表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/25

転生できない

 俺の名前は……いや名前なんて意味がないだろ死んでいるんだから。


 俺の死因は交通事故だ、歩道を歩いていたらバイクが飛んできて俺を直撃した、これがトラックだったら異世界転移でワンチャンあったんだろうけどな。


 俺は引きこもりで、家でゲームをしてたはずなんだが、なんでこんなところで歩いていたんだろう。

 色々、思い出せなくなってる、死ぬと記憶も薄れるのだろうか。

 実は名前が思い出せない、その他にも断片的な記憶になっているものもある。


 好きなゲームだけはよく思い出せた、ゲームの名前はウルガスオンライン、亜人がメインのゲームなんだが、すごく楽しかった思いでだけが甦る。


 ただ一つ、死んで思い出した事がある、人は死ぬと新しい肉体に転生すると言うこと、死後数日間さまよっていると、生まれ変わりの瞬間に、新たな肉体に向かって引っ張られる。


 実は、もう6回生まれ変わっているんだが、なぜか出産直後死んでいる。

 死の瞬間の恐怖は何度経験してもなれない、それどころか増幅すらしている。


 まるで、先の見えない穴底の闇を見ると、まるで誰かがあちら側からせせら笑い、虎視眈々と俺を引きずり込もうとしているような、そんな恐怖だ。


 そして、抗うことのできない力で新たな肉体に引っ張られる、

俺は渾身の願いを込めて祈った。

 だがその祈りもむなしく、また死んでしまった。

 死ぬほどに恐怖が増幅されていく、慣れるなんてことはない、ひたすら増幅されていくのだ。


「怖い、怖い、怖い、もうやだ、誰か助けてくれ」


生まれ変われないなら消滅させてくれ、そんな願いをするほど俺は追い詰められていた。

 俺は、こんな拷問なようなことに耐えられるような、強い精神の持ち主じゃない、殴られればすぐ謝し、俺が悪くなくても喧嘩にならないようにヘラヘラ笑うこともしてきる。

 誰かがピンチでも助けることなく見捨てる、そんなゲスで弱い人間だ。

 だからなのか? これはそんな俺への罰なのか?


 俺は恐怖を少しでも和らげるために、楽しかったウルガスオンラインのことを考えていた。


 だが、生まれ変わりの時はやってくる、強い力で俺を引っ張る、抗っても抗いきれず、ただそれが当たり前のごとく機械的な作業で俺は生まれ変わりそして死ぬ、その度に抗えぬ恐怖を味わうのだろう。


「神様 …… 助けてください。」


その時、俺は光に包まれた。


 目を開け回りを見ると、そこは広い空間で先が見えない、明るさは昼間のように明るい、地平線は見えなく、まるで平らな空間が何千キロにも延びているかのように霞みがかっていた


「初めまして名も無き人よ」


 そこには、金髪碧眼の美しい女性がたっていた、まるでウルガスオンラインのパッケージの女神様みたいだ。


 まあ、一般的に女神は白人だよな、たまには黒髪の天照様とか出てこないんですかね?


 天照様は岩戸に閉じ籠ってるんでしょうか?


 そうか、天照様は人類史上初のニート神、元祖のニートじゃないか! まさに神、僕らニートの神は天照様だったんだ!


「あのう、混乱しているようですが、もうよろしいでしょうか?」


 金髪碧眼の女性が俺を心配そうに覗く、見れば見るほど、パッケージの女神様だよな。


 取り合えず落ち着くと、女神様は状況説明をしてくれた。


「まず、ここは、神の住まう理から外れた世界で色々な神がいるが、基本的には神は神にしか知覚できず、現在話してる、金髪碧眼の女性は俺のイメージから作り出した、虚像だそうだ。


「でも、なんで俺が神の住まう場所にいるんでしょうか?」


 そう、神がいる世界にただの人間がこれるわけがない、つまり俺が神!?


「ええと、ちなみに心の声も聞こえてますからね」


「すみません、調子に乗りました」

 土下座である、プライドとか関係ないのである、相手は神様だし、多少わね?


 女神様はクスクス笑うと、ここに呼んだ理由を説明しだした。


「まず、俺が神に助けを求めたこと、そして、俺自身が神に呪われてることで興味を持ったので、ここに連れてきてくれたそうだ。

 この女神様が俺のこと助けたくれたのかだ、俺は跪くひざまづくとお礼を言った。


「珍しいですね、あなたの世界の住人は神に対して不遜な人が多いのに……」


 神様相手に不遜な態度とか、無宗教が多い日本人でもそんな奴まずいませんよ、神罰怖い、これ絶対!


 神様は少し考え、うなずくとひとつ提案してきた。


 要約すると、あの世界で俺は生まれ変わることができない、別の次元なら呪詛(カース)を無効化することができ普通の生活が出来るようになる、と言うことだった。


 是非もなし!

 土下座である。

 ジャンピング土下座である。


「よろしくお願いします」


「では、行きたい世界を選んでください」

 神様はクスッと笑うと選択肢を提示してきた、目の前に三つの世界が映し出され行きたい世界を選べという。


◎剣と魔法の魔物が跋扈する世界

◎魔法と機械の近未来の戦争世界

◎もっとも魔法の発展した宇宙開闢世界


 なにこれ、どこも行きたいんですけど。

 というか、魔法の世界しかない。

 なんでも、この神様、神秘を司る神様らしい。


「おすすめは、剣と魔法の世界ですかね」


 魔法レベルが低いので、魔法初心者の異世界人でも馴染みやすいらしい。

一番進んだ世界は魂に魔法が刻まれてる人たちの世界で祝福(ギフト)があっても、魔法文化の劣る異世界人では100%落ちこぼれるそうなのだ……


「剣と魔法の世界でお願いします」

「では祝福(ギフト)を授けます」


 神様は俺の頭に手を置いた 、その手は暖かく光っていた。


「これは、予想外ですね……」


 そう言うと、指を顎に当て唸りだした。

何でも、生まれ変わりをした回数分の魂の器が残っているそうで祝福(ギフト)が7つ付いてしまったそうだ。

 通常、魂の器は生まれ変わると徐々に古い魂の器と新しい魂の器がひとつになり大きい魂の器になる。

だが、俺の場合、ひとつになる前に死んでしまったので別な器として固定されてるようなのだ。

 前の世界でも、異世界でも天才と呼ばれる人たちの中に、二つくらい器を持っている人たちもいるそうなのだが。


「まあ、破格ですが良いでしょう」

神様良いんですか、七つってチートじゃないですか。

俺としては嬉しいが、天才が2つなら俺はさしずめ天災かな。


「あと、その呪詛(カース)は異世界では無効化されますが、神の呪詛(カース)なので外すことはできません 、が、少し細工してみましょう」


そう言うと、俺の胸に手を当て禍々(まがまが)しい黒い塊を掴み取り出した。


「これはひどい、貴方の血縁関係者の先祖代々、両親兄弟姉妹の業が貴方に集まる呪詛(カース)ですね、これでは生きていけるはずがない」


神様はその塊をコネだすと、一本の剣を作り出した。


宿業の因果剣(カースオブカルマ)とでも名付けましょう」


神様中二病全開ですね……

剣は黒色の塊に戻り俺の胸に吸い込まれていった。


「この剣は、元の呪詛(カース)の特性を利用して他の剣を吸収してどんどん強くなるようにしました、現状、青銅の剣位の強さしかありませんのでどんどん吸収してくださいね」


ふぁ! なにその最強剣

ヤバイ夢膨らむわ


「それと、7歳くらいまで記憶封印しておきますか? 赤ちゃんプレイしたいならそのままにしておきますけど」


「封印する方向でお願いします」


さすがに赤ちゃんプレイはきついよな、うんことか小便垂れ流しだろ 、ムリムリ、カタツムリ 。


「転生先は王族よりも、一般中流階級辺りにしておきますね 、余り位が高いと、不自由しかありませんからね」



「何から何まで、本当にありがとうございます」


ただでさえ助けていただいて感謝しかないのに、ここまでしていただいて信仰心が芽生えるわ


「では、新たな世界では、幸多からん事を……」


そうだ 、大切なことを忘れていた。


「神様、神様のお名前をお聞かせください」


俺が光に包まれる中、神様はにこりと笑った


「ウィリアスといいます……」


ウィリアス様マジ女神……


そして俺は意識を失った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 金髪碧眼の幼女が、一人たたずむ。


 あの時の呪いが、こんなところで役に立つとは。


 まあ、彼にはひどいことをしたと思うしね。


 2200年前の攻撃は失敗に終わったけど、今度は確実に滅ぼすわ……


テルス……


 彼女はそう言うと、苦々しい思いで青い星を睨んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ