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天眼の宝飾師  作者: 広大
第三章 強者たれ 第一部 謎の夢と善と悪
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「またか・・・。」


 夢の狭間から意識が浮き上がる、休息の為の眠りがひどく疲れるのは何故か不思議に思う事も無くなった、脳が痺れるような感覚を伴い何時ものように目覚め・・・。


「また不思議な夢を見たな・・・。」


 そう呟きながらも夢の内容を反芻する、俺はこの夢の恩恵を受けているからだ、成人の儀を終えて独り立ちしてから見るようなった不思議な建物や異国の服を纏った人々、荒唐無稽な夢だが俺の術の開発にとても役に立っている、転移もその一つでこの世界に個人の術で転移など出来ないとされているのだが、俺は夢のおかげで転移術を開発する事が出来た、所謂時空魔法というこの世界には認識さえされていない魔法だが俺は試行錯誤しながら完成させた、尤も俺のように魔術属性が全て揃ってなければ無理ではある。

 俺が魔導士で良かったよ、この世界に干渉して術を発動させる魔術師や魔力を自己の持つ属性に変換させて発動させる魔法師はかなり居る、魔術だろうが魔法だろうがどっちでもいいだろう何が魔術協会に魔法組合だただの金集め集団だろ、まぁ内包する魔力にも左右されるが俺のような魔導士は少ないからなと呟く。


 今日の夢は戦闘訓練だったと思う、緑色の服を着た男達が草や木の枝らしきものを網の掛かった兜に差しタンタンと軽い音を出す武器らしき物を構えて動き回って居た。


「昨日の夢の続きか?昨日は小さな車輪を数個付けた鉄の馬車が火を噴いている夢だった、今日のあれはその携帯版か?飛び道具なのは間違いないが・・・。」


 離れた場所に設置した的に小さな穴が無数に空いて行くのが不思議で仕方が無い、この世界の飛び道具とは弓矢や弩砲、投石と投石用の機械等が主流で豆粒のような小さな物を飛ばす技術も魔法も俺は知らない。

 夢の事を考えて居ると外から声が聞こえて来た。


「アースお兄ちゃん朝だよー起きてる?シアお母さんが御飯出来たから呼んでらっしゃいって言われたのー。」

 俺は知り合いからアースと呼ばれている、はいはいと呟きながらカーテンを開け窓から顔を出す。


「今日はマイが呼びに来てくれたんだな、シア様にすぐ行くと言っててくれ。」


 ハーイと答えて手を振り走って行くマイカを見送ってから出掛ける準備をはじめた。


 婆ちゃんの知り合いという隣の教会の教母様に何かと世話して貰っている、元は娼館だというデカイ家に一人暮らしの俺は、食事とか一人じゃ無駄が出るでしょうと教母のシア様が言うのでお隣さんで飯を頂いている、ただ飯は納得行かないので一応日々の稼ぎの一部を寄付させて貰ってはいる、俺は魔石を錬成し元が魔石だとバレないよう宝飾品に変えてそれを露天販売している、この世界に魔石を錬成出来る者は居ないし俺は魔石すら錬成で作り出せる、俺は魔導士であり錬金術師でもあるのだ。そしてマイカは隣の教会にある孤児院の子供で四歳になる女の子だ、孤児院には男女合わせて十二人の子供達が居てシアさんと二人のシスター達が面倒を見ている。


 成人の儀を終えてから婆ちゃんが自分の身分を明かそうとしたのを俺が止めた、大泣きしながら婆ちゃんのままで居てくれと頼んだ事を守ってくれてる。


 婆ちゃんに連れられここに来た時はシア様が両膝を突き胸の前で手を組んで祈るような姿で迎えられて驚いた婆ちゃんが慌てて止めてたっけ、あれを見て今では婆ちゃんの本当の身分を知らなくて良かったとも思っている・・・だいたいスラムの外れとはいってもこんなデカイ家が用意出来るくらいには金持ちなのだろう、婆ちゃんも謎だが教会の人達も謎だ何せ他所では見る事が無い程の美人ときてる。色々思い出しながら隣の敷地に入るとシスター達の姿が目に入る。


「お早う御座いますシスターファニエ様、シスターセフィ様。」


「お早う御座いますアースさん子供達は皆礼拝堂で朝の御祈りを始めてますよ。」

「おはようアース君ってか今日は遅かったねぇ寝坊かな?」

「うわっ、もう始まってるの!?」

 そう答えて朝の礼拝に急ぐためそれじゃ後でと言い残しちょっとセフィ言葉使いというファニエさんの小言を背に走り出した。


 陽光教と書いて有る教会に滑り込んで静かに扉付近で片膝を突き祈りを始めた、この教会はシア様が愛の女神アステリア様を崇める為に立ち上げたと聞いた、以前シア様達に祀られているアステリア様の像にシア様が何となく似ていると言ったら大喜びされたが婆ちゃんも若い頃はアステリア様とそっくりだったんじゃないかと思ったのは秘密だ、この世界には色んな教会が有り祀られる神様も様々だ、前にセフィ様に聞いたら「他のは似非宗教!」と怒り出したので驚いた事がありそれ以後口に出さないようにしている、俺は神様と会った事も無いしどれが似非でどれが本当の神様か分かるはずもないのだが、何にしても名前が俺とは一文字違いの神様だからここらではアースと呼んでもらっている・・・子供達の祈りの言葉を聞きながら暫く黙祷して居ると静かな礼拝堂にシア様の優しい声が響く。


「本日の朝の御勤めはここまでです、朝食の準備が出来ていますから皆静かに食堂まで向かいましょう。」

 はーいと元気に返事をして子供達が歩き出し俺はその後ろをゆっくりと付いて行く。


 朝食を食べ終わり孤児院の裏庭で子供達とじゃれついてから教会の前迄来ると先程挨拶したシスター達が門の前で掃除をしていた。


「先程は失礼しましたファニエ様今日は何か有るのですか?」

 何気に教会内も綺麗だったし庭もかなり入念に手入れされ子供達も孤児院の敷地に居たしシスターが今は門の前で掃除している、不思議に思って聞いてみた。


「今日は教皇様がいらっしゃるの。」

「そうそうこの教会の一番偉い人が来るのよ。」

 セフィ様が駆け寄って来て相槌を打つのを聞いてから、ここに連れて来られた当初この教会について婆ちゃんとシア様に説明された事を想い出し。


「ああ、思い出した、教会の総本山が龍鳳山で教会本部自体はこの大陸の北側に位置するシンクレティ教国に有るんだよね・・・しかし、シア様が起こした宗教なのに一番偉いのが教皇様とかましてや本部が他国にあるとか何故か良く分からないけど、まさか国を跨いでやって来るとは大変そうだね。」


「教皇聖下よ、教・皇・聖・下、ちゃんと呼ばないと駄目よアース君、それに国を跨いでも来るんじゃない、なんてったってアー「セフィ!」


 何時も温和なファニエ様がセフィ様の口を手で塞ぎながら大声を上げたので俺は固まったままで。


「ファ・ファニエ様・と・突然どうかしました?」

 そう言うとセフィ様から手を放してから静かに言った。


「ロマヌス・ガルグイユ教皇聖下がお見えになられますのでアースさんも身形をきちんとされますように御願いします。」


「え?俺も?」


「アースさんはリア様から御願いされてここに居るのです、リア様からお預かりしていますので教会関係者として当然の事です。」


「・・・・・・わかりました・・・・・・着替えて来ます・・・・・・。」


 そう言ってから自分の部屋に向かう・・・婆ちゃんはシア様の知り合いってだけだよな・・・そう思い首を捻りながらもまともな服って有ったかなと不安になった、上等な服など持って無い俺は一番綺麗そうな服に着替え教会に戻る為歩き出そうとした時スラム付近には不似合いな一台の高そうな馬車が門の前で一旦停止しセフィ様の誘導で教会の敷地にゆっくり入って来た。


『あれが教皇聖下の馬車だろうか?』

 そう思って見て居ると外側を回り込み西の来客用厩舎に向かって行ったのを見て。


『あれ?聖堂正面に行かないのか?』

 そう考えていたら背中から畏怖を感じ門の方を向いた、門の前では綺麗な法衣を纏った壮年の男性と両脇で小柄な修道女(シスター)が目を瞑り祈りを捧げていた、シスター達は左右の門に掲げられたアステリア様のレリーフに手を添えて何かを呟いていたら中央で黙祷している男性が淡い光を発してその光が両脇のシスターに飛びそのままレリーフに吸収された。


『一体何が起こった?何をしたんだ?それにあの男性は教皇聖下だろうが・・・あの佇まい、間違い無く俺が今まで会った事が無い程の強者だ、それに魔眼を開放していないのに彼の周りには大気が揺らめく程の力が見える。』


 俺には一年近く見続けた夢の知識が膨大に有る、その中に魔眼という物が有り俺はその魔眼持ちだ、この世界には魔眼持ちは確認されてはいないはずであり、俺は闘気や魔力などが魔眼開放で可視化出来る、夢の知識ではオーラとか言ったか、そして魔眼を開放して居ないのに聖下から白いオーラが見えた。


『道理で教皇聖下の来訪なのに人数が少ないと思ったよ、これ程の強者なら護衛など居なくても問題無いからだと納得だな。』


 何せ両隣に居るシスター達も相当の魔の使い手だろうし、その辺の魔物なら瞬殺で盗賊など逆に不憫になるくらいの強者だろう。


『シア様の教会って神父か修道女の採用基準に戦闘能力とか入ってないよな・・・ファニエ様達も魔導師だし。』


 そんなアホな事を考えて居ると御者台にいた男性が神父の衣装に着替えて歩いて来るのが見えた時、教会の勝手口から顔をのぞかせてセフィ様が手招きしているのが見え俺は慌てて孤児院の裏手に回りセフィ様の元に向うため走り出した。


「遅いよ、アース君。」

「遅れてすみません、それなりに綺麗で清潔に見える服を探して手間取ってしまって。」

 そう言うとセフィ様が俺の服装を眺めてから。

「まぁまぁかな、だから教会に居る時は修道服を着ればいいのに・・・それじゃシア様と姉様が待ってるから急ごう。」

 はい、と返事をしてセフィ様と歩き出した。何気にセフィ様は俺を教会の関係者と位置付けして修道仲間にしたがる。


 聖堂に入るとシア様達の側まで行き遅れた事を謝罪しようと口を開くとファニエ様が人差し指を口の前に翳したので無言で頷く、そのままシア様の後ろに行くよう目配せしてきたのでそれに従い皆と同じ様に片膝で待つと扉が開かれた。


「今日という良き日にロマヌス・ガルグイユ教皇聖下がこの地の教会にいらして下さいました事をアステリア様の御導きとして祝い歓迎致します。」


 シア様の鈴の音のような綺麗な声が響き渡る。


「歓迎御苦労、なればアステリア様の為に祝福せねばならぬな、キャル、エステル。」


 教皇聖下の後ろにいたシスター達が教皇聖下の言葉で聖堂中央の両脇の壁に掲げてあるアステリア様のレリーフに手を翳し教皇聖下と共に祈り出すと・・・門で見たのと同じように淡く光出し何かが飛び出して我々を包み込んだ。


『何だこれは・・・不思議と嫌ではないし体が軽くなる・・・。』


 祈りの態勢のまま自分の体を精査する、血脈が綺麗になったような・・・それだけじゃない、魔脈や体全体の機能が活性化されているのか?祝福とはいったい・・・考えに没頭していると・・・ス君、アース君と俺を呼ぶ声が耳に入って来た。


「アース君、皆向こうに行ったよ、居眠りしてたんじゃないでしょうね。」

「セフィ様・・・あーちょっと考え事をしていて・・・談話室に行ったの?」

「教皇聖下が食堂と孤児院を見てみたいって言ってたからそっちじゃないかな、教会本部には孤児院無いし。」

「食堂とかなら向こうにも・・・俺も行かないと駄目?」

「ハイハイ、良い子はお姉さんに付いて来る、食堂から行って見よう。」

 分かりましたと言ってセフィ様について行くのだった。

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