なのは剣太郎だ! 」


「……あれからしばらく時間があったので俺もGCAについて多少は調べてました。確かにとんでもない規模の団体です。ファンも山ほどいます」


「そうだろ? 」


「でも蕪木は来ました。たかだか二人のホルダーに迷惑をかけたぐらいならトカゲが尻尾を切るように、部下に全ての責任を押し付けて自分は知らん顔をすればいいのに。事前に連絡してまで、この病室までわざわざ一人で来たんですよ? 」


「……」


「あの人からの連絡があった時点で勝機はあると思いしました。ある程度の譲歩と好条件は狙えると思いました。俺たち二人は六大クランに警戒されたってことです」


「いや……それは違う」


「え? 」


「警戒されたのは……剣太郎だ。間違いない」


「……」


「剣太郎。当の本人には信じられないかもしれないがお前、実はかなり有名人なんだぞ? 」


「そう……なんですかね……? なんとなくそうなのかなとは思ってたんですけど……」


「そうだぜ。町中に現れる化け物を狩り尽くす謎の存在『金属バット』……その名前を知らねぇホルダーは多分一人もいねぇ。なぁ、その金属バットって……」


「俺のスキル【棍棒術】を発動するのにこのバットが武器として一番ちょうどよかったんです」


「だから肌見放さずいつも持っていた」


「はい。これがあるのとないのとじゃ戦い方が全然違いますから」


「『金属バット』の代名詞でありトレードマークはスキルに指定された代物だったってわけか……なるほどな。仮面をつけてたのは? 」


「諸事情があって顔を隠したかったんです」


「…………そうか。今は…………隠さなくていいのか? 」


「はい。また事情が変わったので」


「そうか、そうか。そうか! ……そうなのか! 」


「……マサヒラ? 」


「剣太郎。告白するぜ」


「ぅえっ!? 」


「俺はな、剣太郎。お前に助けられたんだ」


「あ、ああ……はい。すんません。なんか変な勘違いしてました……」


「もちろん剣太郎のことも好きだぜ? 」


「ぁえ!? 」


「でもな俺にとって剣太郎は知り合いとか、友人とか、最近出来た弟分って前に大切な恩人なんだよ」


「いいですよ。そんな……あの時の俺はただ『忘れていた昔の後悔』と『子供の頃の憧れ』を無意識に追ってただけなんです。そんな感謝されるような人間じゃ……」


「もちろん……剣太郎が抱える事情を俺は知らん。聞く権利も、筋合いも無い。だけどな俺がお前に救われたこと、救われたと思っていることは事実だ。だから俺は剣太郎にどんな形でもいいから報いたい。助けたいと思っている。それだけは言いたかった。俺じゃあ力不足すぎるけどな!! 」


「……、………………」


「え? なんか言ったか? 」


「いや! なんでもないっす! そうっすか! じゃあ色々期待してます! 」


「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれよ!? 」


「とりあえずケガが治ったらまたラーメン奢ってください」


「ええ……別にいいけどょぉ。そんなことか? 」


「いや一食分、食費代浮くのはでかいっすよ! 」


「まあ、いいっか! しかし剣太郎……あっさり金属バットだって認めたな? 」


「え? おー……あ~……まあもしかしたら違うかも……しれませんね? 」


「おい剣太郎! そりやぁねえぜ! それだけはハッキリしてくれっ! 」


「まあ、細かいとこはいいじゃあないっすか! そんなに叫ぶと傷に悪いですよ? 」


「こんの……誰のせいで……」


「あはは……お? ちょっと失礼メールが……なんだ? 蕪木さんからです」


「マジか!? 」


「はい。別れてから30分も経ってないのに早速動きがあったんすね………………………………」


「剣太郎? 」


「………………」


「おーい? 」


「…………………」


「剣太郎、どうした!? 」


「……戻ってくる」


「え? 」






「木ノ本が……木ノ本絵里が日本に戻ってきます! 」 





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