勇者は正義の使者ではない
「師匠、熟練度って練習すれば良いんですか」
「練習だけでは無理だな、実戦も必要だ」
師匠が言うには超理解力で分かるのはせいぜい半分程度だろうと言うこと。
表面上の動きは完璧だけど、実戦経験に伴う経験が不足している、故に熟練度が足りてないらしい。
「まあ、一つの武術を極めれば、その足りない実戦経験が補完されてより完璧な超理解力になるだろう」
一を聞いて十を知る、一つの事を極めるとそういう人間になれるらしい。
この祝福極めれば凄いことになりそうだな。
そう言えばナビさん
『はい、なんでしょう』
熟練度って表示できないの?
『多岐にわたりますので、相当な文字数になります』
じゃあ、獲得してる熟練度で、スキルと被ってるものと戦闘用又は有用と思われるの物だけを 表示することはできる?
『できます、少々お待ち下さい』
できるのかよ、やるなナビさん。
『インターフェイスを再起動します』
ステータス欄の一覧に熟練度が表示されてる。
俺はすぐさま開いた。
槍術:050,1
剣術:002,3
体術:010,5
釣り:021,2
薬学:010,1
採集:029,2
おお、なんか凄いなレベルとかよりこっちの方がカッコウ良いわ。
やっぱり失敗したのは熟練度が足らんかったのか。
師匠にこの事を話したら、自分の熟練度理論が正しかったのを証明されて、すごく喜んでた。
骸骨かわいい。
「師匠、そう言えば、なんで魔族側の勇者って魔物とか魔族に襲われないんです? 」
「あーそれ聞いちゃうか? 」
なんか地雷踏んじゃたのか……
「魔族側の勇者召喚は人間側の勇者召喚とは全くやり方が違うんだよ」
師匠が言うには魔族の勇者は召喚された時点で人間じゃなくなっている。
生け贄にされた魔族の魔光石を媒体にして受肉された言わば人工的な魔物が魔族側の勇者の正体だそうだ、つまり師匠は……
師匠はローブを脱ぐと骨の姿を露にした、みぞおちの上の辺りに黒く輝く大きな石がある。
「この石が魔光石、魔族十人分の結晶さ」
そう言ってケタケタ笑う師匠はどこかもの悲しそうだった。
召喚された勇者は魔光石のせいで人間を敵視する。
師匠も最初は敵視していたそうだがレベル上昇と共に抗えるようになって、魔大陸を抜けたそうだ。
「まあ、魔大陸から抜けたって身体は魔族だから人間側の勇者に狙われまくったけどね」
人間側の勇者はかなりひどいらしい、引きこもりやいじめられっ子、心に傷があるような子を呼んで力を与えるので箍が外れまくるらしい。
「一番ひどかったのが、私を肉奴隷にしてやるとか言ってたやつだね、今じゃ肉ないけどね」
あ、ここ笑うところや……
俺は乾いた笑いをする、殴られた、理不尽だ。
ん、人間側の王国って108以上あるよね?
『勇者が魔王を倒した場合、国を作ることが許可されるからです』
ただしそれには裏があって、勇者が死亡後はその王国は一族郎党皆殺しにされるそうだ。
『勇者は108人いますから、ある意味仕方ないですね』
勇者108人もいんのかよ。
魔王側の勇者も108人いるのか?
『はい、います』
『勇者召喚をできる王族は世襲制でそれぞれ108の家が受け持っています』
なんか、予定調和みたいで嫌だな。
この王国は勇者召喚する王国なの?
『勇者の国ですが、素行が良かったので取り潰しにあってません』
格下の王国なのか。
「さぁ、休憩は終わりだよ」
そう言うと俺を立たせて訓練と言う名のシゴキが始まった。
訓練が終わり家に帰ると父さんと次男のヴィルスが剣術訓練をしていた。
「ただいま、父さん何してるの?」
父さんがヴィルスに格闘技を教えるのは珍しい。
「来月はヴィルスの誕生日だからな称号を得る前に少しレベルアップの為に魔物狩りに行こうと思ってな」
その方法を知ってると言うことは、父さんは高ランク冒険者だったのか。
そう言うと近づいてきて篭の中を見る。
ブタバスを見て喜び俺の頭を撫でる。
ああ、ヴィルスの目が痛いからやめて。
父さんは俺から篭を取る。
「父さん、訓練は! 」
ヴィルスは戸惑いながら、父さんに声をかける。
「今日はもう終わりだ、また明日教えてやるから」
そう言うと篭を大事そうに抱え台所へ向かった。
ヴィルスはこちらに近づくと肩をドンと押した。
「調子にのるなよヴィクトル! 」
「ごめんなさい」
俺が謝るのを聞くと溜飲がいくらか下がったのか、ふんっと鼻息をひとつならすと父親の後を追った。
ああ、どうしようこれ。
俺兄弟いなかったからどうして良いか分かんないぞ。
『解決方法として、ぶん殴るがもっとも効果的です』
だ・ま・れ