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第23話 ショッピングモールへ行こう

「なあ、ゲームって面白いのか?」

「ゲーム?」


 リーゼはベッドでに横になりながら携帯でゲームの情報を見ていたようで、僕にそう訊ねてきた。

 正直、僕自身あまりゲームをしないから良し悪しを説明することができない。

 面白いとはよく聞くけれど。


「人によっては面白いんじゃないかな? 僕はあんまり知らないんだよ」

「なら、私が教えてやろうか?」

「知らないよね? リーゼ絶対知らないよね」


 リーゼは勝ち誇ったような顔で「まあな」なんて言っている。

 この……可愛いなぁ。


「お前も知らないんだったら、次の休みにでも買いに行くか? それとも、ネット通販で購入するか?」

「もうネット通販なんて言葉知ってるの!? ちょっと適応能力高すぎだよね」

「元々何もない世界から来たんだ。全部が新鮮で面白くてさ。気が付いたら勝手に覚えてたよ」

「ふーん」


 携帯の操作も上手だし、足で器用にテレビのリモコンを操作しているし……面白いのも構わないけど、ちょっとだらしなさが増してるような気もする。

 だけどそんな器用に動く彼女の足の指先までも可愛らしく見えてきて、結局僕は何も言えなかった。

 そんな姿も見せてくれてるってことは、それだけ心を開いてくれてるってことだよね! それでいいよね?


「だったら、買い物ついでにゲーム屋さんも行ってみようか?」

「ああ。そうしよう。他にも私の知らないこと、もっと紹介してくれよ」

「かしこまりました。リーゼが楽しんでくれそうなところ、考えてみるよ」


 リーゼは少しだけ口角を上げ、首を縦に振る。

 その後はテレビと携帯に夢中になっていた。

 

 僕は料理の研究中である。

 もっともっと上手くなって、リーゼを喜ばしてあげるんだ。

 そのための精進。

 そのために日々全身。

 とにかく練習して練習して、練習しまくるぞ。


 僕の料理の練習は毎晩夜中まで続く。

 リーゼが寝ていても研究をやり続けていた。

 おかげ様で、ようやく料理のコツのようなものが掴めてきたような気がする。

 包丁さばきはすでにお手の物。

 キャベツの千切り何て特技に記入したいぐらいだ。


 就職には何の役にも立たないだろう。

 だけどリーゼを喜ばすことはできる。

 僕はそれでいいのだ。

 だって目指すは主夫だしね。


 普通に生活していても料理の研究を続けていても、当然のように休日も訪れる。

 僕は約束通り、リーゼと共に買い物に出かけることにした。


「どうだ?」

「うーん……可愛い!」


 リーゼは新しい服を買ったらしく、僕に具合を確認してきた。


 白色のロングスカートに青色のシャツ。

 そしてジーンズの上着を羽織ったその姿は天使のようだった。

 一撃で僕の心は昇天してしまう。

 それぐらい可愛いと思うし、実際のところ可愛かった。


 僕が目をハートにしていると、リーゼは少し照れている様子だった。

 そんな姿もまた愛おしく思え、僕は胸をキュンキュンさせる。


 家を出て、町の中を二人でゆっくり歩く。

 リーゼは鼻歌交じりで歩いており、楽しそうだ。

 僕は彼女の顔を見ていつも通りときめきを覚え、そっと彼女の手を握る。


「!!」


 リーゼは驚きはするが……手を握り返してきてくれた。

 彼女と繋いだのは左手。

 僕は右手をグッと握る。


 やったー!

 手を握れた!


 普段は意外とそんなタイミングが無いので握ることができないが……

 幸せ。


 僕はポワポワした頭のままでリーゼと歩く。

 リーゼも少し恥ずかしそうにはにかむ。


 そんな彼女のことを可愛いと思う男性が多いのだろう、リーゼとすれ違う男たちが、皆顔を赤くして彼女を見ている。


「ヤベーぐらい可愛いな、あの子」

「隣の男はなんだよ……手握りやがって」

「羨ましいにも程があるぞ!」


 そんな周囲の視線を浴びながら、僕たちはショッピングモールへと向かう。

 ショッピングモールに到着すると、リーゼは周りを見渡し感嘆の声を上げる。


「凄い大きい店だな……ここには何があるんだ?」

「色々とあるよ。ゲームも売ってるしテレビも売ってるし服も売ってる。ついでに食料品も売ってると、本当になんでもあるよ」

「へー……武器なんかも売ってるのか?」

「そんなのあると思います? この平和な日本に?」

「あるわけないだろうな」


 意地悪そうな笑みを向けるリーゼ。

 すると彼女は僕の手を引き、駆け出す。


「ほら、早く行くぞ」

「…………」


 好奇心を全開にさせたリーゼは芸術としか言えない程の笑みを僕に向けている。

 僕はその美しさに仰天し、思考が停止してしまっていた。


 こんな笑顔をまだ隠し持っていたなんて……

 リーゼは底が知れない。


 漫画なんかで今まで苦戦してきた相手が、新たなる敵にあっさり倒されるような衝撃。

 驚きを隠しえない。


 彼女の笑みを見つめ、僕は全身に喜びを充満させる。

 そして彼女に従い、ショッピングモールを進んで行く。

 彼女がいればどこでも楽しいな……なんて、周囲の物を見ることもなく、僕はそんな風に考えていた。

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