謎の紋章
この世界では謎の事件が多々起きる。
今日も人が殺された。おそらく同一人物だろう。
犯人は必ず犯行に及んだ際、死体の隣にあるマークを残す。
この事件が起きて五年の歳月が経とうとしているが犯人の情報が一切掴めていない。
警察や医師が捜査をしている中、ユウトは死体の隣に描かれている血で描かれたマークをずっと見つめていた。
「すみません、事件についてなのですが昨夜この辺で何かありましたか?」
警察がユウトに事情収集をするが「いえ、分かりません」と答えた。
一体奴らはどこから現れてどこに消えていくのか。
警察も政府もこの事件について一切手がかりを掴めていないがユウトはこのマークについて一つだけ知っている事がある。
小さい頃に母親とフリーマーケットに行った時に迷子になっていたユウトは一人の女の子に出会う。
自分の今の状況も忘れて女の子とフリーマーケットが行われている場所の片隅で地面に絵を描いたりして遊んでいた。
「なにこのマーク?」
ユウトは女の子に聞いた。
「これ本当は人に見せたらいけないの」
「何で?」
女の子は絵を描いていた手を止めずっと自分の描いたマークを見つめていた。
その顔は何か寂しそうだった。
「・・・いつか私のところまで来てくれる?」
女の子がマークの事をユウトに話してくれたとき、周りの時間が止まっているような感じがした。
「約束だよ」
この言葉を最後に女の子の姿がゆっくりと消えていった。
寝ていたのか、気が付いたら母親がユウトを探しに来ていた。
「もーどこに行ってたのよ、探していたんだから」
女の子との出会いが夢だったのかそれとも現実に起きた出来事だったのかは当時は分からなかった。
それから十五年後、二十三歳になったユウトはこの世界で起きている様々な謎や事件を解くためにある事務所に所属している。
「ユウトちゃ〜ん!今日こそ皆んなで飲みにいくぞ!」
事務所内で髪を後ろに括りサングラスをかけた陽気なマサシがユウトの肩に腕を乗せてきた。
「何回も言っただろ、俺は人が多いのが苦手なんだ。だからパスだ」
「たくよー、お前本当に臆病だなぁ。じゃあ今度二人で飲みにいくぞ!約束だぞ!」
「気が向いたらなぁ」
マサシは楽しそうに事務所を出て行った。
事務所の片隅にある一人用のソファーに腰を下ろしコーラを飲んでいるとヒョコっとデスクの下からショートカットで青色のメガネを掛けた小柄な女性が出てきた。
「サトミ、なにしてんだ?」
「ユウトさ〜ん仕事終わったんですか?」
「あ、あぁ」
「だったらご飯行きましょう!二人なら大丈夫ですよね」
「マサシ達と一緒に行けばよかっただろ」
「人見知りの私があんな奴らとご飯に行くのは嫌ですよ!」
「…サトミ、まさかお前また今月の給料を」
「はい、自分が作っているメカに投資してしまいました」
サトミは申し訳なさそうにユウトに言った。
サトミはメカに強く、ユウトが持っている武器を修理したり、また新しい武器や機械を開発したりしている。
「ぷはぁー!本当にビールっておいしいですねぇ!」
居酒屋の個室でサトミがビールを飲む。
それから唐揚げ、せせりなどを美味しそうに食べる。
「相当腹減っていたんだなお前…」
「本当にありがとうございます、実は依頼がたくさんあってやっと終わったんですよ〜。本当、リエさん人使い荒いですよ!」
「リエは気が強いからな、初めて会った時からそうだった」
「そういやユウトさんの方は今日はどうでした?またあの事件が起きたし」
「ああ、面白い情報を手に入れた。この後人が少ない深夜に調査に行ってくる」
「一人でですか?」
「…当たり前だろ」
居酒屋で食事を済ませた二人は事務所に戻る。
「よし、そろそろ行くか」
ユウトは防具や武器を装着する。
「ユウトさん、今日はご馳走さまでした。気をつけて行ってきてくださいね」
「ちゃんと暖かくして寝ろよ」
ユウトは事務所の扉をバタンと閉めた。
(…ふふふ、ユウトさんもまだまだですね〜私がこのまま寝ると思います?)
サトミはユウトが事務所を出たのを確認すると同じように防具や武器を装着して事務所の扉を開ける。
(お腹一杯食べた私は無敵なんですよ〜だ♪)
扉を閉めると扉の裏からリエがサトミが出てくるのを知ってたのかのように待ち伏せていた。
「あらサトミちゃん、防具スーツと武器まで装着してどうかしたの?」
「い、いや〜ちょっとお腹空いたのでパンでも買いに行こうかなと」
「あらそうなの!気をつけて行って来なさい」
「はい!隊長!」
「なわけないでしょ、誰がその姿でパンを買いに行くのよ」
「痛い!痛い!離してー!」
サトミはリエに耳を引っ張られながら事務所に連れて込まれた。
深夜、ユウトは誰もいない路地裏で身を潜めていた。
(情報によるとこの付近で取引きが行われるはずなんだが)
向こうから二人組が路地裏に入ってくる。
ユウトは二人組が入ってきたのを確認したあと気付かれないように盗聴器を二人組の近くに仕掛け、その場から離れた。
「俺たちには関係ないんすけど、この世界にあの女がいるんすか?」
「十五年前にこの世界に来たという情報が入っている」
「これを見ろ」
片方の男がスマホの画面に映し出される記事を見せた。
「ん、なんすか?死体の隣にあるこのマーク」
「今回取り引きする組織の紋章だ。あの女に早く出てこないと罪も無い人間を殺していくぞと言うメッセージだと捉える事ができる」
「ひゃー、残酷過ぎるだろ、この世界にいたら男はたちも巻き込まれますよ!さっさと取り引き済ませて帰りましょうよ!」
「…どうやらそういう訳には行きそうにないようだな」
「えっ?」
ユウトは二人組の前に現れた。
巨漢の男がユウトに話す。
「盗聴器を仕掛けているとは趣味が悪いな兄ちゃん」
「臆病なもんでね、だがあんた、わざと聞こえるように話していただろう」
「ヒュー怖いねぇ。シュウ、お前は先に行っときな、俺はコイツを片付ける」
「はいよ!了解でーす。」
もう一人の小柄で細身の男はトカゲのように壁を登りその場から離れた。
「目で分かるぜ、一見臆病で優しそうに見えるが中身はとんでもないものがやどっている」
「俺はただの臆病者さ、だがさっきの話、詳しく聞かしてもらう」
「俺を倒す事ができたらな」
お互いの戦闘が始まった。
壁を登り、屋根を次々と飛び越えるシュウは戦闘の音が耳に入った。
「ひゃーやるねー!あの兄ちゃん!旦那と互角にやり合っているよ」
ニヤニヤしながら戦闘の音を遠くから聞いていると足下に銃弾が飛んできた。
細身の男は銃弾を避ける。撃った方向を見るとユウトに飲みを誘ったマサシが姿を現した。
「いや〜ユウトちゃんも隅に置けないなぁ、こんな時に楽しい事を経験しちゃって」
戦闘が始まって三十分程が経ち、ユウトも巨漢の男も疲れが見え始めた。
「久しぶりだな、こんなに楽しいのは。お前名前は」
「ユウトだ」
「俺をここまで本気にさせたのはお前が初めてだユウト、御礼に見せてやるよ、俺の本気を」
巨漢の男の腕や身体が大きくなり変形していく。
頭からはツノを生やし、全身鱗で覆われている。まるでドラゴンだ。
「悪いがここからは本気で行かしてもらうぞ!」
巨漢の男の言葉にユウトは人が変わったかのように笑みをこぼす。
巨漢の男に拳を構える。
ユウトの茶色い瞳の色がコバルトブルーに変わった。
その瞳から冷酷を感じさせる。
「俺はいつでも殺しに行く覚悟で闘っている、行くぞ!」
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