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天眼の宝飾師  作者: 広大
第二部 天界の禁忌と更なる禁忌
14/25

ホメロの決断

「ホメロ様、私は女神を辞めて全てを捨てあの星に降り立ちたいと思います。」


「おいおい、戻った傍から何を言い出すやら、アステリオの事もまだ何も決めていないのに、飛躍しすぎだぞここで龍体を待ちながら心を落ち着けなさい。」


 アステリアの状況をみたホメロは即決して念話を飛ばす。

『龍体よ済まないが一部こちらに寄越してアステリアを落ち着かせる手伝いを願う。』


 所謂『丸投げ』である、如何な創造神とはいえ男神『覚悟を決めた女に弱い』どんな世界にも普遍の理は存在する。


「それでは美味しいお茶を入れますので暫し寛ぎませ。」


 突然兎人族のメイド姿で現れた龍神が同時に喋った後ティーカップを翳して『うむ、染み一つ無いな』などと言いながらお茶の準備をし始めた。

 中々の速さに驚きながらも神の威厳に関わるためそれを億尾にも出さずにホメロが龍体に話しかける。


「魔力の収集にどれ程掛かりそうだ?」


 おおよそ二週間かそれ以上掛かると思って居るホメロとしては、なるべく早くに問題解決を図りたいがために聞いた。


「ああ、ホメロ様遅くても明日の朝迄にはこの星に必要な分は集め終えます。」


「はぁ?」


 神の威厳も何も消し飛んだような声を上げ聞いた。


「どういう事だ、いくらこの星が小さいとはいえ、件の星から魔力を集めるには半分近く集めて来なければならないはず、一気に集めては混乱を来すそんな事を私は認めるわけにはいかないよ。」


「ああうえの方達には言っておりませんでしたね、我ら光の力の集合体は同じ思考の種を頂いた事で『思考を共有』出来ています、ですので魔力の受け渡しが出来る範囲で協力して貰っています。」


「そうだったのか、ならば急いでこの星の環境をどうするか決めなければいけないね。」


 アステリアの方をチラリと見やり、思考の共有という驚きの現象を無視して、アステリオの為の話に軌道修正を試みる。


「あれ、そういう反応?うーん・・・まぁアステリオ最優先の考えには同意なので突っ込むのは諦めるけど。」


 思考の種の進化の自由度の高さに第一世代の創造神達に向かって文句を言いたい気分になりながらも、何事も無かったように聞き流すホメロ、ニヤニヤしながら言葉を待つ疑似メイド、暫しシュールな状況が続いたがアステリアがお茶を飲み少し落ち着き言葉はないが和みの空気が漂うなか、暫くニヤついていたメイドが話し出す。


「あの時アステリア様の要望通りに村民全ての思考を読み取っておきましたが、この星にあの村を再現させたのですから器を創造して貰い疑似人格を植え付けるのですか?、あとホメロ様に補足しておきますが、私の性格がこうなのはホメロ様の決定ですから文句が有るならご自分にどうぞ。」


「ちょちょちょっ、ちょっと待て!俺が悪いのか?意味が分からん!」


「あー、これは説明が必要ですかね、では女神様お願いします。」


 龍神が無茶振りの上に丸投げという高度な技を軽く受け止め。


「ホメロ様が私を創造なさった時の感情に左右されたのでしょう、龍神は私の願いを叶える為の補佐として創り出されたため、どの星の龍神もそれぞれ仕える女神の思考に近くなるでしょうね。」


 暫し考えたホメロが。


「あの時か、私が星創りが楽しくなってきた頃だな、先に創造した星々の思考の高い動物種が夢を見て愛を語らいながら繁殖しているのを見ていて、嬉しくて楽しくて・・・そんな時愛を育む女神としてアステリアを創造したんだが、そうか済まない事をしたな。」


 情が深い女神にしてしまった事を嘆き、その思考と繋がって近くなる筈の龍体がアレなのが全く分からないホメロが、頭を切り替えて次は何をしようかと考え確認を取る。


「さて、皆揃ってアステリアも落ち着いたように見えるな、これからの話をしよう、私はアステリアの願いを聞いて村と村の住人達全てを記憶している、アステリアはアステリオの為に何事も無かった事にして全てを再現して育てたいのだろう、村は再現したが器は一体一体創らねばいけないので時間がかかる、器に入れる記憶は龍体に頼んだのであろう?どうなのだ。」


「はい、ホメロ様のおっしゃられた通りです、あの時は時間も無くそれしか思い浮かびませんでしたし、あの子を育てる環境を調えねばと・・・私があの時救えるのはアステリオ一人だけだと判ったので。」


 悔しさを滲ませながら語るアステリアの感情の膨らみに気付いたホメロが話を逸らす。


「ならばその考えを率先するのが得策、アステリアはアステリオの・・・チョッと聞きたいのだが、この子の名付けはアステリアか?どう考えても一文字違いとはなぁ、まぁ良い、村を再現させる事は同意したので創り上げよう、その後の運営はアステリアの仕事となるんだ今のうちに良く考えて置いてくれ、それから龍体は器への記憶の定着にどれほどかかるのか、何か代償が起こりえるのか聞かせてくれ。」


 アステリオへ名付け親にまでなっていたアステリアの思い入れの強さが、彼女の感情を乱している事に納得しながらどうするべきかと考えながらも事を進めるホメロ、そしていつの間にやら空気が読める龍体に期待を寄せる。


「話しをする前に一つ願いが御座います、この星も私が恒久的に管理するには些か力が不足しています、光の力の補充をお願いします、この星の地脈の龍脈化に世界樹の魔への順応に私の力の大半を使って居ます、あのゴミ虫・・・イヤ、クズ共・・・イヤイヤ、ヒト種の居る星の維持管理の力が不足しています、まぁ絶滅しても嘆く輩は居ないでしょうがね、この星にかの村を再現するのに私の方では準備はいりませんよ、器さえ準備して頂ければ最後に読み取った意識を定着させられます、それから私はアステリア様の要請であの村のその後の状況の確認に手を貸しています、その辺りも考慮して頂ければと、宜しくお願いします。」


 それであの最初の言葉か、ホメロとしてはアステリアを落ち着かせるべく時間を与えれば少しは落ち着くかと思ったのだが間違いだったと気付くがもう遅い、なれば何を見て来たのか知らねば事ここに至っては答えが出せない。


「龍体よ何を見て来た。」


 その言葉を聞いたメイドはアステリアに目配せして一言。


「女神様が報告するべきです、その思いの全てを言葉に乗せて。」


「そうね、私が見聞きした事を報告しますね私は女神失格ではありましたが、ホメロ様は寛大な処置をなさるでしょうから・・・私の配下と龍神の共同体でしたがあの村を襲ったヒト種達が認識阻害を展開しており、思考を覗けたのはたった一人でした、その者の思考から読み取った情報をお話しします、まず情報源はアンジュという名前でズルワ帝国第三王妃の近衛騎士団長です、彼女の思考から襲ったのが第三王妃の手の者だ分かりました、また黒ローブの魔術師達が多数、彼女はその黒ローブの一人に操られておりました。」


 そこからの話は私が話す、とメイドが遮る。


「アステリア様に一気に話されると嫌な予感がします、今から話す事についてですが、話す前にアステリオをホメロ様の術から解放して置くのが得策だと進言します。」


 それを聞いたホメロがアステリオを元の状態に戻しアステリアに眠らせた状態にして貰いメイドの方を向いた。


「では、最後に攻撃に使われた魔術は『星落としメテオ』禁忌の術でヒト種など低俗な者共には使えない秘術、更に認識阻害に使われたるものの大本は『天女の羽衣』でした。」


 ホメロは自分の心の奥底から湧き上がるモノが何だかわからないでいると、スッと力が抜ける思いと共に消えるのを感じ、そしてアステリオの能力だと確信してそれを予想した龍体に聞く『何故予想できた』と、それをヤレヤレという態度で解説しはじめる。


「ホメロ様からのその質問に答えるには私の事を理解して頂く事が大前提にあります、では私への見方を変えて頂く最初の情報は『並列思考』ですね、私達は思考が繋がっていますから一つの事を我等全てで考えて答えを出せます、ホメロ様は私を創造しましたので私の直属の上司はホメロ様ですが、私の思考に蓄積された情報は初代の創造神様に創られた龍体とも繋がっています、ホメロ様すら知らない情報が蓄積されているのですから私への質問はその辺も考慮願います、では、先の質問の答えですが、アステリオが私達龍体の管理する星々と同じだからですよ、まぁこの星ではまだ無理でしたからね。」


「はぁ?・・・いや、そうか、納得したよ、そういう事だったんだな、落ち着いたよ龍体にはかなり勉強させられるな、その並列思考?で私の知らない神の思いとこれまでのヒト種との付き合い方とか、歴史は知っていてもそれに対した他の者の感情による思いが分からない、そこを踏まえて続きを詳しくお願いしたい。」


「それは初代の神々の反省から始まった、ホメロ様は歴史を御存知との事でしたから悉くヒト種との戦いに負け続けた、それを止めたのが私事女神様を補助する為に創られた者です、神様方は負け続け私は負けた事が無い、その違いが神様方には理解できない、何故ならいくら思考力が高くても『善』を元に創られた存在で、私達は元が『光の力』と『思考の種』だけで女神様だけの為に創られた存在で出発点が大きく違う、私達は普通にヒト種などが持つ『感情』も大きく育った、その理由が私達の唯一無二の使命『女神の完全守護』です、文字通り女神の全てを護るつまり『心』も含まれます、創造神様方は星々一つ一つに色々な問題が起きている事を知らなかった、男神の創造神様達は思考の中心は善であり優に近く感情の振れがとても小さい、女神様は女神であり中心が善であり愛に近く感情の振れがとても大きい、この違いが大きな乖離を生み女神様と私達は頼れる者がお互いだけだと理解した、女神様方はヒト種の進化の先には『愛』が有ると信じていたがそんなものはどこにも無かった、それからの私達は女神様の心を護る為ヒト種の頭を覗く行為を数え切れない程行い、奴らの生きる為の力が『欲望』が大半なのだと理解した、さらにその欲望を叶える為に悪辣な行為も平気で出来るのがヒト種だと嫌というほど勉強させられた、それからは女神様が悪神に落ちないようにする事が第一命題となったのです、そんな中我等の具申で『魔』を発現させる事と引き換えにヒト種の淘汰に成功した、私達の功績と実績を無視出来なくなった創造神様達は私達に教えを請うた、そして私達が蓄積したヒト種の『生態』を覚え答えを出した、それが絶対の善を止めて『臨機応変なる善』の考えとヒト種を理解する為の喜怒哀楽『感情の起伏』を大きくさせる事とそれに伴う意思決定の方向性の調整、ホメロ様はその旨を与えられ進化した第三世代の創造神様、ただ増やされた訳では無いのです、気が付いていますか?創造神様達が増えているのに星々の増加率は昔から変わっていない事を。」


『危うくホメロ様まで魔を発現する所だった、アステリオの能力に助けられた。』とホッとしながら話しを締め括り、メイドはお茶を入れ直しはじめ暫し静かな時が緩やかに流れて行く。

『魔の発現か・・・』そう考えながらホメロは立ち上がり。


「龍体よこの星とかの星両方に使う力が足りないのだな、なれば一度私の力を譲渡して私は力を回復してくるので、アステリアは羽衣の展開に備えていろ、戻ったら即アステリオの全てを知る為に解析術を施す。」


 アステリアは呆けたようにしていたが、突然のホメロの決断に頷くことしか出来なかった、そしてホメロが力の譲渡を素早く終わらせるとそのまま飛んで消えた、それを見てアステリアも動きだすのであった。

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