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第8回〜知らないうちに話が纏まって件について〜

あれから数時間後。

俺はフォンベルグ城の地下にある牢屋へと収容されていた。


「……なんで俺がこんな目に」


「貴様がリーエルをたぶらかしたからだ」


嘆息する俺に声が返ってくる。

みるとなぜか、俺と同じ牢にリーエル兄が閉じ込められていた。


「っか、なんでおまえがここにいるんだよ。一応この国の王子だろ?」


「知らないのか? ここは囚人を収容する以外にも暴走した俺を反省させるための監禁部屋としても使われているのだ!」


自慢げに語ることじゃねぇ……。


「それで、俺はこれからどうなるんだ?」


「知るか。俺も起きたらここにいたから上ではどのような判断が下されているのかはわからない」


「まさか、このまま死刑とかはない、よな?」


「さぁな」


それっきりリーエル兄は黙り込んでしまう。

親切で助けたはずなのにまさかこんな仕打ちを受けるとはなぁ〜。

まさか、このまま死刑されて俺の無双伝説は終了なんてエンディングはないよな?


と、そんな嫌な想像を膨らませていると、コツコツと階段を降りる音が聞こえてきた。

誰かきた!


足音は次第に大きくなり、こちらに接近してくる。

一体誰だ、と身構えているとそこには数時間ぶりに見るリーエル姫の顔があった。

その手には牢屋の鍵らしきものが握られている。


「申し訳ございません。お父様を説得するのに時間がかかってしまいました」


そういって、牢屋を開けてくれるリーエル姫。


「出て、いいのか? 俺脱獄とかにならないよな?」


「はい、問題ありません。あなた様の無実はわたくしがきちんと証明致しましたので、もう護衛の兵士さんに襲われるようなことはありませんよ」


ほっ、それはよかった。

どうやら事は穏便に済んだようだ。


「リーエル、すまないな。迷惑をかけてしまったようで」


「いえ、お兄様がああなることはいつものことですから」


まさかの狂戦士バーサーカー降臨は恒例行事と化しているのか⁉︎


「あっ、でもお兄様はまだ反省時間が残っていますので、もうしばらくここで大人しくしていてくださいね」


「そんなぁ〜リーエル⁉︎」


泣きつこうとするリーエル兄を無視して容赦なく牢屋の鍵を閉める姫様。

この子がもしかしたら一番恐ろしいのかもしれない。



リーエル姫に案内されたのはお父様、つまりは王様がいるという通称玉座の間だ。

豪奢な廊下を抜け、人の何倍もある巨大な扉を開けた先にその部屋はあった。


部屋はとても広く、ここで大規模なパーティが催せるのではないかというほど。

隅には護衛の兵士が武器を持って配置されており、いつなん時攻められてこようと対処できる態勢が整っている。

奥にはこれまた煌びやかな玉座が二つ用意されており、その片方に50代くらいと思わしき爺さんが腰かけている。


あの人が王様か……。

赤いマントに金色の冠。

大きく伸ばした髭に威厳のある顔つき。

まさにファンタジー世界に登場する王様をそのまま象ったみたいなお方がそこにいる。


「お父様、お連れ致しました。このお方がわたくしの話していた方です」


玉座の前まで案内されるが否や、リーエル姫

が紹介する。

世界最強といえどもこういう場面ではやはり緊張する。

後ろに兵士もいることだし、ヘマだけはしないようにしなければ……。


「なるほど、そなたが娘の話していた男か……そなた、名はなんと申す?」


「伊月ゆう、です」


「ふむ、随分と珍しい名前じゃの。して、リーエルよ、本当にこやつで良いのか?」


なんの話をしているんだこの親子は?

俺は自己紹介しただけで、輪から外され置いてけぼりにされる。


「はい。このお方、ゆう様は勘違いとはいえわたくしを助けようと自らの命を顧みず勇敢にもわたくしを助けようとしてくださいました! レベルや能力など関係なしに、わたくしはこのようなお方に側にいて欲しいと考えております」


「ふむ……」


「ですから、お父様! わたくしにこの方と旅をする許可をください‼︎」


なっ⁉︎

まさかのそういう展開か‼︎


「……伊月ゆうとやらよ。そなたはいついかなる時も我が娘を守る自信があるか」


状況を整理しようと必死な俺に突然王様が振ってくる。


「あっ、いや……は、はい?」


「貴様、そのような覚悟で娘を守り通せるというのかっ⁉︎」


やばい、なんか怒ったぞ王様が!


「魔王の復活は近い! たしかに娘は勇者の子孫として伝説の剣を扱う資格があるがいかせん戦闘は素人同然。そんな娘を危険な魔王退治の旅から無事生還させる騎士の役目をそなたは託されたというのに、そのような軽薄な態度を取ろうに……」


「い、いや、いまのはなんといいますかいきなりの展開に気が動転してしまいまして……」


「言い訳なぞ見苦しい。聞きたくないわ! もし貴様が真に娘を守るだけの技量があるというのならそれを証明してみせろ‼︎」


「お父様、彼のことについてはわたくしが保証しています!」


既にカンカンな王様。

リーエル姫もなんとか宥めようとするが全く聞く耳を持たない。

くそっ、このままじゃ最悪また牢屋送りの展開っていうのもありえる(いままでの悲惨な流れ的に)!

ここは王様を納得させる以外に方法はないが、果たして俺の実力を証明できる(誤魔化せる)切り札はなにかないの、か?


「……あ、あの〜王様」


「なんじゃ?」


「実力の証明でしたらここに私のステータスが記載されているのですが……」


そういって冒険者手帳を王様にみせる。

貧弱なレベルに、その他ステータス。

どうみても駆け出しの弱小冒険者ものだが、習得しているスキル・魔法の欄に目が移った途端、王様の目の色がわかりやすく変わった。


「こ、これは‼︎ 熟練の剣士や魔法使いですら一つや二つしか習得できないという最強スキル・魔法をすべて習得しているではないか⁉︎」


王様の叫びに、護衛の兵士たちも一斉に戦慄する。


「このレベルでこのレベルのスキルや魔法を習得しているとは……どうやらお主には天性の才能が眠っているようじゃな」


まぁ、天使様に土下座までしてもらった力ですので!

ある意味では天性といえば天性ですね!


「わかった。リーエル、おまえの旅を認めよう」


「お父様⁉︎」


「伊月ゆうよ。くれぐれも娘のことはよろしく頼む」


椅子から立ち、王様が深々と頭を下げる。

そこにいたのは、国を代表する者の頭ではなくひとりの娘を心配する父親の頭だった。


「……はい」


「もし娘に危険が及ぶようであるならば即刻貴様を打ち首にするぞ」


「はぃ⁉︎」


ゴゴゴ、と威圧感満載なオーラを纏いながら王様が脅しをかけてくる。

さっきまでの良い父親は何処へ⁉︎


こうしてリーエル姫の勇者としての旅は無事に始まったのであった。

というか流れで引き受けちゃったけど、俺の目的はあくまで勇者の剣だけなんですけど⁉︎

俺の無双伝説こそ何処へ⁉︎

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