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天眼の宝飾師  作者: 広大
第一章 過去 第一部 家族
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神々の怒り

 神々の怒り


「遠い昔に聞いた話じゃったが、衝撃を受ける話じゃから忘れてはおらなんだのぅ・・・よう思い出したわ、アーレス様も少しは休まれた方が良かろうしの、昔教えられた話の続きは我が話そうかのぅどこか間違いが有ってもアーレス様が正してくれるじゃろうし、アダマンソル、年寄に気を遣って椅子ぐらい持って来んか。」


 御婆はアーレスが頷くのを確認してから舞台に上がりアダマンソルが面倒そうに持って来た椅子に座り周囲が落ち着くのを待ってから口を開いた。


「神様達はヒト種を導くため『行動原理』の理解を深める為に長い年月努力して、人類の行動原理の大半を占めるのは『感情と欲望』であると理解する事ができた、なればそれを踏まえて天界から降りて人類と共に生活をして星々への影響を良き方向へ導いて行こうと決意し・・・星への影響と人類の中で生活する事を考慮した為に神様達は自己の力を封印して人類と同列の力へと落とした、しかし神々の力は光の力であり全ての行動には『善』が基になるのじゃ、そしてそのため後々徐々に人類との乖離が見えて来るようになる・・・神様達は人類との共存の手始めに『宗教』に目を向けた、そりゃあ『神』を崇めておるのじゃから諍いも無く溶け込めると思うたのじゃ、神様達は大陸各地の数々の宗教施設へと分かれ連絡を取りながら活動して宗教に関わっている者達を善なる道へ方向付ける事に奔走しはじめる、何せ自然発生する『カミナリ』と同じものを自分達の手で発生させ『明かり』という直視すると眩しい程の光をも作り出す『科学』という神様達も知らない技術が有る世界なのじゃ、何せ『箱舟』という人類用の乗り物を空に浮かべる技術すらあったらしいしの。」


「箱舟とは何だ?」


「箱の形の船なのか?」


「どうでも良いが船を空に浮かべる?鳥のように飛ぶのか?」


 各々が驚きの声を上げるが御婆の話は止まらない。


「まぁよいわ、神様達は元より神に祈りを捧げる者達ならば精神は『友愛』に傾いておるものとして何ら疑ってはおらなんだのが不幸の始まりじゃ、ある施設では孤児院を持ち親の居ない子供達を手厚く保護し生活させておった、常に新しく入って来る子供達が居るのに一定の数から増減が殆ど無い事に疑問が浮かぶ、上の者に聞いてみれば『子供の居ない若い夫婦』などに養子に出すのだとか・・・なるほど理に適った話であるしのぉ神様達は疑う事をしなかったようじゃ。」


「そんな事より御婆様、空を飛ぶ船とは何だ?」


 部族の若者が声を上げるが。


「これこれ、話の腰を折るでない、科学の話はこれから出て来るのでな・・・まず神様達の人類と科学に対する見解は概ね良好であったはずじゃ、何せ身近な科学技術は人類の生活を豊かにするべく考えられて開発された技術が大半で、子供達が簡単に苦も無く使える技術じゃ、神様達も人類の開発する科学に期待を持ったのかもしれん、が疑念の始まりは些細な事であったと聞いたのぅ・・・ちぃと喉が渇いたのぅアダマンソルよ舞台の右側袖下へ茶と台を持ってきてくれんかの、皆にも話を理解する時間が必要じゃろうししばし休憩じゃ。」


 御婆の頼みに無言のまま溜息交じりに力無く準備するアダマンソル、話が大き過ぎて理解が出来ないようだ。


「神様方と言われてもあまりに自分達とは離れ過ぎていて皆目見当すら付かないはずなのでしょうが・・・天女様という女神様の側近だった方が自分の母親という身近に居る現実・・・お母様は本当に天女様だったの?」


 全て知っていて疑いすら持っていないのに思わずウラディナは口にしてしまい泣き出しそうな顔を向ける、その言葉にムッとした感情を隠しもせずに娘の疑念に口を開きかけたアーレス。


「これこれウラディナ、アーレス様を困らせるでないぞ。」


 自分の娘に不満を表そうとしたアーレスを見て御婆がとりなす。


「ふぅ・・・皆が考える時間をとも思ったのじゃが、あまり間を開けても良い事は無いようじゃし、続けようかのぅ、色々な宗教施設で下働きを続けながらヒト種の行動を観察しておった神様達が廃棄処分場の掃除を担当させられた時じゃった、まぁ廃棄処分とはいえ、そのままでは使えなくなった物を科学の力で分解して他の物に作り変えて再使用するという神様達も感心するような技術だった・・・のじゃが・・・掃除区間は地下に造られた廃棄処分場の処分槽周辺、二つに分けられた処分槽は鉱物用と生物用で処分槽周辺に散乱した廃棄物を処分槽に押し込みながら掃除して行ったそんな時に一人の神様は見て気付いてしまったそうじゃ生物用処分槽の片隅で蠢く薄汚れた金色の髪の少女、半年前に姿を見なくなっていた少女に、一緒に掃除をしていた他の神様を呼び処分槽へ降りて助け出そうとして抱き上げ固まる、少女は全身手術痕があり右腕以外の三肢欠損に心臓の鼓動すらやっと感じられるかどうかという状態に神様達は思考停止に陥ったそうじゃ。」


『他の皆はまだ元気だったけど、私が棄てられたから誰かが実験の対象にされてしまう、皆を助けてください。』


「神様に抱かれた少女は呟くように言って涙を流しながら息を引き取ったそうじゃ・・・それからの神様達の行動は早かったそうじゃ、元々悠久の時を過ごして来た神様達、その環境に生きる者として誕生してから死を迎えるまで一瞬の時を生きる動植物達にある種の敬意を持っていた、が・・・ヒト種、人類に対しては疑問、疑念が大きく膨らんだのじゃ、一旦天界に戻ろうと行動に移した神様達は他の神々にも呼びかけ、皆の力を一つにして人類の生態、行動、思考、時には天界の制約すら超えてでも急ぎ調べ尽くさねばならぬと判断したようじゃ、そして知るのじゃ創造神や他の神様達が大きく期待を寄せていた『ヒト種』とは?人類の本当の姿とは?」


 聞き耳を立てていた皆に考えさせる時間を与えてから、御婆はアダマンソルに目配せしてお茶を入れなおさせゆっくりと喉を潤しながらアーレスに声をかける。


「アーレス様、何も言ってはくださらなんだが間違いは無いじゃろうの?」


「大丈夫ですよ、それにしても話し方が上手ですね、やはり御婆様が語って聞かせる方が皆にはよろしいようです。」


「ふむ、では続きを語ろうかのぅ・・・神々が初めに調べたのはヒト種の進化と種族繁栄、子孫を増やして存続させる為に行った事などであり、最初の驚愕は基本的思考が『善行』を求める者は概ね優しくて物静かな者であり、周りの者に利用され迫害されて淘汰され『性善』的な子孫など残せないのである、何故?どうして?と神々は憤る、さらに深くヒト種を調べると『格付け』という上下関係に目を向けた、神々は『命は尊く全て平等』だと思っているのだが人類は違ったのだ、格付けで上に立った者は自分より下の者の命を生かそうが殺そうが勝手に決めれるし誰も咎めない、その最たる者が『王』という位置付けの者であった、科学を生み出す『科学者』という地位の者を優遇してはいるが開発が進まなければ簡単に切って捨てる、科学者は死に物狂いで様々な物を開発していくのだが・・・開発される物の殆どが人殺しの道具であり、その燃料とされるのが創造神が与えた星々の力であったのだ・・・ある王などは自分の悪政に反発した神を崇める宗教施設に多数の部下に命令して攻め立てて、星々の力を利用した兵器で施設を焼き討ちにし関係者は全て虐殺・・・まさに神をも恐れぬ所業である、神々の出した答えは『人類と呼ばれる種族は、悪意を持って善の者を殺し尽くし悪意の塊が子孫として悪事を重ね繁栄し続けた種族である』と帰結し、初めて神々に『滅ぼすべき』と言わしめた種族となった。」


 一瞬の静寂と溜息・・・少しづつ声が聞こえ瞬く間に騒然となった中アダマンソルが声を張る


「でも御婆様よぅ、あいつらつっちゃぁ御先祖様に申し訳無ぇが、滅ぶ所が未だにそこかしこで好き勝手悪さして迷惑かけてるんだがなぁ。」


「これこれ焦るでない、ここからが我等天眼族の発現の元となる事象の始まりなのじゃ。」

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