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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

即身仏に似たもの

作者: 猫鷹

皆さんはじめまして。

梅雨も明け、7月も終わりに向かい、8月の強い日差しがさす暑い夏になりました。

そんな暑さを我慢し、日々の生活を頑張っている皆さんの為に、お盆も近くなってきたのもありますし、ここは少し怖い話で一つ涼しんでいかれませんか?


…といっても震えあがるほど怖い話!といったお話でもないので期待はしないで下さいね?


怖さを求めて少しだけホラーのジャンルを開いて読み耽っている皆さんが、それぞれの作家さん達が語られていく物語達の合間のちょっとしたライトホラーで一息入れる。そんな気持ちで読んでもらえたなら幸いであります。



さて…先ず、お話の出だしはどうしましょうか…




では。




皆さんは、生き仏、即身仏という言葉を知ってるでしょうか。当たり前だと言う方のほうが多いかもしれませんね。とはいえ知らない方もいるかもしれませんので少し説明をさせてもらうと、簡潔に言えば僧が、厳しい修行をつみ、悟りを開き、自力で即身成仏になった姿であります。


まずは第一に、五穀断ちのため、低カロリーものだけを口にしながらの山籠り修行を続ける事1000日。まずは脂肪を落とす為の作業を行う。


第二に、痩せた身体を更に追い込むため1000日木の皮、根を食べながら死なぬ様に生き長らえさせる。木食行を行いながら僧は、ひたすら瞑想にあけくれる。

この過程までくると、僧の体は骨と皮だけとなります。


なぜここまでの減量をするのかという理由としては、

脂肪に含まれる水分による、細菌の繁殖や、蠅の産卵による蛆の繁殖等のために起こる腐敗を防ぐためです。


ちなみに僧は、この段階までくると漆を口にし、嘔吐や放尿などでさらに身体を絞り込んでいくと聞きます。


第三、ここから最後の段階、土を3メートルほどの深さを掘り、底に立つことも身体の方向を変えることもできないほどの小さな石室を作りその中に僧を坐禅を組ませた状態で入れます。

竹筒で空気穴を作り塞ぐと、その中で僧は鉦を鳴らし、お経を唱え続けていく。


竹筒から聞こえる鉦の音がなくなる事を合図に僧は亡くなった事が確認。

竹筒を外し、完全に埋めたあと1000日を使い乾燥しミイラを作っていくのです。


その後の即身仏は、衣服を着せ崇拝の対象として寺で祀られることになります。

今では法律により、禁止とされていまして日本には17体存在するとされ大切に祀られている。



…とここまでで大方の即身仏がどんなものかは分かってもらえたでしょうか?

それではこれからが本題に入ります。


では、なぜ出始めに即身仏の話をしたかというとですね。

このお話は、私が当時住んでいた村での行われるある事が、先程お話した即身仏に『似た物』であり。作り方もまた『少しだけ似て』、しかもそれが平成から令和に移り変わっても今だに作られ続けていると言った内容だからです。


ちなみに、その住んでいた村の名も場所も秘密ですよ。


ただ、私は皆さんにこんな儀式が残っているといった知識だけを伝えて行こうと思います。


それでは、続けますね?



まずは、先程私が『似た物』といった表現を使ったのかと言うと、即身仏は僧侶が困難な修行を達成した崇拝の形でありますが、私が住んだ村で使うものは『罪人』を使って作られたものなのです。


現世で行った悪行に対してを死んだ後にではなく、現世で神に対して謝罪を口にし続けさせます。

亡くなった後、村にある普段は入る事を硬く禁じられた場所へと運ばれると、次はまだ現世で生き続けている人々が起こす罪業を、それに肩代わりさせ神に謝罪をさせ続ける為に納められるのです。


この使われる罪人の悪事は重ければ重いほど良いとされています。


次に、作り方などを説明させてもらいます。


私の住んでいた村は山の中にあり、本当に小さな田舎なので、人口も少ないのもあって、悪事を働く者が滅多に出てきません。


では、どうするかというと、皆さんはたまに警察署などで懸賞金のかかった逃亡犯顔が貼られているポスターを見かけたりしませんか?


おこった事件はどんどん時間が経ち、それでもいまだに逮捕されない。もしかしたら犯人は死んでいるのではないかと言えるほど犯人歳を取っている。


そう言った者達を村は材料として主に使っているのです。その他にもポスターには貼られてはいませんが、行方不明になっている悪人などもいたりはします。


その辺りを細かくお話すると長くなるので簡略しますが、大雑把にこういった人間を材料にしていると思ってください。


その材料を使い、先程説明した即身仏のやり方と同じ三つの段階を持って『生贄』を作ります。


まず第一段階。現世に行っていた悪事により、被害を受けた者達の痛みを知る為の『叩き業』を行います。お経を唱えながら逃亡を図らない為に、手足の骨を砕き切るまで何度も何度も休む事なく村の者複数人で叩き続けます。

この際、頭や身体などは避けていきます。死なない為です。

これを、1週間続けます。与えられる食料は水と低カロリーのもの。相手が拒もうとすれば無理にでも押し込んでいきます。少しでも脂肪を減らさせる為です。


第二段階。『清め業』、神に謝罪をするのですから初めは身を綺麗に清めると言う意味を持ちます。

身体に生えた全ての毛を剃りあげ、寺で清めた水とご神酒を混ぜたもので綺麗に磨き上げます。これを1週間。この間も食事の、内容は変わりません。


第三段回。『謝業』。やり方は地面に穴を3メートル掘り、底に小さな石室を、作ります。

ここは、即身仏のやり方と変わりません。

違うのはこれからとなります。村の宗教は仏教だけではなく混ざり物みたいなもので、まずは座禅の形を無理やり作り、キリストに似せたのか、『茨』イメージさせる為なのか、有刺鉄線をきつく巻き付け、顔を空に向けたまま固定させます。

上を向いたまま座禅を組ませた状態で石室に入れます。石室の広さは『少し身動き取れる』ほどの大きさを用意。

入れた後、隙間には傷口に染み込む様に天然塩を詰めていきます。


口には竹筒をさし、空気穴を確保してから埋めていくのです。しかし、ここも本来のものと違い出口は広めにし、自然信仰の教え加えているのかのように、竹筒から入ってきた雨水による水分補給。虫などのタンパク質は許されています。自然への感謝を忘れてはいけないというものかも知れません。


石室に収められた物は竹筒を通して、痛みを口にしながら天に向かい謝罪を死ぬまで神に唱え続けるのです…。


最後、竹筒から聞こえる声や、息遣いが亡くなった後は、同じです。竹筒を抜き、蓋をし1000日放置した後に回収。

『石室ごと』寺の裏にある、先程いった普段は入る事を硬く禁じた場所へと埋め直させるのです。


以上が作るまでの行程となっております…。




…とこれで終わりなんですが、どうでしたか?似てるようで似てない不気味な仏を作る話に少しは涼しんでもらえたでしょうか?


ちなみにこの風習には名前がありまして、それは。






『かくれんぼ』と言います。






良かった。馬鹿馬鹿しいと苦笑してくれましたね。

まぁ、昔の呼ばれ方は隠し牢や隠し房などと呼ばれていたのですが、歴史がたつにつれて少しずつ読み方を変化していったとされています。勿論なぜこの名前かも私は分かりません。


ちなみに皆さんが苦笑してくれたことに良かったと言ったのは、どんなにつまらない話でも、怪談やホラー話をしていますと、自然に『色々な者が寄ってくる』ものなので、最後には苦笑でも構わないので『笑』って終わらせることにより『散らした』と思ってください。


では。短い時間に私のお話を聞いてもらいありがとうございました。






ーーーー







…と、話を聞いてもらった皆さんが、いなくなり、私だけが残ったこの空間で皆様方に少しだけ謝罪を口にする事にします。


すみませんでした…と。


このお話は決して呪われると言った物ではありません。


ただ私はあの日の出来事が今だに恐ろしく誰かに伝える事で恐怖を紛らしているだけなのです。


当時…あの村で、初めて大人から教えてもらった儀式に対して皆さんと同じように馬鹿馬鹿しいと笑いました。

季節も今日と同じお盆の近くなってきた時期。

そんな儀式があったなら、肝試しがてらに儀式を行う所は見れなくても、禁止されている場所位には何か面白い物が見れるかもしれないから入ってみようと、愚かな私は深夜の、皆が眠っている時を見計らいその場に足を踏み入れていきました。




着いたあと、懐中電灯を照らしながら、その場所を意味もなくウロウロと歩き回りました。その間、私が期待しているようなナニかは、なにも聞こえず、何も見えず、ただ暑さと蝉のやかましく鳴り続ける声を我慢するだけで時間だけが無駄に経過していっただけでした…。


その後…どのくらいの時間がたったのかは分かりませんが、暑さと蝉のうるささに我慢も限界に達した私は帰ることに。

少し位は霊はみれるかもと期待していた分の反動もあったのか、所詮つまらない作り話だ、馬鹿馬鹿しい、つまらねぇと誹謗中傷めいた言葉を口に出しながら、その場から離れる為、背を向けたのです。



今なら断言できます。その時とっていた私の愚かな行動に対してバチが当たったのでしょう。


背を向けた瞬間…聞こえてきました。



「…あ”………あ”…」



突然…どこからか聞こえてきた人の声に、思わず立ち止まりました。


「い”…あ”…….い”……」


やばい、もしかしたら近くに誰かいたか?寺か村の関係者かもしれないと焦り周りを軽く見渡した後、急いで懐中電灯の灯を消します。


「も”…ぅ”………い”……ぇ”…」


月の明かりも照らされない真っ暗な空間。

そんな空間だからこそか聴覚だけが異常に機能していました。


「ぃ”い”ぃ”…ぁ”あ”…い”い”ぃ”」


鮮明に聞こえる声は、なぜか普通の人が出す声とは違う気がして、私の全身が暑さを忘れたかのように震え出しました。




ーー声は私の後ろから聞こえてきます。




ーーしかも、一つ一つ別の人の声に…





「あ”あ”あ”ぁ”あ”」


その声は筒を通して発している様な


「ゴボッッッ!ゴボッッッ!」


声の中には水に咽せてるような音も混ざり合い


(だめだだめだこれ以上聞きたくない)


一つまた一つと響き渡る声が恐怖に変わるように身体へと染み込んでいくような感覚。


全身から汗が吹き出し、今にも叫び声をあげたくなるのを手で必死に抑えながら、心の中で嘘だ嘘だと繰り返し念じ続け、私は震えを無理だと分かりつつも、なんとか抑えゆっくりとその場を逃げようと…



「「「「「も”ぉ”ゆ”ぅ”い”ぇ”え”ぇ”え”ーー」」」」」


「ぎゃーーーーーーーー!」


木々や地面が一気に震えさす、一斉に響き渡った叫び声に、私は声にならない叫びを上げながら逃げ出していきました。





その後の事は、特に大人にバレたとか、幽霊に取り憑かれたなどと言った話はありません。


ただ、そんな体験をした私は1人になった時、眠りに入る時、昼夜問わず聞こえてくるようになりました。






あの夜の埋まられた者たちの苦しむ声が……




また、いつか恐怖に耐えられなくなってきた時は、気を晴らす為、誰かにこの話を聞かせるでしょう。


あの時私がやった行いを今でも咎めるように、お前も仲間に加われたいう様に…。


今も私の耳には彼らの声が響き渡るのです。



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