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森にある遺跡が安全なわけがない

翌朝も俺は父親の釣り竿を片手に川に向かった。


 マップを拡大してたのを忘れてて、元に戻していると近場に遺跡があるのがみてとれた。


 ナビさん、この遺跡ってなに。

『神魔戦争時代のもので、今は使われてないようです』


 武器とかあると思う?

『可能性はあります』


 魔物とか野獣もその周辺にはいないし行けそうかな? 古代遺跡とかロマンそそるよな、ちょっと見に行くか。


 俺は、茂みを掻き分け森へと突入した。


 一時間ほど、森の中を遺跡に向かって歩いた。

途中キノコや山菜、薬草などがあったので、回収して次元倉庫(ディメンション)に入れておいた。


 目の前には、洞窟のような入り口があるが、回りは補強されていて明らかに人工物と分かる。


ナビさん、敵属性はいないんだよね。

『はい、なにもいません』


 意を決して、遺跡の中に入ろうと一歩踏み出したとき、マップに上に突然赤い敵属性表示が出た。


『後ろです、LV999 属性アンデッド 、常闇ノ不死王(エイジリア)


 LV999ってなんだよ、飛び退くようにして後ろを振り返った。

そこには、ローブ姿の骸骨が居た。

 その体からは溢れんばかりの負のオーラを(まと)っていた。

 終わった、どう考えても勝てるわけがない、遺跡探検なんか、やめておけば良かった。

 俺は死を覚悟した。

 今度、生まれ変われるなら銃と魔法の世界が良いかな。

俺はそっと目を閉じた、涙が頬をつたった……




「いやいや、殺さないよ? なに覚悟決めちゃってるのよ」


 そこには、ケラケラ笑う骸骨が居た。

俺が困惑していると、骸骨は俺の肩を叩いて、うんうんとうなずいてる。


「少年は、転生者でしょ? 」

「え、なんでそれを」


「魂の波長がこの世界の人間と違うからね、一発で分かるわよ、まあ、そんなことできるのは私くらいだけど」


 そこでまた、ケラケラ笑う骸骨。

いつの間にか、マップの敵属性も消えて緑になってる。

「で、あんた何人?」

「日本人です」

 そう言うと、骸骨はグッとガッツポーズをすると叫んだ。

「日本人キターーーーーー」

 ドン引きするほど喜んでる。

「昭和?昭和よね?」

「いえ、平成ですよ、あ、でも生まれたのは昭和です」


「昭和世代キターーーーーー」

 どんだけ、昭和世代に飢えてるんだよ。

「で何、平成って次の年号なの?」

「はい、そうです」

「昭和の次は平成になるのか」


 感慨深そうにうなずく骸骨。


「ええとあなたは……」

「あ、メンゴメンゴ、私は転移者で魔族側の勇者よ」


 魔族側って……


「警戒しなくても良いわよ、元勇者だから、それに同郷の無関係の人を殺すほど、おかしくもなってないしね」

「まあ、積もる話もあるし立ち話もなんだから、遺跡の中で話しましょう」


 そういうと、遺跡の中に俺を案内した。



 常闇ノ不死王(エイジリア)の本名は田端正美さん昭和の40年生まれだ。

 約千年前にこの世界に勇者召喚されたらしい、勇者召喚は色々な時代から強制的に引っ張られてくるので時代は別々の時代の人が来るらしい。

 正美さんは当時国民的アイドルでオリコン一位を連発するほどの人だったらしい骸骨だけど。


「よし少年、君を弟子にしてやろう」

 え、なんでそんな話になるの……


「君は冒険者になりたいんだろう?」

「はい、10歳で称号を得たら、冒険者になろうと思ってます」


 うんうんと、目を閉じてうなずく動作が昭和臭い。


「だからだよ、私はこう見えても二重称号持ちで、剣聖と魔導王を持ってるんだよ」


 え、何それすごい。

『二重称号持ちは通常一人最大10個までのスキルを20個持つことができるものです、また称号にもステータスやスキルを補助する効果があるので二つの称号持ちは破格の強さをゆうします』


「それに私は元勇者だからね、冒険者の知識も持ってるんだよ」


 なるほどそう考えるとQ&A方式のナビさんよりも良いかもしれないな。

『私も賛成します、師匠につくのは強くなるための近道です』


 どちらにしろ、強くなるためには自分で修行しようとしてたんだから、問題はないか。


「わかりました、よろしくお願いします」

 俺はペコリと頭を下げた。


「よし、じゃあ今日から私のことは師匠とよぶんだよ」

「はい、師匠! よろしくお願いします」


 師匠は満足げにうなずいている。

 骸骨かわいい。


「あ、師匠、修行は魚釣りのあとで良いでしょうか?」

「なぜだい?」


 あ、やっぱダメかな、ちょっと不機嫌になった気がする。

 骸骨だから表情ないけど。


「父親が、僕のつってくる魚期待してるのとレベルアップしたいので」

 師匠はアゴに指をあて、うんうんとうなずく。

 所作が一々昭和臭いのは仕様だろう。


「では、こうしよう、修行前に魚を10匹釣りなさいそれから、修行にしよう、あとレベルアップのことも、ちゃんと考えてあるから心配しなくて良い」


 そう言うと、師匠は虚空に手を突っ込んだ、師匠も次元倉庫ディメンションストレージ持ちのようだ。


「師匠も次元倉庫ディメンションストレージ持ちなんですね」

「いや、これは時空魔法の物品寄せだ」

「時空魔法?物品寄せ?」


 虚空をもぞもぞまさぐる師匠は、1本の釣竿を取り出した。

 直接、穴を見てるということは、結構性能悪いのかな?


「うむ、まあ、それはおいおい教えるとして、これを使いなさい」


 そう言って、一本の釣竿を俺に渡した。


「釣竿なら、父親のがありますけど」


 ふふふ、と笑うと釣竿の説明をしだした。


 この釣竿は全自動で、先についてるギャング針が勝手にで魚をとらえてくる、リールは電動だから苦もなく引き上げられるそうだ、ちなみに、糸は水辺に生息する狩人蜘蛛の糸を加工したものだから切れることはないと、どや顔で自慢しだした。


 骸骨だから、表情はないけどね。


 おれは、ありがたく受けとると次元倉庫ディメンションストレージにしまった。


「あとな、頼みがあるんだが」

 なぜか急にもじもじしだす師匠、骸骨かわいい。

「はい、僕にできることならなんでも」

「平成のな、ア、アニメの話や小説の話とか、ゲームや漫画の話とか聞きたいんだけど。いや、分かる範囲で良いんだけど」

「ほうほう、師匠もそう言うのが、好きだったんですか」

「もってことは……」

「お任せくださいこのヴィクトルが深夜アニメからラノベに至るまで全部話して聞かせましょう」

そうして俺のオタク話で今日は一日潰してしまった。



 そう、一日潰してしまったのだ。

魚を釣るの忘れた……


 帰りは森の出口まで、師匠のゲートで送ってもらった。


 父さん残念がるだろうな。

 俺は次元倉庫ディメンションストレージから山菜やキノコを取り出しかごにいれて玄関のドアを開けた。


「お母さん、ごめん今日魚つれなかった」

「いいのよ、あら、山菜もとって……」

 母さんは驚きの表情を浮かべている。

「これは、幻のグンゾウマッシュ、しかも、5本も!」

「そうなんだ…… 一杯、生えてたんだ」

幻の食材かよ、やっちまったな。


「これ、一本10万G(ゴルス)よ」


 …………


 その日の晩飯には、そのキノコは出ませんでした。

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