ランカー(順位持ち)
「コレで今月、何人目ですか、アカイワ? ドウセまたニセモノですヨ。期待するだけムダデス」
「仕方ないだろう? 我々のような地球生まれ地球育ちの常人には君の様な特別な『予測』の力は備わっていない。故に僕らは先に起こりうるあらゆる可能性に備えて、現在の事柄について判断をする必要があるんだ……。それで? 君の見解はどうなんだい? 」
「……随分、カンタンに聞いてクルのデスね? 」
「いいじゃないか。減るもんでもないだろう? 」
「……はァ。呆れまシタネ。分かっているのデスか? 今アナタ、センダという部下とマッタク同じセリフを吐いていマスよ? 」
「ボクはこれでも良い上司なんだ。部下の言葉にちゃんと耳を傾けている。時にはこうやって引用することも出来るぐらいにね」
「モノは言い様デスね……正直にいいマス。私にはワカリマセン……」
「……珍しいこともあったもんだね? 君が冗談を言うなんて」
「ジョウダンではありまセン。私の『眼』は『あの少年』の先を見通すことができまセン。故に彼がホンモノでアルかドウカも答えられないのデス」
「なるほどね。僕からしたらそれこそが本物の証拠だと思えてしまうけれど……まあ今はいい」
「人を送って迎えに行か無いのデスか? 」
「さっきは千田の手前、ああは言ったけれど……。僕はまだ彼が本物であると信じられていないんだ」
「……? それデハ、なおさらヒトを……」
「その必要はない。情報が入ったからね。順位持ちの一人が『レベル200を超えているように見える金属バットを持ったあの少年』のもとへ向かったってね」
「…………」
「何か引っかかるところでも……? 」
「……ラン、カー……? 」
「ああ、君には説明したことがなかったかな? ランカーの言葉の意味が気になるかい? 」
「…………」
「そんなに気になるなら教えてあげよう! 現在、公に存在が認められたホルダーの数が全世界で一億人を突破していることは知っているね? 」
「…………ハァ」
「その本来は個人に秘匿されるべきレベルと氏名の情報は、実を言うと国連加盟国の間では水面下の内に共有されている」
「……? 」
「もちろん何の意味もなくそんな面倒な真似を200近い数ある国家がするわけがない。リアルタイムで更新され常にいずれかの国から収集され続けるホルダーたちのビッグデータは全てある順位付けをするために用いられる」
「ジュンイ? 」
「全ホルダーの力の底上げが目的の、レベルを基にした【世界順位】だ。その中でも『上位100人』のことを我々はランカーと呼んでいる」
「……ワレワレ、というのハ? 」
「端的言えば……ボクを含めたホルダーを管理しようとしている人間たちのことだ。ありとあらゆる国家と企業群、財閥や組合がここに該当する。もはやホルダーは国防という観点から見ても無視できない人的資源と化しているため貴重で、強力な能力を持つランカーの確保は各国の急務と言ってもいい」
「フーン……」
「なんだ? 興味ないのか? 」
「ダッテ、ソノヒトタチってイクラ上から100人だったとしてモ、どうせワタシよりはヨワイんでしょゥ? 」
「あはははははは、言うじゃないか! でもそれは事実だ。君の強力無比な【洗脳魔法】に抗えるのはランカーの中でも極一部……真のランカーである超越者たちだけだろうからね」
「……? イルノですカ? ソンナノガ? 」
「ああいるさ……ランカーの中でもさらに上澄み。一億人の中でたった10人の怪物たち。単身で小国の軍事力にも匹敵すると言われている彼らの戦闘スタイルとスキルは十人十色だけど。その中で『二つだけ』彼らに共通している部分がある」
「……タッタ二つ……ダケ……」
「『レベルが3桁に至っていること』。そして『先着10名だけに与えられた≪討伐者≫の≪称号≫を持っていること』」
「……」
「今回、少年Cの元へ向かったのは【世界順位】も、≪称号≫のどちらもが4番目。強力無比な【即死魔法】で敵を瞬殺していく様子から『死神』のコードネームが付けられた危険なホルダーだ」
「それって……アカイワのお気に入リもあっさり殺されちゃうんじゃナインでショウか? 」
「確かに『死神』は他のランカーと比べても群を抜いた殺傷能力をもっている。けれどもし、あの映像の少年が僕と面識があって黒騎士を倒してみせた『本物』だったとしても……【4番目】に破られる程度の実力なら計画には必要ない。だからぜひ、見せて欲しいね。この1月でどれほど強くなったのかを」
――迷宮庁でのとある日、とある一室での会話からの抜粋。