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第18話 テーマパーク

 僕たちが向かったのは、とあるテーマパーク。

 テーマパークに到着すると、リーゼは冷めたような目で周囲を見渡していた。


「……人がいっぱいいるな」

「いるね」

「そんなに面白いところなのか、ここは?」

「人によるだろうけどね」

「ここには何があるんだ?」

「色々あるよ。二人で見て回ろうよ」


 入場チケットを購入し、リーゼと共に園内へと足を踏み入れる。

 まだ何が面白いのか理解できないリーゼは興味なさそうに歩くだけ。

 僕は苦笑いし、目についたある物を指差す。


「ほら、あそこ見てみて」

「……なんだあれは?」


 それは色んなキャラクター大通りを練り歩く、パレードだった。

 パレードを見ている人たちは手拍子し、それを楽しんでいる様子。

 とうとうキャラクターたちは、僕たちの前にまでやって来る。


 僕は手拍子しながらパレードを眺めていた。

 リーゼは……腕を組んでつまらなそうにしている。


 ああ……失敗だったかな。

 僕は落胆し、テーマパークを出ようとまで考える。

 しかし、リーゼの足元を見ると、彼女は足でリズムを取っているようだった。


「……つまらなくはない?」

「あ、ああ……悪くないんじゃないか」


 僕から顔を逸らしながらも、パレードを見つめ続けるリーゼ。

 こんな素直じゃないリーゼも可愛い。

 どんな時でもどんな顔でもどんな様子でも可愛いなぁ、リーゼは。


 僕はニマニマしながら彼女を見つめていた。

 パレードはどうした?

 僕にとってはリーゼこそがパレードなのだ。

 まさに心はお祭り騒ぎ。

 彼女がいるだけで楽しいというものだ。

 そんな彼女の横顔。

 僕はときめきを覚え、ボーッとしながらずっと眺めていた。


「おい」

「え?」


 気が付けばパレードは行き過ぎてしまっていたらしく、彼女に釘付けとなっていた僕に、リーゼは怪訝そうな視線を向けていた。

 僕は頭を振って、現実に戻る。

 現実に戻ったところで、男の妄想みたいな美女が目の前にいるんだから、嬉しいよね。


「意外と楽しそうだな。他には何があるんだ?」

「何があるんだろうね。僕もそこまで知っているわけじゃないから」

「なら、二人で楽しそうなところを探すか」

「うん。そうしよう!」


 リーゼはいつもより早足で道を歩く。

 顔には出さないが、楽しんでいる様子だ。

 僕はリーゼの様子が嬉しく、胸をキュンキュンさせながら彼女の隣を歩く。


「あれはなんだろうな?」


 リーゼが指差した方向にあるのは――

 ウォーターショー。

 水上で何やらイベントを開催しているようだ。


「イベントがあるみたいだけど……どんなのかは分からないな」

「よし。なら行こう。今すぐ行こう」

「ははっ。仰せのままに」


 僕たちはイベントを見るために、施設内へと足を踏み入れた。

 中に入り、座席に座ると、目の前には大きな水たまりがある。

 水たまりというには大きすぎる……もう池のようなものだ。


 ドンドン座席は埋まっていき、とうとう満杯になってしまう。

 何が起こるのだろうと、僕はワクワクしながら待機していた。

 リーゼもどことなく楽しみにしているようで、ソワソワしているようだ。


 そしてイベントが始まり、水上バイクに乗った人たちが水の上で大暴れ。

 演劇のようなものが始まり、ストーリーが進んで行く。


 水の上で何かアクションが起こる度に、観客席の方に水が飛んで来る。

 僕もリーゼも水浸しになり、僕は楽しかったがリーゼの反応が気になった。


 恐る恐る彼女の方を見ると……

 なんとリーゼはケラケラと笑っていた。


「あはは。濡れちゃったじゃないか」

「……あはは。そうだねー」


 彼女の満面の笑み。

 初めて見たけど……神々しいほどに美しい。

 イベントが目の前で行われているはずなのに、それ以上のビッグイベントが僕の真横で開催されていた。

 僕はそこからリーゼの顔を凝視する。

 何かアクションがある度、笑うリーゼ。

 僕は横から飛んでくる水に反応することなく、リーゼのことを見つめていた。


 そんな僕の様子に気づいたリーゼは、顔を赤くして僕の顔を無理矢理前に向ける。


「こ、こっちばかり見てるんじゃない。イベントを楽しめ」

「僕にとってはこっちのイベントの方が――」

「何がイベントだ。バカなこと言うな」


 リーゼは僕に顔を寄せ、耳元で囁く。


「私のことはいつでも見れるだろ?」

「……は、はい」


 僕はボンっと顔を赤くする。

 彼女の魅惑的な声に興奮してしまった。

 なんだその破壊力は……

 

 僕はリーゼの顔を見たく思い、彼女の方に顔を向けようとしたが、彼女にガッツリと顔を押さえつけらえていて見ることができない。

 だけど彼女の手が妙に熱くなっており、その熱で僕はさらに顔を赤くした。


 この手を掴みたい。

 この手を握りたい。

 この手に触れたい。


 僕は勇気を出して彼女の手を握ろうとした。

 が、


「ああー。面白かったな」

「へ?」


 どうやらイベントは終了したようだ。

 リーゼは僕から手を放し、大きく伸びをする。


「どうした?」

「ううん。別に」


 僕は頭をかかえて俯いていた。

 後少しだったのに……

 次こそ絶対に手を握ってみせる!

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