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天眼の宝飾師  作者: 広大
第二部 天界の禁忌と更なる禁忌
19/25

脅威

 キャルの悲痛な願いを聞きながら私は女神となってからの自分に失望しそれでも願われて女神になってからの自分を見つめ返し気付く、私は元人間としての愛と共に先入観や思い込みなど女神として善であり何事にも中道を貫けぬ人間の心が強かった事に、人間の心を取り込んだ女神になれず人間がただ女神になっただけだった事に、だからこそ件の星の管理者としてそしてあの星の女神としての最後の仕事をやり遂げねばと決意する、ヒト種をも導かねばならぬのだがこの件が終われば星の管理者から外されるはず、なれば少しでも道を示す事が出来ればと考えながら天眼族の保護と一緒に何とかしたいと思い決意する。


「ホメロ様、私は最後にかの地に隠れて降りるのではなく降臨してヒト種と会話をしてみたいと思います。」


「何と、地上への降臨は管理者みちびきてとしての当然の権利ではあるが・・・アステリアがそう言い出すとは思わなかった・・・わかったやってみるが良い。」


 ホメロ様が少し驚いたように発した言葉に「有難う御座います。」と返すと落ち着いてきたキャルにホメロ様が話掛ける。


「キャル君どうだい落ち着いてきたようだしもう少し君達の事詳しく聞きたい、でないと今後の事が決められないこれでも天眼族の生き残りが居ると知って嬉しく思っては居るんだよまぁ個に肩入れしては創造神としては失格だろうがね、禁忌禁則も色々有るが今回は無視だからな、今は時間が無いどんな事でも良い現在の君や天眼族の事を知っているだけ話してくれ、アステリアもキャルを開放しなさい龍体よ彼女をテーブルへその後回復を。」


 ホメロ様に言われてゆっくりとキャルから離れて立ち上がりキャルにも立ち上がるよう促し背に手を添えてテーブルの方へ背を押しながら歩き出すと龍神が先にテーブルへと向かい椅子を用意し湯を沸かしだす、テーブルに近付くと小さな声が聞こえた。


「あ・・・え?・・・何?・・・」

「どうだいキャル、心が軽くなったかい?・・・その謎が知りたかったらテーブルの上のバケットを覗いてごらん。」


 ホメロ様に言われてキャルがアステリオの眠っているバスケット私と一緒に覗き込む、アステリオの左手が少しだけ光ったように見えたが・・・ホメロ様がアステリオの両の手の平を上に向けて考え込む、そしてキャルが考えを口に出す。


「え?子供?天眼族の?でもちょっと違う?」

 そこに龍神が声を掛ける。


「アステリア様キャル殿席に着いて少し落ち着きましょうか。」

 そう促し紅茶を用意し始めるとホメロ様が顔を上げて指で上を指しそのままその指を口元に当ててから話し出す。


「紅茶を飲んで落ち着いてからで構わないが、アステリアは皆に羽衣を纏わせ龍体は今のでわかっただろう私はテーブルを中心に結界を張る。」


 私達は龍神の入れてくれた紅茶を飲み無言で一時心を落ち着かせてから行動を開始する、私は皆に羽衣を纏わせた。


「ここでの会話は誰にも聞かせられない内容になるので念が漏れられては困るから羽衣と結界で隔絶させて貰った、ではキャルよ体調はどうだね。」


 キャルがホメロ様に問われ驚きながらも答える。

「え?私?・・・そう言われれば心も体もとても楽になってます、声を張り上げたせいで痛かった喉もいつの間にか痛みが消えて普通に喋れるようになってます。」


「やはりな、この子はアステリオという名で天眼族の赤子だ・・・私の考えではこの子は天眼族・・・イヤ生ける物全ての進化において最高到達者なのかも知れない、キャルから吸収した悪の想念の『魔』を分解して悪の部分を浄化し霧散させて残った力から自分に必要な分を取り込み残りを空中に放出したのだその左手からね、実働を見せてもらうまで分からなったよ、そしてそれをバスケットを覗き込んだキャルが自然に吸収したのだよ何せ元々は君の持って居た物だし、キャルは波動や波長が同じだったからあまりにも自然過ぎて気付かなかったようだしね、今は赤子だからこそ無意識にやっているだけだが成人してこの術を自分の意志で使いこなせるようになったらどうだ、我等創造神が創った星々に生けるモノには世界樹を除き長さは違えど寿命がある、彼はその「死」という自然界絶対の法則を打ち破れるのだよ自分の意志で、確かに魔術には蘇生術もあるが蘇生術は寿命という概念から外れる事は無い、アステリア達には前にも言ったと思うがアステリオの心臓は生ける物全てが持つ自己生命力で動いているわけでは無いと、光の力で動いていると・・・既にアステリオには・・・恐ろしい事だが彼には寿命が無いんだよ、アステリオは左手から生ける物全てに必要な生命力を出す事が出来るんだよ、私が前に調べた時は分からなかったが左手に光のエレメンツが超高圧縮され目に見えぬ程の器官が備わっている、そしてその光のエレメンツは全身に極細な線で繋がれているのだが・・・右手が問題だ、右手にも全く同じような器官が備わっているただしエレメンツは闇・・・彼は両極のエレメンツを全身に張り巡らせた気脈に絡みつかせるように張り巡らせているのだ、まぁ気脈の内壁に残りの四つも通っているようだが・・・」


「ちょっ、ちょっと待ってくださいホメロ様、アステリオは全てのエレメンツを保有してると?そんなの見た事も聞いた事も無い、対極に在る光と闇ならなおさら無理でしょうし私がアステリオを儀式前に見た限り全く感じませんでしたよエレメンツの気配、後天的に備わるものでも無いはずなのに・・・」


「それについてはアステリアよ少し聞きたいのだがあの事件の時の転移は時空転移か?そうではないのだろう私は君の頼みを聞き星を生み出したしかしどう考えても君の転移に間に合ったとは思えない、いくら女神とはいえ転移先の座標を指定できたとはとても思えないそしてあの時に感じたアステリアの力の開放は異常だった、強制量子転移を使ったのではないか?あれは我等神以外には禁忌の術となる、それをアステリオに使ったのだろうでないと私が立てた仮説に綻びが生じてしまう、どうだねアステリア。」


「あの時村の皆が私に対してアステリオを頼むと笑顔で言われて・・・とにかく回避が先だと思い無我夢中で力を開放してしまい一旦空へ転移して星々が落ちるのを見て・・・アステリオを戻してから時空転移で新星へ・・・あ、一度目の転移は量子転移だった。」


「やはりな、量子転移が神以外に禁忌とされる理由がわかるかアステリア、それも神とて自分自身以外に使ってはならぬとされる程の理由とは・・・天界は全て神域とされ神に連なる者以外は入れないそして全ての者が光の魂だけの存在、しかし光の魂だけでは何を行うにも障害が多いんだ紅茶を飲むにもカップが必要だろうなので神が創った器に入っているだけで器自体には光の魂の保護と個の識別後は一部感覚器官の分散以外さほど意味は無い、量子転移は魂以外は霧散状態になる「剥き出しの魂化」なんだよ神においては魂だけなら転移じゃ無く「念移」で移動できる、そして移動した先で器を集めて再構築すればいいそれが一瞬で出来るのが量子転移だ、それを他の者に使った場合は強制量子転移となるのだが・・・アステリオは我々とは違う「天眼族」という魂と共に生身の肉体という器を持つ固有種族という事だが・・・アステリアよ天女が天界に戻らぬとして下に降る時何をするか知ってるだろう、星々には世界樹によって魔の悪意が浄化されるがその浄化での残りカスが放出される我々が『穢れ』ヒト種は『瘴』と呼んでいのだが、我等が天界に居る時の器では長時間穢れに曝されると朽ちはじめるまぁ光の力で修復されるが天界との縁を断ち切り下に降れば修復が出来なくなる、その為に新たな器を創り魂を移す新たな器は動物達と同じ生身の肉体、その肉体に魂から思考や五感を器官として完全分散そして魂も内臓に分散させ完全同調定着、その時魂の一部が心の臓に融合定着し命となるそうなった器をみかげと呼び死を迎えぬ限り魂の分離は無理となる。」


 私は何事も無く普通に強制量子転移で再構築できたアステリオを見て。

「え?アステリオは分離し再構築されたはず・・・」


「ならばアステリアよ転移の時何を思った、女神となった時思考速度は人間の何十倍も早くなり並列化もされているはず、あの時何を考えたか思い出せ。」


「あの時私はこの子が天眼族唯一の生き残りであり村の皆から任されたからには真っ直ぐ育てねばと・・・イヤ・・・違う、成長するにつれ自分の置かれた立場を理解し始めそしていつかはアステリオに真実を伝えねばならぬ時が来た時、歪まぬように強く有れと私が人間だった頃好きだった人のように弱者に対し優しく紳士であれと・・・他には・・・物語に出て来る英雄のようにと・・・何人なにびとをも寄せ付けぬ隔絶された力を、敵対者に何をされても傷付かぬ強靭な肉体を、誰も叶わぬ程の知性をそして全ての生ける者の光と成れる王の資質をと・・・」


「何と・・・何という事を・・・この世界においての禁忌とかそういう問題じゃ無くなってしまった、アステリア君の願いが全て叶えられた、アステリオは転移で再構築されたのでは無い一度死んで君に生み出されたのだ君の思いのままに、私の仮説ではもう一つ鍵が必要なのだが・・・心の臓と魂の一部は融合による定着だから分離する事はできないし死亡してからも融合状態から魂だけ抜けるには時間がかかる、アステリアが転移を発動させた時アステリオの魂は一瞬で一つの魂となったが同時に心の臓自体も魂の一部として取り込まれ器としての肉体はアステリアが全て創造したのだ、その際星落としメテオの影響も相まって全てのエレメンツを内包し隔絶された力を持ち、気脈と気嚢を持つ事で強靭な肉体を体現、世界樹と同等の力持つ光の心の臓と生ける者全ての生死を握る両手を持つ事で英雄であり絶対の王となった、アステリアよ知性は言わずともわかるだろう・・・これ程の力持つ赤子だこれからどうなるか分かるであろうアステリオは神である私からも力を奪っているんだ。」


「そんな!ホメロ様いくら女神でも神々に影響を与える程の力持つ器など創れるわけが無い!」

 椅子から立ち上がり抗議してから冷静に考え静かに座ってからアステリオの寝ているバスケットを見つめながら問う。


「まさかこの子を・・・。」

 最後まで言葉にできなかった。

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