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天眼の宝飾師  作者: 広大
第二部 天界の禁忌と更なる禁忌
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女神

『女神の教示とは何であろう。』

 

 大人になりたくないと私に縋り泣いているアステリオを見ていて昔を思い出す、育てる為に自分の持てる全てを使って何をすれば良いのか、何が出来るのか、真っ新な状態からの第一歩である、失敗は許されない、自分だけの力で事を成せるのか。

 村で起きた最後の瞬間自分だけでは間に合わないと判断してホメロ様と龍神に助けを求めて全ての力を開放した、ホメロ様には転移させ生活させる星を、龍神には村の皆の意識の転写を、自分で考え得る全ての事を成し遂げる為に、本当はホメロ様が育ててくだされば一番良いのだろうと思う。

 龍神に村の者全員の意識の転写を願った瞬間、ホメロ様は村自体の物理的転写を新たな星を創造しながら行っていたのだ、何事も無かったように村が有る不思議な感覚。

 私の腕の中で楽しそうに声を上げて笑い顔をこちらに向けるアステリオを見つめ立ち尽くしたまま笑顔を返す、初めて込み上げた『悲しい』という思いに衝撃を受け涙を流しながら。


「ふぅ、我の感情など捨て置いてやらねばならん事が多分にあるな、まずはアステリオの全てを守らねば。」


 暫しアステリオの顔を見つめていた私はやっと置かれた立場へ意識の浮上を感じアステリオの精神に干渉して眠りを誘う、スヤスヤと寝息を立てたのを確認してから自分の羽衣を外し波動をアステリオに合わせる為しばし作業に没頭していると目の前に光が集まり出し。


「急遽創った星だ、我の持てる力をぎりぎりまで出し尽くしたのだがこれが限界だ、かなり小さくて我も納得出来んが許せ、それに光の力で一気に創造したため原初の星同様魔力が無い。」


「ええ、ですからこの子の石を護る為に羽衣を波動変換させて結界化し、宝石眼の外表に纏わせてしまいます。」


 私はホメロ様に断りを入れてから作業の続きを始める、仮の結界として波動調整だけ出来た分を取り合えずアステリオの石に纏わす、危機的状況さえ乗り切れば後はゆっくり高圧縮を掛けながら波動調整した羽衣を塊として練り上げ続けて、最後の羽衣の練り上げを終え圧縮調整を終えたので一息付き目を開きながらホメロ様を視線で探し、納得して声を掛ける。


「ホメロ様には突然の要請に尽力頂きまして実に有難う御座います、喫緊な事が多すぎて碌に挨拶もせず心苦しく・・・」


「世辞はいい、それよりアステリオは無事なのだな?」


 ホメロ様は私の言葉を切り、アステリオの事を確認してきたので『少々焦りましたが無事です。』とかえした。


「ならば良し、しかし光の力だけで星を一瞬で創るのがこれほど難しいとはな、アステリアも知っておろう我は三代目の創造神、普段は核を創り大気に散らばる魔素と光の力を練り上げながら星々を創造していくのだが、星々の創造を光の力だけを使って行うのはこれが初めてだ、星としては少々小さいが内包する力はかなりの物だな。」

「さてこれから行うのも我にとって初めての試み、上手くいかねば初代の創造神様方に教えを乞わねばならん、それだけは意地でも嫌なので、少々時間は掛かるだろうがアステリオの為に出来得る限り迅速に成功させてみせよう。」


「なれば私はその間にアステリオの石を包む羽衣の結界を完成させて見せましょう。」


 お互いに意を決し、私とホメロ様が作業に没頭し始めた頃、広場でまたしても光の粒子が集まり出し。


「うおっ、何だこりゃ、くっまずい女神さまと創造神様の波動の力に俺が引っ張られる、離れながら実体化出来ていない俺の粒子を取り込まなくては。」


 龍神が大慌てで二神から距離を取りながら、二神の波動に干渉しないように自分も粒子を集める為に力を開放する、そしてしばしの時が流れた後。


「ふぅ、これで何とか巧く出来たと思うのだが、この星を創る為に使った力と同等とは、魔力の無い世界樹、幼樹というにこれ程迄の力が必要だとはな。」


 アステリオの結界を何とか無事に施し、翳した手をゆっくり上げながら聞くとはなしにホメロ様の呟きが聞こえ目を開く、視線を向けるとこちらに向かって歩いて来ていた。


「結界の方も無事終わったようだな、これからの事を話し合いたいところだが、思った以上に力を使ってしまった、済まないが我は光の星に向かい力を蓄えて来ねば何も出来ない、アステリアと龍体は今後どうするか話し合って居てもらおうか、それから龍体には世界樹の力の流れを少しで良いから見ていてくれ。」


 私はホメロ様が完全に再現された村をゆっくりと眺めて、中央広場の舞台と奥の祭壇を目にして悲しみに心を引き込まれぬように舞台側に背を向けて腰を下ろし、何の不安も見せずに眠るアステリオを見ながら急ぎの問題が無くなり少しだけ冷静さを取り戻して考え思考の渦にのまれはじめ。


「済まないなアステリオ、あまりの悲しみと村の皆から託された思いと・・・悪神にまで落ちてしまいそうなこの黒い思いとの折り合いをつけなければ前に進めぬのだ、ホメロ様が戻る迄にはな・・・。」


 近付く龍神にも聞かせるようにアステリオに向かって話し掛け溢れる涙に目を瞑り天を仰いだ。

 私は『善』を重んじる心優しき女神なのだと自分に言い聞かせながら。

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