俺のチート人生はまだ始まらない
気がつくと六畳ほどある部屋の食卓に座っていた。
『封印解放を確認、ナビゲーションを起動します』
どこからか声が聞こえると、目の前には色々な数値や図形が飛び出した。
それと同時に走馬灯のように七年間の記憶が流れ込んでくる。
父親の名は ヴィッセル、母親はシュイナ
元々二人は冒険者で妊娠を機に引退して故郷であるバトルスに帰り小さな雑貨店を営んでいる。
もと冒険者なだけに仕入れから自分でやっており、中間マージンが無いぶん、わりと稼げているようだ。
そして、引退の原因になった長男ヴィアイン十二歳、次男のヴィルス九歳、そして三男の俺、ヴィクトル。
良かった、両親兄弟は皆優しい、これで虐待とかあるようだったら目も当てられない。
『マスター落ち着かれましたでしょうか? 』
この声は頭の中に直接語りかけてきてるのか……
『はい、私は祝福ナビゲーションの疑似人格です、名前はまだ無い』
あ、名前をつけろってことですね、じゃあナビさんでいいかな。
『では現状報告いたします』
うは、名前に無反応か、気に入らなかったのかな。
『いいえ、問題ありません、では続けます』
はい、お願いします。
『まずは、七歳の誕生日おめでとうございます』
あ、はい
『封印状態が解放されましたので、全ての祝福が起動しました』
そう言えば、どんなギフトいただけたんだろう?
『では、祝福の説明をさせていただきます』
そう言うと目の前にずらっと七つの祝福名が現れた
◎ナビゲーション
ナビゲーション及びインターフェイスで他の祝福の管理もおこなっている。
マップや鑑定機能がある。
正直こんなの標準装備じゃないのとか思うけど、まあ、なにげにすごいチートだし、何より能力の話をできるやつがいるのはありがたい。
◎次元倉庫
容量無制限の次元倉庫、重い荷物とか持ちたくないし、大事なものが盗まれないのが良いけど、これも普通標準装備だよね……
◎超理解力
すごく理解力が高まる、ただし、恋愛関係はラノベ主人公になるデメリットがある。
はぁ? なんだよラノベ主人公って
ハーレム作りたいんですけど、なにこれ、祝福じゃなくて呪詛なんじゃないの
◎魔物の魔導書
倒した魔物の魂を吸収して秘薬や呪文を必要としない魔法を作り出す。
きたきた、戦闘系! これはすごい有用じゃないかな、魔物の魔法は強力なものが多いしね、ゲームの中では。
というか、この世界の魔法って秘薬必要なのか。
『いいえ、違います、これは魔物の魔法ではなく 、魔物の魂を使って新魔法を作る祝福です』
新魔法か、まあどちらにしても他の魔法は秘薬や詠唱をするんだからアドバンテージは高いな。
◎ささやかな願い
世界の運命を変えることのない程度の自己限定の願いが叶う。
願いが叶うってなにげにすごいよね。
まあ、限定的ではあるけど、これも有用かな?
◎経験値倍増
取得経験値が増える、レベルに応じて倍率も増える。
つまり効率がレベルアップしても変わらんのか、これは良いな
レベルアップするとどうしても上昇値落ちるからな
◎???
未解放、解放条件不明
なんだよ未解放で解放条件不明って
一つ死に能力じゃねぇか。
そして宿業の剣
まあ、魔法もあるしかなり良い感じなんじゃないかな?
俺はグリモワールを呼び出した。
魔導書をめくると全てのページが白紙だった。
そりゃそうだよね、まだ魔物倒してないしね……
つまり、現状戦闘系の祝福は使えないってことじゃねぇか。
いやいや、待てよ
「ささやかな願い 、なにか戦闘に使えるスキルをください」
『ブー』
はぁ?なんのブザー音よ
『スキル取得に失敗したようです』
なんでよ、戦闘系スキルなんて別に世界の運命を変えることでもないだろ
『スキルとは、十歳の誕生日に神殿で称号と共に得るものなので十歳未満の少年がスキルを得ることには問題があるようです』
そんなー
俺のチート人生が始まらない。
なあ、ナビさん称号得る前にレベルアップとかできるの?
『はい、出来ます 、称号を得る前にレベルアップをすると称号を得たときにレベルが1に巻き戻るのですが、ステータスはそのままですので、その後のレベルアップに影響を与えます』
つまり十歳前に出来る限り、レベルアップした方がいいってことか。
『はい、ですから貴族やトップ冒険者の子弟はこれを利用してパワーレベリングしています』
どのくらい違うの?
『初期値×レベルですのでアホみたいに違います』
まじか……
『マジです』
一番弱い魔物と俺の強さどのくらいの差があるの
『マスターが1に対して魔物が10です』
勝てる気しねぇ
宿業の剣装備してもダメ?
『装備して1です』
よわっ、俺よわ。
『マスターは封印状態だったため病弱だったのも影響しております』
普通の人と俺の強さの差はどのくらい
『マスター1に対して平均値は5ですね』
ちょ、一般人強すぎね、俺どんだけ弱いのよ。
『五分の一です』
いや、分かってるよ!
出だしからつまずいたんじゃねこれ。
ささやかな願いでなんとかならんかね。
ささやかな願い俺のステータスを世界に影響がない程度あげてくれ。
『ピンポン』
お、ブザー音じゃない!
『成功です、現在の強さ2になりました』
かわんねぇ……
まあ、さっきの二倍だしかなりましか。
レベルあげる方法ないの?
『あります、野生生物を殺しても経験値がてに入ります、が、一律に1ですが』
レベルアップまでの数値は?
『1000です』
以外と低いな 。
経験値倍増効果で500匹で良いわけか。
例えば魚とかでも良いの?
『問題はありません、ただし、放置して殺すのではなく、必ず止めを指してください』
お、希望が見えてきたな、俺と魔物のステータス差が5倍
つまり、最低でもレベル5じゃないと話にならないわけか。
一年は地球と同じで365日。
一日十匹ノルマで7300か、これでどのくらい上がる?
『レベル3です』
あと3年ある2年でレベル5を目指して そこから魔物狩りだな、一応レベル10は目指したい。
まずは……
俺は店番の母親のもとに駆け出した
「お母さん、釣り道具欲しいです」
母親は怪訝な顔で俺を見る。
まあ、今まで釣りなんかまったく興味無かったしな。
「倉庫に父さんのあるから、それ使いなさい」
「はい、ありがとうございます」
「水の中に入っちゃダメですよ」
「はい、気をつけます」
こんな感じだろうか?
どうにも良い子ちゃん過ぎる気がするな。
まあ、そのうち様子見ながら変えていくか、俺は倉庫の釣り道具を取りだし川に向かった。
川に着くとインターフェイスのマップに大量の白い光点が現れた
詳細を見ると、魚の名前らしい……
マップってどんなものも表示できるの?
『はい、知っているものであれば表示されます、また、検索表示も出来ますので映したくないものをオフに出来ます』
まあ、ここに来るまでに薬草やキノコの名前出てたから、ある程度は予想してたけど、なにげにすごいなマップ機能。
この光点を今見ている映像に被せることできる?
『出来ます』
そう言うと川に光点が映し出された。
サカナマルミエ、オレサマダイマンゾク。
「お前達の動きはすべて理解した、その命刈り取らせてもらう! 」
一時間ほど釣りをして釣果はニジマスにようなもの十匹とブラックバスみたいな魚五匹である。
まあ、前の世界じゃ釣りキチ万平って漫画読んでたからこの程度楽勝ですわ。
『大物がヒットして溺れそうになりましたけどね』
うっさいわ!
まさか30cm級位で引きずり込まれると思わなかったわ……
まあ、20cm級ならなんとかなったので、そこからはマップから20cm以上を除外したけどね。
しかし、腕パンパンだわ、どんだけ体力ないんだよ……
ん、ナビさん筋トレって意味あるの?
『あります、次のレベルアップ時に加算されます、ただし、称号を得るまでです』
なにげに知ってると知らないでスタートですごい差がつくシステムだな。
まあ、現実でも金持ちの子供はブーストしてるしな、せちがない世の中だぜ。
帰り道薬草やキノコも採取して帰ったら、メチャメチャ驚かれた。
食事事情改善したいしね。
この世界は長男教で長男に多目にご飯を食べさせる。
まあ、俺もちゃんと食べさせてもらっているけど今後の事を考えるとタンパク質はちゃんととれるようにしたい。
良い人生を歩むためには鍛えないといけないしね。
俺、十歳までに頑張るよ!