第六話「多元世界ユナイティアその4」
Side 緋田 キンジ
戦況は僅かながら此方が押し返してきている。
だがまあ、恒例のパターンだと、こう言う状況になった途端に事態がまた悪化するんだよな。
『なんでこの世界にドラゴン!?』
最初に気づいたのはキョウスケだった。
『つくづくドラゴンと縁があるな!?』
俺はそう言って迎撃態勢に入る。
空から数メートル程度だがドラゴンの群れがやってくる。
ブレスで次々と両陣営に襲い掛かっていた。
群れのボスだろうか一際巨大なドラゴンまでいる。
ザイラム軍は大慌てで撤退していき、今度はドラゴンと戦う事になった。
ドラゴンとの戦いはバハムス帝国絡みの一件(第2部)で慣れてはいるがこの世界に来てまで戦う事になるとは思わなかった。
『念のため聞くけどこれ倒してもいいの?』
ルーナに尋ねる。
『はい、お願いします!』
『たく、とんだ害獣駆除任務だぜ!』
イノシシやクマとかの代わりにドラゴンを倒す羽目になるとは。
つくづく自衛隊とはブラックな環境だと俺は思う。
特に最近は酷い。
まあそんな自衛隊に居続ける俺も相当な物だが。
(今はそんな事よりも数を減らさないと――)
自分が使うアインブラッド・ガンブラストは重武装で高機動型のパワーローダーだ。
武装も右腕にアサルトライフル、左腕にアームガン。後ろ腰にナイフ、両足側面にも二連装銃。
背中のフライトユニットにはキャノン砲二門と内臓式ミサイルハッチが二つある。
それ達を遠慮なく全て解き放つ。
外見も武装も一か月前のバハムス帝国での、ゼレーナとの決戦時から変わっていないがアップデートが繰り返されて性能はフォボスとの最終決戦の時と比べて格段によくなってる。
皆のパワーローダーも。
自衛隊全体で使ってるパワーローダーもそんな感じだ。
『私も負けてられない』
ゲイル・リヴァイヴで俺と背中合わせになり、次々と両肩のビームキャノン砲、二丁のビームライフル、両腰のレールキャノンで敵を撃ち落としていく。
本当に頼もしい婚約者だことだ。
☆
Side ルーナ・キャスケット
ドラゴンを次々と撃ち落としていく自衛隊を見て私は凄いと思った。
性能的にアジア連のパワーローダーとは比べ物にならないのは分かっていたが腕も段違いに良い。
私達よりも上だろう。
だが今は彼達と一緒にドラゴンを倒さなければ。
このドラゴンも、元はこの世界の生物ではない。
別世界からの飛ばされてきて、この世界で繁殖した生物だ。
存在そのものに罪はないが、放置すれば犠牲は出る。
なので心を鬼にして駆除しなければ生態系が崩壊してしまうのだ。
もっとも次々に外部から危険な生物がやってくるこの世界で生態系の秩序も何もあった物ではないと言う意見もあるが――それでも生きるためには必要なことだ。
それを分かっているのかどうか知らないのか高飛さんは呑気なものだと思う。
同時にそれが羨ましく思う時もある。
『大丈夫ルーナちゃん?』
「ちゃん付けはよしてください! それと心配するなら自分の身を心配してください!」
駆け寄ってきた高飛さんにキツめに言う私。
こんなので危ないところを何度か助けてもらった恩がある。
そう考えるとやはり私はまだ未熟なのだろうか。
「今はそんなことよりも――」
私は雑念を振り払うようにビームマシンガンのトリガーを引く。
機動性、火力、防御力ともにドラゴンより私のエクスキャリバー、エンジェスⅣが上だ。
負ける要素は見当たらない。
『ちょっと危ないよ!』
「っ!?」
真上から此方を狙っていたドラゴンの攻撃を高飛さんの射撃で助けられる。
「……ありがとう」
『えーもしかして照れてる?』
「今は戦闘中です! 調子に乗らないでください!」
『そう言うところも可愛いよ』
「ふん……」
今回の私は調子が悪い。
またしても高飛さんに助けられてしまった。
☆
Side 緋田 キンジ
時は夕暮れ。
ディメイションクロス飛行場。
そこにマザーバードを置いて周囲を見渡す。
近代都市な外観に相応しく、機械のハイテク作業化が進んでいる。
人外の様々な種族が見受けられてビックリもした。
この辺り、バハムス帝国よりもファンタジー世界している。
ともかく――
ドラゴンを何とか撃退して俺達はこの飛行場に案内された。
そろそろ向こうからお出迎えが来てもいいと思うのだが――
「すいません、遅くなりました」
そして現れたのはエルフのように尖った耳でウェーブかかった水色の長い髪、白肌のグラマラスな美女だった。
見た目まだ二十代ぐらいだろう。
「どうも、私はミーティア。ディメンションクロスの代表者です」
と、彼女はそう名乗った。




