生残り
~西の帝国ズルワの王城地下最深部~
数人の男達が執事姿の男に疑問を投げ掛ける。
「なたは誰だ!ここは我等しか知らぬはず!」
悠然と頭を下げながら執事が答える。
「これは失礼、私は女神様の御使いでこちらでは『龍神』と呼ばれる存在、女神様の命により貴方達天眼族の皆様には女神様の元に御連れ致します、天女の墳墓がこんな所に繋がっているとは思いもしませんでしたまさか昔の天眼族の飼育施設とは・・・では急ぎますので皆様準備は宜しいですか。」
集団の長らしき男が声をあげる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ何が何やら訳が分からんぞ!女神様?龍神・・・様?いったいどういう事なんだ。」
「その説明は向こうで致します、では。」
龍神がそう言い終わると集団は転移の光に包まれた。
そんな事がこの星の数か所で起きていた頃エクシアは簡易寝台の上に座り足を地に付けて龍神殿の連絡を待つと何かを囁く声が聞こえた。
「キャル・・・居るの?」
仲間の誰かがキャルを探してここに来たようなのだが返事を返さずそっとテントの出入り口を開けると二人の少女が立っていた、キャルの記憶を辿るとファニエとセフィの姉妹だと気付く。
「何だ居るじゃないの、キャルからの石の波動を感じなくなったとセフィが騒ぐから探してたのよ、私と違って妹はキャル並みに感応力が高いからね、で?どういう事?羽衣の力が戻るなんて有り得ないしね。」
どう説明しようかと悩んでいると龍神殿からの声が頭に響いた。
『付近には誰も居ないようだし彼女達は保護対象者だ、もう一人と共に説明するからと言って世界樹の側に連れ出せ私が全て説明しよう。』
そう言われたので彼女達を世界樹の側まで連れ出す為小声で話す。
「誰かに聞かれたらマズイからここでは説明出来ないのよ、それにエステルにも一緒に説明したいしねお願いだからエステルと共に皆で世界樹の側まで来て、そこで待ってるから。」
そう伝えて彼女等が出て行くのを見送り暫し経つと龍神殿からの指示が来た。
『エクシア殿はそのままここで待機を願う、アステリア様が遂にこの星への御降臨を決意成されましたので私の方でもどのように行うのかアステリア様と話し合わなければなりませんので。』
驚きのあまり言葉を失って居ると。
『それに彼女等も心を弄られて居るようですしホメロ様から女神様の所に御連れして術の解除と今後の説明をするからとの事ですし、エクシア殿にはこの場で彼女等が居ない事での騒ぎが起きないように御願いします。』
『わかりました、周囲を探りながらこのままこの場で待機ですね。』
そう答えると『では。』と龍神殿の気配が消え私の中に居る龍神の分体が囁く。
『ホメロ様の意向でキャル様からの情報と私の探知で他の天眼族も次々確保して新星に御連れしています、なおエクシア殿がいくらか私の魔力波動に馴染んで来ましたので分体の量を増やして貰いました、これで連絡もかなり楽になりますし龍脈と繋がっている私の魔は浄化前なのでヒト種には毒ですがエクシア殿は元々天女、瞑想で禊と同じ効果を齎せるのですからもう少し馴染んで量を増やせば龍の力も使えるようになりますよ。』
そんな事ができるのかと驚いてから。
『頼りにしていますよ。』
そう言い終えてから簡易寝台へ腰かけて待機の状態で瞑想を始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私はキャルに言われた事を考えながら妹のセフィを引き連れてエステルを探す。
「取りあえずエステルのテントに行って見る?」
そうセフィに声を掛けると少し考え事をしていたようなセフィが。
「少しおかしいよお姉ちゃん、私達に認識阻害の術が掛かってるような気がするよ。」
「は?何それ。」
驚いて少しだけ声が大きくなってしまった私に。
「しっ声大きいよお姉ちゃん、あっち見て。」
セフィが小さく指差した方を見てみると歩哨中の近衛隊の副隊長が見えた。
「近衛の副隊長さんは魔術系でかなり優秀なはず、なのにこちらに気付かないのはおかしいし私は感じるんだ何かが私とお姉ちゃんに纏わり付いた状態だと。」
「それが認識阻害の術って事?」
「そう思う、誰がそんな事したんだろうねキャルお姉ちゃんはこんな術使えなかったよね、ましてや羽衣の上に術を掛けるなんて・・・いくら効果が薄らいでいるといっても私達の先祖の天女様とかじゃない限り考えられないよ。」
セフィの『天女様』の言葉で心臓が跳ね上がる。
「そんな・・・まさか・・・ここで二人で悩んでても意味は無い、急いでエステルを探して世界樹に向かいましょう。」
急ぎ足気味に歩き出してエステルのテント付近まで来た時セフィが私を止めた。
「エステルの石が反応してるけど・・・様子がおかしいよ・・・もうちょっと近寄って様子を見てみないと。」
感応力の高いセフィの指示に従いゆっくりとエステルのテントに近付いて行くとエステルが突然テントから飛び出して私達の方に向かって走り出し私達の所に着いた途端。
「ファニエさん達は今迄何処に行っていたんですか?何となくですが皆さんが居なくなったような気がして不安が増して来て・・・嫌な予感だけが頭を過ってしまい・・・怖かった。」
認識阻害が掛かってるはずなのに何故テントの中から私達が分かったのだろうと思いながらエステルのテントとキャルのテントは村を挟んで反対側なのを思い出して。
「ごめんねこの辺とは反対側のキャルのテントに居たのよ。」
そう言うとエステルが安心したような顔で深呼吸しながら落ち着こうとしている姿のまま脱力したのか地面に座り込んだのを見てセフィがエステルに。
「キャルお姉ちゃんが皆で世界樹の所に来てって言ってたのだからエステルを呼びに来たの、エステル一緒に世界樹の元に行こう。」
エステルに手を差し伸べながら笑顔で話しかけるセフィを見て『出来た妹だなぁ』と思いながら沈みそうになる自分を振り切り辺りを警戒する。
「もうエステルも大丈夫だから行こうお姉ちゃんキャルお姉ちゃんが待ってるよ。」
「そうね誰にも気付かれてはいないようだし急ぎましょう。」
そう答えてから真っ直ぐ世界樹を目指し歩き出した、世界樹が見える距離まで急ぎ足で来たのだがセフィの力も有るだろうが途中不思議な程誰にも会わなかった、世界樹の側に誰も居ないのかと思った時陰から執事が現れ頭を下げ静かに話しかけられた。
「突然で申し訳御座いませんキャル様の御仲間の方々ですね御待ちしておりました、私は女神様の御使いの龍体でこちらでは『龍神』と呼ばれています、キャル様は只今女神様の所に居りますので皆様も女神様の所へ御連れ致します、それから創造神様の命により皆様の御家族や親類縁者の方やこの星に居ります全ての天眼族の方々を探して私の分体達が保護し女神様の元に御連れしています。」
執事の話を聞いて理解が追い付かず混乱している、そして皆も私と同じように固まっていると。
「皆さんが長くここを離れてると怪しまれそうですので強制転移させていただきます。」
そう言い終わると同時に私達は真っ白な光に包まれ一瞬感覚が切れたような気がした、そして光が収まり目を開けると執事の側に見た事も無いような『神』と思われる翼を持った人が居た。
「名も無き新星にようこそキャルの仲間の方々、私は創造神のホメロまずは先に到着された御家族や御仲間に挨拶でもしていてい下さい、君達が最後なので後で全員に説明しますので、では後程。」
ホメロ様はそう言い終わると踵を反し歩き出した、入れ替わるように組織の仲間達が駆け寄って来たのだった。
年度替えで仕事が忙しくて書くのが遅くなりそう。




