アステリオ
私はアステリア様との念話を終えてからホメロ様の世界樹再生への結界がもう少し時間が掛かりそうなので龍神に問いかける。
『龍神殿、潜入してしまったらアステリア様に念話を飛ばすのも暫くは無理でしょうから作戦が成功したら御伝えして頂きたい言葉が御座います、先程の話を龍神殿も聞いて居たのでしょうしこう御伝えください。
アステリア様は私達に愛を教えヒト種への生贄に私達天女を送ったとおっしゃいましたが、私の先達の天女は騙された事を知らなかった、だからこそ相手に愛を感じ子を成し天寿を全うして天に召される迄幸せを感じていたのだと思います。
アステリア様は私をこのような形で送り出す事を謝っていましたが、この潜入作戦が終われば自由に出来るようになる、私は先達のお墓を探して回りたいと思ってますし、そうして私でもヒト種の中で生活していればもしかして愛に巡り合うかも知れないと明るい未来を夢見ているのです。
だから謝らずに居てください、悲しまずにいてください、皆にサクラを愛でながら笑顔で愛を説いていたアステリア様で居てください。 そう御伝え下さい。』
そう言ってから私は目を瞑りローブ仕様の羽衣のフードを目深に被った。
『承ったアステリア様には落ち着いてから伝えるよう約束しよう・・・ちょうどホメロ様の方も終わったようだ、こちらも龍脈を再生させた世界樹に繋ぎ件の賊女の側にも伸ばし終えた、ホメロ様時が来たら開始の合図を。』
『うむ世界樹再生に少々疲れた暫し休ませろ、それよりエクシアか良い名を貰ったなこれからの天女達の新たな未来を切り開いてくれると信じている。』
『有難う御座いますホメロ様、エクシアというこの名は今迄皆と一緒にアステリア様から賜った数限りない程の思いと言葉そのなかで唯一私だけに向けて頂いた思いの結晶、魔力が体に馴染み天女の波動を自然に抑えられるようになるまでどれだけかかるのか分かりませんが、この名と共にアステリア様の為何事にも立ち向かえると確信しています。』
私は心残りの無いよう全ての思いを吐き出して瞑目し時を待つ。
『エクシアよ最終確認だ君の任務のな、今回の行動は特殊だったんだ禁忌破りを何度も重ねた事は最初の一部を除いて罪には問われない、アステリオの儀式が終われば前と同じに我等天界の者や龍体達も禁忌の法則に縛られるだからこそのエクシア、君の任務が重要になるんだ龍体の禁忌に触れない行動限界を知ってもらうよ龍体はこの星の地に縛られるそして世界樹を除く動植物全ての個々に対しての干渉は禁忌とされる、それでも一瞬だけ個の頭を覗く行為には必要悪として目を瞑ってはいるが、まぁ個々への干渉は我等も同じだがエクシアよ君はそれに縛られる事は無い縛られる事が有るなら当たり前だが悪を行なってはならないという事、特にヒト種が決めた悪を行ってはならないんだがまぁその悪行が善に繋がるなら別だ、自分の判断で成す事を成せ潜入してこの事態を起こした者達の全貌を暴け、君には龍体の一部を体内に宿させて貰う単なる連絡用だ天女という個体への行いだから禁忌には触れない、何か行動を起こす場合地に触れれば龍体が反応を返す何事も相談しろ個の判断は特殊な状況を除き認められない、潜入してからは殆ど連絡は出来ないと思って貰おうまぁ龍体が補佐するし要員も増やす予定ではある、アステリアの願いは分かって居るだろうアステリオがこの地に降り立つまで独自行動でヒト種が暴走しこの星が崩壊しないよう頑張ってくれ、では行動を開始しようエクシアは私が作った結界の道を進んで世界樹の側に移動してくれ。』
私は小さく頷いてから世界樹へと小道のように半円筒に延ばされた結界内を走り出した。
『ホメロ様私も行動を開始します。』
龍神が龍脈を伸ばして瑠璃石を持つ賊のテントに侵入し魔術師の思念と記憶を吸収しそのまま世界樹に魔術師事強制転移し世界樹の元で悪の思念を浄化し放出を制限してから瑠璃石をホメロ様に飛ばしてエクシアを待つ。
私が世界樹に到着すると龍神殿が私の頭に手を置いた。
『少しだけ我慢してくれ。』
私の中に彼女の記憶が生い立ちから今回の事まで全ての情報が入って来るまるで自分の事のように思えるほどその中に『天眼族』の記憶も有った、その後体中に激痛が走る魔素と私の持つ光の力が強制融合させられている、いくらか痛みが減った頃に龍神殿が私に形態変化を起こさせ一時的に賊とそっくりにされる、全てが終わると龍神殿があわてるように手を放して説明を始めた。
『まずエクシア様は賊の記憶に飲まれぬよう自我を強くお持ちください、内包した魔力を馴染ませる為に暫し休息を、問題はこの賊の女だが・・・悪の思念はかなり強いのだが思念の方向が廃人にするのはマズイか、ホメロ様賊の思考共有して頂き判断をお願いします。』
『この者キャルという名か、隷属紋そして天眼族だと・・・これほどの力が有って奴隷なのか、この者の悪の思念が殆ど恨みとはな魔力が高いために奴隷にされたのか、この者の心根は善なのだな・・・龍体よこの者を連れて龍鳳山に飛び降臨して見せ全て説明してこちらの協力者にせよ、隷属の紋も主導をこちらにエクシアとの入れ替わりは予定通り行うが何か有った時の影としても協力できよう。』
『エクシアよこの先の事は龍体と共に行動せよ私は急ぎアステリアの元に行き儀式を行わなければならない。』
座って休んでいると龍神殿が目の前で賊と共に消えホメロ様が彼女を仲間にすると私に説明してきた後、そう言い残して転移して行った。
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「瑠璃石は手に入れた、今直ぐ逆星読みを始めてくれ。」
ホメロ様が現れそう私に言ってからアステリオに手を翳した、私は言われた通り瑠璃石を受け取り瞑想を始めるこの星の位置を変更する場所を探るが星占術が巧く行かない、何かに妨害されるように感じ何度か瞑想し直したが駄目だった事をホメロ様に伝える。
『少し待てアステリアこの子の体の詳細が分からぬ星々の影響が強過ぎて特異質が多く解読に時間が掛かる、龍体やアステリアの側近達にも詳細を知らせておかねばならないから皆に念話を飛ばしたまま調査する、まずは頭からなのだが脳幹の上部に解読できない器官が有る、これが目の一部と心臓にも繋がっているこれは雲母?が生態性質変化し三次元多重化して脳の器官の一部としたものらしいが原因が掴めぬ。』
『それは私がアステリオに儀式前にあげた桜石かも知れません。』
『桜石が雲母化したのか、なるほどこの器官は脳の補助器官のようだがこれ以上は分からんな、次は瞳なのだが色が固定されていないのだこれもよく分からない、次は心臓なのだが普通のヒト種の心臓とはかけ離れて居る拍動が自然生態によるものではないのだアステリオの心臓は光の力で動いている光の心臓だ、そしてその周囲に世界樹と同じ性質の外殻がある、次は宝石部だが多重化している核は宝珠で外周には光の力が圧縮され凝固寸前で流体化し核として固まる前の宝珠と交じり合っており、これは儀式で固めないとどうにもならんまぁ核の宝珠は賢者の石なのは間違いない、血管は血と共に龍脈と同じで魔力が流れ付随するように気脈が有り心臓と宝珠両方に繋がっている、両の手の平にも何か血管と気脈の結合した謎の器官が、しかし光の心臓とは・・・そうか光か!星占術では無理だ太陽星占術でなければだから失敗したのだな、アステリアよ太陽星占術に変えて逆星読みを頼む。』
私は光の心臓と太陽星占術と聞いて驚きながら納得もしていた、まさか太陽星占術とは・・・この子は全ガーデンと十二方全て持つというのか、あの時何故勝手に儀式が始まったのか星の時系列がズレていたのをアステリオ自身が補正したのだ、そして術を行使するのに自分の星占術者としての力だけでは無理と判断したウラディナはアッソルを呼び術の底上げと並列を図ったのだならば。
『ホメロ様この石はアッソルと同等で太陽星占術を行うならウラディナの石が必要になり術者も足りません。』
『何と・・・ええぃ!何とかする、待っていろ。』
そう言い残してホメロ様が消え私は溜息をつきながら椅子に腰掛けアステリオを見つめた。