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揺れる大国

 ――そこは日本ではない地球上のどこか。


 薄暗い地下室の円卓に十数名の大人たちが詰めかけている。


 人種も、性別もバラバラの面々でに唯一共通しているのは勲章がいくつも胸に付いた軍服を着用しているということだけ。


 集まった全員が着席するまで彼らは挨拶をすることも、軽口を飛ばすことも無く、終始無言だった。



「日本に【最初の一人】が戻ってきた」



 口火を切ったのは白人の男性。



「しかし『彼』を自称した偽物(フェイク)は日本のみならず世界各国で今までに何人も出てきている。今回もそうでないと言えるのか? 」



 対して疑問を投げかけるのは眼鏡をかけた黒人の男性。



「日本政府はなんと? 」



 そんな白人女性の問いかけには



「まだ正式な返答はまだない。が……今回は情報の『確度がかなり高い』と大使館からも報告が上がっている」



 ヒスパニック系の男性が返答した。


 その瞬間から、落ち着きを保ちつつも議論は白熱し始める。


 円卓を囲む者達からは次から次へと意見が飛び出し、徐々に現在の状況の全容を明らかにしていった。



「【1番目】が戻ってくるとなると両国のパワーバランスは崩壊するな」


「ただでさえ我が国は現状、ダンジョンメタルの半分以上を彼の国からの輸入に頼らざるを得ないというのに……」


「これ以上あの島国に『力』を持たれるのはさすがに看過できないわ」


「だかしかし……今、動かせるホルダーは? 」


「【2番目】は現在、中東だったな……? 【3番目】はどうだ? 」


「間が悪いことに5日前から東欧だ。呼び戻せる距離にはいない」


「【9番目】と【10番目】がすぐ近くにいるじゃないか」


「彼らに【1番目】の相手をさせるのはさすがに荷が重すぎる」


「ではまさか……」


「私も信じたくないがな。そういうこと(・・・・・・)だ」


「これは…………確実に国際問題になるぞ? いくら日本が相手だとはいえ、これだけは確かだ」


「しかし他に取れる手が無いのも事実……『二桁たち』に彼の相手を任せるには荷が重すぎる」


「祈るしかあるまい。『奴』が少しは大人しいことを」


「この瞬間は頼らざるを得ないのだな……4番目に」



 会議はつつがなく進行し、最後はその場にいた誰もが半ば予想していた結論に至る。


 しかし彼らの表情は一様に暗かった。


 なぜなら、自国の命運が一時的に自分たちの子供にも満たないような年齢の『狂人』に委ねられてしまったのだから。





 一方そのころ。日本のとあるレストランでは二人の男が密談していた。



「迷宮庁と少年が急接近しているようですね」


「人形使いの奴め……しくじりおったか? 」


「いえ、彼は『最期の瞬間』まで期待通りに動いてくれましたよ? 」


「はっ! 自分で手にかけておいて、よくもまあヌケヌケと! ……だかそれではこの状況の責任は貴様にあるということか……? 室長殿? 」


「……部長は結論を急ぎすぎです。一度、少年を迷宮庁に接触させることこそが本作戦の第一段階なのですよ? 」


「何……? 」


「さらに言わせてもらえば、部長は迷宮庁を買い被りすぎているきらい(・・・)があります。あのようなすべてが『若い組織』は勢いと思い切りは良いものの、案外簡単にボロを出すものです」


「……ふむ。言うではないか? 」


「それに……今、我々が動く必要はありません」


「なんだと? 」


「少し前には『世界の警察』とまで評されたあの大国がこのタイミングで動かない筈がないからです。我々が表舞台に出ていくのは混迷した状況が沈静化した後でも遅くないというのが自分の見解です」


「その確信はあると言うのか? 」


「はい。もう既に彼の国の順位持ち(ランカー)が一名このような状況に対処するために入り込んでいます。……恐らくは彼を差し向けるのでしょう。見物ですよ。あの二人の戦いは」


「……【4番目】だったな。……確か通り名は……グリ……なんだったか? 」


「コードネーム『処刑人(グリムリーパー)』。全世界で総数一億人にも届くホルダーの中で唯一の――――【即死魔法】の使い手です」


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