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天眼の宝飾師  作者: 広大
第一章 過去 第一部 家族
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不思議な村の生活

 俺の暮らす村は変だと十一年近く過ごして居れば気付く、村人の数も六十人に足りず、とても少ないし俺の宝石眼は婆ちゃんによって石の周りに何らかの術が掛けられ封印されている、婆ちゃん曰。


「全てを石に頼っては生きて行けない。」


 だそうな、まぁこの村に居て宝石眼を使ってる人を見た事無いし、必要無いのが良く分かる、この村は自給自足で事足りる、畑も十分だし周囲の森は豊かで獣もかなり生息している、おっと今日はこの後親父達と森に狩りに行く事になっている、不思議な事に親父達は狩りでも宝石眼の力を使わない。


「めったに狩りなど必要無いのに、たまに体を動かすのにスキルを使っては体が鈍るだろう。」


 以前聞いた時の答えがあまりに正論過ぎて二度と聞こうと思わなくなった、確かにこの村では狩りなど滅多に無い、狩りをしなくて良い理由がこれまた凄い、村の外周に二重結界が施されていて、内側が『反射』の結界で獣は防がれ、外側が『内包』の結界で一度入ったら出られない、挙句に結界の間は何かが薄くされていて息が出来なくされる、なんて無駄に高度な結界なのかと聞かされた当初は思ったが『何時までも罠に掛かった獣が動き回って居ては痩せ細って食う所が減るじゃないか。』そう聞かされ今では理に適った結界に感心すらする、そんな事を考えながら歩いていると結界の門前に到着したら、婆ちゃんがやって来て。


「今日からアステリオにはこれで狩りをしてもらう。」


 何やら鉤爪に縄が結び付けられたような形のする武器らしい物を渡して来る、婆ちゃんから鉤縄と教えられたが、森でこれは使い辛いので文句を言おうとしたが、婆ちゃんの氷の笑顔で言葉を引っ込める。


「婆様の言う事は絶対に守れ、我等はお前がその武器で動きを抑えた獣をいつも通りに攻撃する。」


 いつも通りの攻撃ってのは、個々人の得意武器で攻撃するって事だろうと思いながら頷く、日が傾く頃合いになると、狩りが終わり帰路に着き、門を潜り解体小屋へ向かい全ての獲物を血抜きの為に吊るして解体は翌日となる、皆と挨拶を交わしてから自分の家に帰る、八歳を過ぎてから俺は一人暮らしをしている、婆ちゃんが『将来一人で生きて行けるように。』と言って決めたのだ、この村の風習なのかと思い何の疑問も持たなかったが、よく考えると変だった、その頃から村長や長老の御婆おばば様を見かけなくなったし、婆ちゃんは親父達と一緒に暮らしてるし・・・まぁ文句でも言った日には婆ちゃんに何を言われるか・・・取り合えず竈に火を入れる。


「明日は勉強の日だなぁ。」


 二日前から軒下で吊るし干ししておいたラグーの肉を串にさして焼き始めながら考える、俺ももうじき成人、ヒト種は十五らしいが俺の種族は十二歳だと婆ちゃんが言い出したからだ、他の人達には成人は何歳からなのか聞いた事も無く逆らえる人も居ない。


「おっ、このラグーの肉上手に干せたな、かなり美味いぞ。」


 ラグー肉に舌鼓を打ちおわり竈で沸かした湯を桶に移して土間下側の簀子を並べた上に移動し服を脱いで体を拭き、最後に頭から湯を被り布巾で全身から水気を取りながら土間から板の間に上がり服を着て寝間に移動し寝台で本を読み始め、眠くなるまで読書に勤しんだ。


「お早う御座いますアステリオです確認をお願いします。」


 毎日の朝の鍛錬をこなしてから図書館前で声を出す、村民を識別する手札を個々に持って居る、その手札を確認口に差し入れると返却と同時に図書館の扉が開く、この村の最大の疑問がこの巨大な図書館だ、婆ちゃんが世界で一番大きいと自慢気に言っていた。


「ヒト種の考察の『深層心理』をお願いします。」


 十一歳迄は歴史や計算、世界の常識などが主だった勉強も、ここ一年ほどは婆ちゃんの命令で『ヒト種』の勉強だけ行っている、凄いと思ったのは世界の歴史の変革に全てヒト種が関わって居た事、成人して村から出てヒト種と交流が出来る事に、夢が広がるように思っていた、自分の種族の祖先でもあり、生命が活動している星々全てに生息していて、動物種においてはヒト種の割合が全種類の六割を超えるらしい驚異の数を維持しているヒト種、どんな思考でどんな行動を取るのか興味は尽きなかった。


 そして俺は成人の日を迎えた。

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