盗賊を殺すのに遠慮はいらない
「キャー」
そこの声で、失いかけた意識を少しだが引き戻せた。
ささやかな願い俺の意識を保て。
『ピンポン』
気の抜ける音だが、意識をとどめておくことができた。
っていうか。
いてぇぇぇぇぇ!!!
なんだこの痛み、
突でやられた傷跡が妊娠するときの5倍は痛い。
妊娠したこと無いから痛み知らんけど。
傷はそんなに深くないのに、もしかして突って痛みで意識刈る技なのか、師匠基準で考えてたから勘違いしてたわ。
ナビさん足が動かない、どうなってんだ。
『先ほど投擲LV5の修技 影縫いを撃たれたようです』
あの空振りスキルだったのかよ。
効果時間は?
『5分です』
盗賊B:42が動いた。
まあ、睨み合っていても影縫いが解けるだけだしな。
猪突猛進してくる盗賊B:42にスキルを放つ。
修技 百舌鳥ノ速贄
上方に飛ぶ盗賊B:42、鎖蛇対策だろうが、それは悪手だ。
修技 波岩爆砕
半円を描くように上から下に槍が動く。
盗賊B:42の身体は半分爆散した。
『敵属性 LV54 ボルス 戦闘力127』
投擲LV7
剣術LV7
体術LV3
「まさか全員殺されるとはな」
投擲を太ももに食らった、やばいこいつかなり強い。
スキルを使えるほどLPが残ってない。
俺は槍を杖がわりに立った、が、あまりに酷使したためか、ポキリと真ん中から折れてしまった。
「武器もなくなっちまったな、なら死ね」
ボルスはブレードソードを振り上げ俺に打ち下ろす。
俺は宿業の因果剣を取り出し、ボルスに向かって身体ごと剣と一緒に当てにいった。
「あぶねぇな、まさか、精神武器持ちとはな」
ボルスはフムと頷くと交換条件を出してきた。
「精神武器持ちを殺すのは惜しい、その女を渡せばお前の命助けてやるぞ、10数える間に答えをだせ」
クリスティアを引き渡すとか、そんな選択肢最初から無い。
熟練度オープン
槍術:082,1
剣術:012,1
体術:021,4
釣り:029,1
薬学:010,1
採集:029,2
思ったより、槍術が上がってるが槍は折れて無い
ナビさん、宿業の因果剣装備で、俺の戦闘力はいくつになる。
『25です』
槍を装備してれば?
『62です』
「じり貧だな」
クリスティアが俺に近寄って来た。
「これ以上あなたに迷惑かけられません」
「良いから黙ってみてろ、必ず助けてやる!」
「なんで……」
「一度守るって言ったのに、敵が強いからって尻尾巻いたら、カッコ悪いだろ」
まあ一度逃げたやつは、逃げ癖がつくっていうしな。
「あと、ほら、あれだ、人工呼吸とは言え、俺のファーストキスの相手だしな」
クリスティアが顔を真っ赤にしてうつ向く。
「私もです……」
『超理解力介入』
「ん? なんだって?」
あれ今一瞬思考が鈍った気がしたけど、気のせいか……
「が、頑張って下さい」
「まかせとけ」
俺は宿業の因果剣に折れた槍を吸収させた。
少しでも攻撃力アップになるし、42の槍を拾う時間稼ぎができればいい。
『宿業の因果剣に槍モードが発現しました』
まじか……
『マジです』
つまり、槍吸収したから、槍にもなるよってことか。
「10だ、返事を聞こうか」
「ペラペラうるさいやつだな、お前の手下の方が寡黙に攻撃してきて、よっぽどプロだったぞ」
たった十秒だが影縫いが切れるには十分な時間だった。
「そうか、分かった」
槍モード
『コードキー認証、|われの思いは力とならん《形状錬成》、スピア発現』
そう言うと宿業の因果剣は槍になった。
え、何それかっこいい、形状変えるのにそういうの必要なんだ?
『いいえ、ノリです』
余裕っすね、ナビさん……
攻撃はしない、見ることに専念する。
そうすれば勝機が出てくるはずだ、避けて避けて避けまくる。
「初技 斬」
ボロスは肩にかついだ片手剣を、体を円を描くように振り下ろした
斬撃が俺を襲う。
俺は槍の石突きを地面にぶつけ、反動で後ろに飛ぶ。
初技の有効範囲は最大5m、剣なら3~4mだ十分よけられる。
しかしそれは牽制で本命は修技だった。
「修技 真空断裂斬」
真空の斬撃、普通は見えないが、魔力を帯びてるので俺の目には、斬撃が丸見えである。
それを槍を使いバク転で避ける。
しかし、この世界の住人は技を打つときに、名前を言わないと発動できないのか。
まあ、そのおかげで、一拍早く対応できるんだが。
ボロスは初技から修技のコンボを繋いで攻撃してきたが、避けられたあとはスキル技を、使ってこない。
突きをメインに攻撃してくる、体格差があるため俺の槍と、そう射程は変わらない。
俺はあくまで防御だ、防御に徹していれば二倍の戦闘力があっても耐えられる。
20分ほど打ちあっただろうか、俺のHPも残り少ない、しかし、勝ちは見えた。
「お前の動きはすべて理解した、その命刈り取らせてもらう」
俺は後ろに下がり、距離をとる。
「大きく出るじゃないか小僧、ではこちらも最大技で相手をしてやろう」
剣を上段に構えると俺に向かって踏み込んできた、まるで高速で走ってくるトラック並みの重量感
「絶技 八刀斬身剣」
八本の刀身が俺を襲う、全ての刀身は幻影ではなく本物、一本でも当たれば即死、多分体の半分以上消えてなくなるだろう。
掠ることさえ許されない。
初技 突
LPがギリギリ回復してるこれしか打てないが、カウンターの威力も考慮すれば、一撃必殺になるはずだ。
打ち下ろされる剣より先に俺の一撃がみぞおちに入ったかに見えたとき、ボロスの陰から投擲ナイフが三本飛び出した。
『投擲の修技 影ノ暗殺者です突進前に準備していたようです、敵がが1m以内に入ると自動で発動します、避けられません、ジ・エンドです』
マズイ、これはよけられない。
俺は死を覚悟した。
『MP0、LP0 イデアブレイクになります。ガッガッピィー…』
え、ナビさん…… どういう……
意識が失われる直前にやさしいくも懐かしい声がした。
『キミハボクガマモルヨ』