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最終話 願い

最終話まで投稿し直しました。

「あー痛い……どうしよう。これ、死んじゃうかも」


 平山との戦いの翌日。

 熱が出て顔はさらに晴れ上がり、全身に激しい痛みが走っていた。

 これは死んだ方がマシだ…… 

 そう思えるほど死ぬほど痛かった。


「死んでしまうのか? せっかく私が看病してやるというのに」

「……絶対死なない。リーゼが看病してくれるなら、看病が終わるまで死なない」


 リーゼはエプロン姿で、寝ている僕を見下ろしている。

 ショートパンツにシャツ。

 その上からエプロンを付けているのだが……

 これがまぁセクシーで、見ているだけで興奮してしまう。

 この姿が一番似合うのではないかと思うぐらい、リーゼはエプロン姿がよく似合っていた。

 写真に納めたいところだが……彼女は嫌がるだろうか。


 僕は痛む身体で携帯を持ち、彼女の方に向ける。


「し、写真を一枚……あまりにも美しすぎるので記録に納めておきたい」

「こんなの、いつでもできる恰好だろ。写真何て必要あるか?」


 リーゼはふんと鼻を鳴らし、僕に顔を近づける。

 彼女の顔が眼前に迫り、僕はドキドキしていた。

 何回見ても飽きない美人の顔が目の前にある。

 それだけで昇天してしまいそうだ……


 リーゼは僕の額に額を合わせる。

 僕は興奮しすぎて、倒れそうになっていた。

 こんなサービスしてくれるなら、怪我をするのもいいかも。


「まだ熱があるな。もう少し寝てろ。私がご飯を作ってやる」

「ありがとうございます……ありがとうございます」


 彼女が食事を作ってくれると言うので、僕は泣いて彼女を拝んだ。

 さらにそんなサービスまでしてくれるの?

 これからは定期的に怪我をすることにしよう。

 そう決意するぐらいに、彼女の申し出は嬉しかった。


 キッチンの方へ行き、リーゼは調理を開始する。

 何を作っているのか分からないが……とにかく楽しみだ。


 楽しみ過ぎて、ワクワクしてくる。

 胸の高鳴りが止まらない。


「あれ……? どうなってるんだこれ?」


 ボカンという爆発音が鳴り、焦げ臭い匂いが充満する。


「…………」


 胸の高鳴りが止まらない。

 今度は恐ろしさにだ。

 楽しみなわけじゃない。

 突如として、このイベントが怖くなってきた。


「よし。まぁこれでいいだろう」


 本当にいいの?

 本当に大丈夫なの?


 僕は不安な気持ちで、リーゼの独り言を聞いていた。

 案の定、彼女が運んできたのは、大変な物だった。


 大変……大きく変わった物。

 真っ黒な物体をリーゼはお皿に盛ってやって来た。


「いや、それ本当になんなの!? 僕死なないよね?」


 リーゼは頬を膨らませて僕を睨む。

 ああ、可愛いからその顔止めて!

 何が何でも食べたくなっちゃうから!


「食べないのか?」

「食べますとも! 食べないという選択肢はありませんから!」


 僕は嫌な顔一つせずにそう答えた。

 食べるに決まってるだろ!

 リーゼの手作り料理だぞ。

 その正体は分からないが、僕は食べるぞ。


「ほら。あーん」


 彼女はニヤニヤ嬉しそうに料理を口に運ぶ。

 リーゼとしてはそこそこ上手くいったと思っているのだろう。

 そんな彼女の気持ちをふいにできない。

 食べるんだ!


「…………」


 食べると決めたはずなのだが……どうも心が否定している。

 

 口が重たい。

 開くのが大変だ。

 汗と震えが止まらず、おかしな匂いが料理から漂う。

 え? 本当に死んだらどうしよう?


 だが僕は意を決し、リーゼの料理をパクリと口にした。


「う……」

「美味いか?」

 

 僕は何も答えられなかった。

 リーゼの手料理を食べた瞬間、意識を失ったからだ。


「耕太……? おい、耕太!」


 彼女の叫び声が聞こえる。

 大丈夫……僕はリーゼを残して死なないから……

 

 僕は生死を彷徨い、そして夜にようやく目を覚ます。


「ん……起きたか」

「…………」


 リーゼは僕の布団に入り込んで眠っていたようだ。

 彼女は僕の首に腕を回し、そして僕を見つめていた。


 ああ……愛おしい人がこんなに近にいるなんて、なんて幸せなことなんだ。

 死にかけたことなんてどうでもいい。

 リーゼがいてくれるだけで、本当に心の底から喜びが湧き上がってくる。


「リーゼ……ありがとう。僕と一緒になってくれて」

「私の方こそありがとう。その……カッコよかったぞ、昨日は」


 リーゼは乙女らしく、顔を赤くして昨日の戦いのことを褒めてくれている。

 うん。頑張って良かった。 

 リーゼのこんな可愛い顔を見れるだけで、本当に頑張った甲斐があったよ。


 僕は胸を喜びでいっぱいにし、彼女に口づけをする。


「…………」

「僕はリーゼが望むだけ傍にいる……その間、絶対幸せにするしね」

「だったら……私が死ぬまで一緒にいてもらおうかな」


 僕は苦笑いを浮かべ、彼女の素晴らしい笑顔を見つめる。

 本気でリーゼがそう願うのなら、僕はなんとかしてみせよう。

 不可能だって可能にしてみせる。

 それぐらい、彼女といるだけで希望と自信が満ち溢れてくる。


 僕は願う。

 ずっと彼女といられることを。

 僕は誓う。

 彼女を幸せにすることを。

 僕は感謝する。

 彼女と出逢えたことを。


「……死ぬまでずっと一緒だ。リーゼ」

「ああ。ずっと一緒にいよう、耕太」


 そして僕たちは口づけを交わす。

 お互いに想いを確かめ合うような熱い口づけ。


 かけがえのない愛おしい彼女の身体を抱きしめ、僕は果てしなく続いていく幸せな日々を想い、願う。


 これから先、僕たちには色んな困難が訪れるだろう。

 だけど僕はどんなことがあろうと彼女とずっと一緒にいる。

 だって彼女こそが、僕にとっての幸せそのものなのだから。


 だからこれからも、一生リーゼのことを愛し続けるのだ。

 長い彼女の人生の短いひと時を、限りなく永遠のものにするために。


「…………」

「…………」


 無言で見つめ合う僕たち。


 そして僕らはこの日――初めて結ばれた。


 おわり

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― 新着の感想 ―
[良い点] 耕太君が勝負に掛けて必死に努力し、リーゼがそれを暖かく見守る。しっかりとラストまで書いて下さり、ありがとうございます! 結局リーゼは耕太君にデレデレだったのですね。ハッピーエンドで完結して…
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