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夜のコーヒー

作者: 森内哲

短編の叙述トリックです。

トリックのダメ出しなど、感想を頂けれるとうれしいです。

 寝る前のコーヒーが好きだ。「寝られなくなったらどうするの。朝寝坊して起こしてあげるのは私なんですからね」と母さんはよく怒るが、習慣というのはおもしろい。慣れてしまうと逆に飲んでからでなければ眠れなくなるのだ。


 それで今日も星空を見ながら、マンションのベランダでブラックコーヒーを楽しんでいる。部屋の中では母さんたちが静かに寝息をたてている。一人息子はまだ幼稚園児だが、父に似て賢そうな顔をしていると隣のおばさんに言われたのがうれしい。


 コーヒーを飲みながら昼間の仕事について考える。タカシが妙にやる気だったので任せてみたのだが、ひどい結果に終わってしまった。あいつはでしゃばりで、口で言うほど有能じゃないのはわかっていた。それでもあそこまでひどいとは思わなかったし、一緒に作業したアキコもあきれているようだった。


 アキコはきれいな女の子で、おれがひそかに気にしている。特別な関係になろうと考えているわけではないが、明日はおれがタカシの代わりに仕事をきっちり仕上げていい所を見せてやりたい。もし向こうから迫ってくるようなら少しはやさしくしてやってもいいだろう。


 そんなことを考えていると明日に備えて早く休まなければという気になってきた。おれは残りのコーヒーを飲み干して台所に向かった。カップを出しっぱなしにすると母さんにばれてまた小言を言われてしまう。洗剤できれいに洗って食器棚に戻してから自分の寝床に入った。






 「アキラ!いつまで寝てんの!早く起きなさい!」ママがカンカンになってどなってる。そんなに大声ださなくても聞こえるのに。

「今おきるってば」

「今おきる今おきるってさっきからそればっかりじゃない。あなたまたコーヒー飲んだわね?子供にはまだ早いって言ってるでしょ」

カップは片づけたはずなのになんでばれたんだろう。

「そんなの飲んでないよ」朝からおこられて気分が悪い。とぼけることにした。

「隠したってだめです。コーヒーの瓶が出しっぱなしだったわよ。嘘つきは泥棒の始まり。今度嘘ついたらお家から追い出すからね!」

瓶が出しっぱなしだったか。カップばかりに気を取られて忘れてた。


 「アキラも早く大人になりたいんだよな?コーヒーくらいいいじゃないか」

パパが助け舟を出してくれた。パパはいつもやさしいから好きだ。この間二人で公園に行った時もママに内緒でジュースを買ってくれた。

「あなたも甘やかすのはやめてちょうだい!幼稚園児が寝る前にコーヒーなんて飲んだら寝付けなくなるに決まってるでしょ!」

「すまんすまん。ほらアキラ、そろそろ起きないと幼稚園に遅刻するよ。アキコちゃんだっけ?アキラが好きな子。遅刻する子は嫌いかもよ?」

「もうそんな時間なの?なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ!」

「何度も起こしたでしょっ!早く朝ごはん食べなさい!」



 ご飯をあわてて食べてから家を出たけど、ひどい一日になった。遅刻はしないですんだけど、寝不足だったせいで先生のお話の途中で居眠りしてしまった。よだれを垂らして寝てることろをあっちゃんに見られたのがすごく恥ずかしい。

 お昼に砂場で遊んだ時には「昨日はタカシくんがリーダーをしたんだから今日はぼくの指示にしたがって」と自信満々でお城作りに挑んだけど、あくびしたときにうっかりひじがあたってお城をくずしてしまった。そのせいでタカシにもあちゃんにもずいぶん文句を言われて、あげく仲間外れにされた。


もうコーヒーはこりごりだ。


仕掛けをばらしたあとの文体をもっと幼稚園児らしくしたかったんですが難しいですね。

『アルジャーノンに花束を』の翻訳者の技術に改めて感服します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 序盤の文体から成人男性を連想しましたが、まさかの返しがあり、楽しかったです。 [一言] 仕事=お城作り(砂遊び) いいですね、こんな毎日……!!
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