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第二十話「逆襲の異世界勢力その2」

 Side 緋田 キンジ


(不味いな……こうも長期戦に持ち込まれたら――)


 各陣営の敵は此方の手を読んだかのように距離をとって守りを堅めて長期戦に持ち込むつもりだ。

 これでは決定打が打てない。


 幾ら腕がいいエース級が揃っていても数の暴力で押し切られる。

 問題なのは武器、弾薬なのもあるが、精神面、体力面だ。

 

 どうにか打開策が欲しいところである。


 大阪日本橋駐屯部はゲートを放棄、後に爆破するかどうか悩んでいるようだ。

 そうなればプレラーティ博士の力があるとは言え、暫くは元の世界に帰れなくなる事は覚悟しておいた方がいいだろう。


『うーん、仕掛けるタイミングがね』


 と、谷村君のシュトラールが遠距離から直実に敵を仕留めながら言う。

 遠距離攻撃組はこうしてチマチマと敵の戦力を削れるので凄いもんだ。

 

『何か作戦が?』


『せめてキッカケさえあれば一勢力ぐらいは黙らせる事は出来るんだけどね』


『吶喊するつもり?』


『そうしないとジリ貧だよ? 各陣営のエース級の人達で指定した陣営同時に仕掛けるんだ』


『危険すぎる』


 今の状況だと自殺行為だ。


『だから出来ないんだよねこれ。此方の戦力が足りないし火力も心許ない――このまま防衛線続ければ――まだまだ持つがそれも相手の出方次第だ』


『上の判断に任せるしかないか』


 悔しいがそうする他なかった。



 Side 佐伯 麗子 三佐


「撤退しろと?」


 天幕の仮設駐屯地本部の中、モニター越しの人物に私は怒鳴りつけるように言った。


『そうだ、周辺諸国が騒いでいる。これ以上の戦力を動かさず、どうにかして対処は出来ないかな?』


「そのためにゲートを爆破しろと?」


『もう十分火中の栗は拾ったじゃないか。なのに周辺諸国は日本だけズルいズルい言うんだ。我々の苦労を考えてくれよ』


「しかし――」


 言ってる事を理解してしまう自分の頭脳が恨めしい。

 日本だけが火中の栗を拾い続けて、世界中の一部の国々にその栗は上手い事分配される。

 そう言う話だった。


 だが未だにその栗は上手い事分配されず、日本の総取り状態だ。

 つまり日本は上手くやり過ぎたのだ。

 

 こう言うと上手く立ち回らなかった日本も悪い気がするが、その成果の裏には自衛官達の数々の命懸けの戦いが会ったと言う事実も忘れてだ。


 日本を、世界を救ったのは自衛隊なのも過去の事らしい。


『なあに、不幸な事故と言う奴だよ。だけど敵対勢力を増やすワケにはいかない、Aliceとか言う異能者の少女やバハムス帝国のお客さん達をどうにかして連れ戻して欲しい。あの自衛隊たちは殿でもやらせればいいだろう』


「……」


『どうした? 返事はせんのか?』


「どの道時間は掛かるかと」


『手早く頼むよ。最近の国民は選挙に熱心だ。ここでミスすれば選挙に影響が出るし君のクビもタダでは済まないよ』


(老外とはこの事か……)


 などと思いながら通信を切る。


「どうするんですか?」


 と、自衛官の一人が駆け寄ってきた。


「爆破スイッチを渡せ。判断を私がする」


「え?」


「もう一度言うぞ。爆破スイッチを渡せ。Aliceの少女達とフィア皇子一行の退避が完了し、殿の任務が出来次第ここを爆破する。異論は?」


「い、いえ――」


(私にはこれが精一杯だ。後は運に任せるしか――)


 爆破スイッチのトランクを渡されて外に出る。

 ゲートの向こう側の激戦に想いを馳せながら私はそのゲートを見詰める事しかできなかった。

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